第177話 1軍昇格?
ボス部屋にいたのはヘビでも蛇でもなかった。3匹の大トカゲだった。大トカゲは大トカゲでもただの大トカゲではないだろう。今までの経験から言って岩トカゲの変異種だろう。大きさも色も今まで出てきた岩トカゲとは一線を画している。しかもその3匹を守るようにして4匹のオークまでいる。そのオークも今までのようなこん棒でなく剣を装備していた。
「なんか岩トカゲがボスみたいだけど、ただの岩トカゲじゃなさそうね。オークも剣を装備しちゃってるよ。みんな気をつけて。」
私がみんなに注意を促すと、
「それでどんな作戦で行きます?」
骨が聞いてきた。
「そうね。オークがいっぱいいてうざいわね。まず私が魔法で数を減らすから、その後みんなで斬りこみましょう。」
「「「おう!」」」
岩トカゲ達もこちらを認識しているが、今の所襲って来る気配はない。にらみ合いの状況だ。この間に私は呪文を唱えた。
「サンダガ!」
幸いにして呪文を唱える時間がたっぷりととれたため、雷魔法の上位魔法を唱えられた。雷が岩トカゲとオーク達7匹を襲った。オーク達4匹は光の球になって消えた。
「雑魚は減らしたよ。みんな行くよ!」
「「「おう!」」」
私達は子犬を先頭に一斉に走り出した。向って左の岩トカゲに子犬と犬使が向かい、真ん中の岩トカゲに骨が向かった。残る右の岩トカゲに幽霊と私が向かった。
私の渾身のサンダガだったけど、岩トカゲはやっぱり耐えていた。まあ、これは想定内だ。もともと雷魔法に耐性のある岩トカゲが魔法一発でやられるなんては思っていない。HPが少しでも削れれば良いのだ。私は次の手を打つために再び呪文を唱えた。
「マームさん!さがって!」
岩トカゲに斬りかかろうとしていた幽霊をさがらせると私は魔法を撃った。
「ウォターボール!」
極限まで圧縮された水の球が岩トカゲに当たった。水の球は岩トカゲに当たり大爆発した。
「まだ耐えるか。さすがボスね。でもチャンスよ。マームさん。」
「おう!」
私が促すと幽霊がふらふらになった岩トカゲに斬りかかった。私の水魔法でもろくなった岩トカゲを幽霊は易々と斬り伏せた。
「やった!」
「まだよ。喜ぶのは全滅させてからよ!」
私と幽霊は犬使いコンビの助太刀に向かう、骨は後回しだ。骨には私達は絶大なる信頼を置いている。骨がやられるはずないと。
子犬が良く追い立てているが、いかんせんダメージを与える役の犬使の剣が弱い。
「エイミーさがって!」
例によって犬使いコンビをさがらせた。
「ウォターボール!そして突きー!」
男女のパクリ技の水魔法バージョンである。ウォターボールが当たって爆発してもろくなった岩トカゲの腹部に寸分の狂いもなく突きをかました。岩トカゲは光の球になって消えた。
「お見事!」
既に岩トカゲを撃破していた骨が褒めてくれた。
「わ、私も一匹斬り伏せたのよ。」
自分も褒めてくれと幽霊が主張した。
「それは凄い。わしでさえ手こずったのに。マームさん。腕を上げましたな。」
私は骨が手こずっていないのも、幽霊が勝てたのは私の魔法のおかげだと言う事も知っているが、黙っておいた。頑張っている幽霊を良い気分にさせるのもチームリーダーの仕事だ。
私達が魔石とドロップ品の数々を拾っていると下の階への階段の扉が開いた。階段を下りると例によって男女達1軍が待っていた。
「どう?岩トカゲは手こずったでしょ?」
男女が聞いてきた。
「別に。水魔法を使えば楽勝ですよ。」
「うん。アーリンと船長の心配はいらないと思うけど。後の二人には厳しいでしょ。それで明日はまた今の階をやってもらおうと思ってるの。」
男女がまたとんでもない事を言ってきた。苦労してここまでたどり着いたのに戻れなんて冗談じゃない。
「えー。嫌ですよ。せっかく苦労してここまで来たのにいきなり戻れだなんて。」
私は珍しく男女に逆らった。
「うーん。戻るのが嫌って言うのはオレも分かるよ。そうだ。オレが2軍に合流するから、アーリンと船長は1軍に合流しな。オレがエイミーとマームの面倒を見るよ。」
「何がそうだだよ。アメリあんたロボと一緒に戦いたいだけでしょ。私も2軍に行くわ。」
脳筋まで2軍に行くと言い出した。
「え!いいんですか?アメリさんとリオさんが抜けて。」
私が横にいた黒髪に聞くと、
「ああ。全然かまわんよ。すぐ暴走する二人が抜けてむしろ戦力的には良いぐらいよ。」
「ちょっと私とアメリが足手まといみたいな言い方じゃないの。」
「違うの?リオ?」
黒髪と脳筋で漫才を始めた。
「よし。決まりね。オレとリオは明日から2軍落ち。アーリンと船長は1軍昇格ね。」
2軍に落ちたのにうれしそうに言うなんて本当にどうかしてるわ。まあ、犬マニアの二人のおかげで私と骨は昇格できた。このチャンスは最大限に生かさないと。私は決意も新たに気合を入れなおした。
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