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第176話 フォーメーション

 


「えー。この階は引き続きオークが主みたいだけど、また硬い魔物も出るみたいね。」


 私達美少女戦隊2軍は昨日攻略したところまで黒髪サオリに連れてきてもらった。アーリン男女アメリから聞いた注意事項をみんなに伝えながら、男女アメリにもらった鉄パイプを配った。


「硬いのを相手に剣で攻撃していたら剣が持たないから、硬いのが出たらこれでぶっ叩いて。」


「「「おう!」」」


「それでフォーメンションなんだけど、エイミーとロボを前衛に固定して、後は一回ごとにポジションを変えるのはどうかしら?」


「それってどういう事?もっと詳しく。」


「エイミーの後ろで剣を振っていた人が次の回は一つさがって魔法を撃ち、その次の人は最後までさがって、一番後ろの人が今度は前衛に出て魔法の代わりに剣を振る。つまりは一回ごとに魔法を撃ったり、剣を振ったりするって事ですよ。」


 幽霊マームの問いに私は身振り手振りで説明した。何か書く物があれば分かりやすいんだけどなあ。


「それは良いわね。剣も魔法も両方鍛えられるんじゃない。私はアーリン達と違ってどっちも苦手だからね。」


「わしも苦手の魔法ばっかり撃っていたらストレスたまるから賛成ですぞ。」


 なんとか理解してもらえたようだけど、ストレスがたまらないようにやるわけじゃないからね。


「ストレスもありますが魔力切れを防ぐためですよ。お二人はまだ魔力量が少ないから。」


 幽霊マームエイハブの賛同を得た事で、私達は一回ごとにポジションチェンジを行う事にした。


「一つ質問があるんですけど、エイミーはアーリンが、マームはわしがサポートしていたけどそれはどうするんじゃ?」


「ああ。それも無しね。後衛の人は順番にサポートする人を変えるって事。」


 そう言うわけで、最初は犬使エイミー組、エイハブ幽霊マーム、私の順番だ。犬使エイミー幽霊マームが、エイハブを私がサポートするフォーメーションだ。剣をエイハブが振り、魔法を私が撃つ最強のフォーメーションだ。


 子犬ロボの探索能力は大変優秀だ。男女アメリの鑑定と比べても遜色ない。その子犬ロボが立ち止まってうなり声を上げ始めた。


「曲がり角の向こうに4匹の魔物がいるとロボが言ってます!」


 犬使エイミーが代わりに警告を発する。


 いきなりの4匹か。ここは全員で迎え撃つか。


「よし!全員で当たるよ!硬い魔物かもしれないから鉄パイプでね!」


 私達は鉄パイプを構えながらゆっくりと曲がり角に近づいた。


 先頭の子犬ロボの威嚇に反応したのかオークが4匹いっぺんに飛び出してきた。4対4の乱戦である。こうなってしまったら作戦も減ったくれもない。目の前のオークを倒すだけである。私は向って来るオークを至近距離まで引き付けてからファイアーボールをかました。オークを1匹倒したあとに、幽霊マームと斬り合っていたオークを横から斬った。残りは犬使いコンビと対戦している1匹だけになった。その最後の1匹も子犬ロボが難なく葬った。


「さすがに4匹いっぺんで来られると作戦とか言ってる余裕ないね。前衛も後衛も目の前の敵を倒すしかないね。」


「作戦道理に事が進まないのが実戦と言う物ですよ。実戦に勝る訓練は無しですよ。」


 私とエイハブで反省会をしていると、


「次は私が殿ね。私も魔法をぶっ放すよ。」


 幽霊マームが妙に張り切っていた。


「いや。必要が無ければ魔法は温存したほうが良いですよ。基本は私達前衛に任せてください。」


「ちぇ。つまらないわね。」


 なぜか魔法を撃つ気満々だった幽霊マームが、私にたしなめられてちょっとがっかりしていた。


 幽霊マームが殿にさがると言う事は今まで殿の私は前衛にあがる。前衛は犬使エイミーと私、後衛はエイハブ幽霊マームになる。剣が苦手の私が前衛、逆に魔法の苦手なエイハブが後衛の、先程のフォーメーションが最強なら今度は最弱のフォーメーションだ。私は気合を入れなおした。


「じゃあ。行くよーん。」


 私の緊張とは裏腹に犬使エイミーはのんびりした声で出発した。先頭は敵と真っ先に遭遇するから、普通は緊張感もすごいはずである。いくら子犬ロボがいるとは言え、緊張しないなんて大したものだ。男女アメリの言う通り、犬使エイミーは大物なのかもしれない。


 しばらく歩くと例によって子犬ロボが真っ先に敵を探知して立ち止まった。どうやらオークが2匹だった。2匹のオークもこちらに気づいたようでそれぞれこん棒を持って身構えていた。


「オークが2匹ね。エイミーと私で行くから、船長とマームさんはサポートよろしく。」


 私はみんなに指示を出すと、手に持った鉄パイプを腰の剣と持ち替えて走り出した。


 真っ先にオークに飛びついたのはやっぱり子犬ロボだった。仲間が子犬ロボに突然襲われて怯んで隙を見せたもう一匹のオークに私は斬りこんだ。しかしジャンプして頭を狙ったがこん棒で防がれた。巨体の割には良い動きしているじゃない。私はオークの腹を蹴り、一旦距離を取った。


「ファイアーボール!」


 すかさず、後ろから幽霊マームのファイアーボールが飛んできた。私のファイアーボールほどの威力はないために一発で仕留める事は出来なかった。しかし大きなダメージは与えた。ふらふらになったオークを私は易々と斬りつけた。


 もう一匹のオークは子犬ロボにやられて動きが鈍くなったところを犬使エイミーが止めをさしたところだった。


「マームさん。ナイスファイアーボール。」


「ありがとう。長い距離も当てられるようになってきたからね。がんがん魔法使って行くよ。」


 それで魔法を使いたがっていたのか。私と幽霊マームはハイタッチを交わした。それにしても幽霊マームの進歩は凄い。犬使い(エイミー)と言うライバルが現れてからさらに張り切っているみたいだ。私も頑張らないと。


「よーし。じゃあ、次はマームさんが前衛ね。」


「よっしゃ。」


 次のフォーメーションは犬使エイミー幽霊マーム、私、エイハブの順である。このフォーメーションも心配な並びだ。前衛は犬使エイミー幽霊マームの初心者コンビいやトリオか。私が魔法でフォローしないと。私は改めて気合を入れなおして魔法を唱え始めた。


「じゃあー。行くよー。」


 相変わらずの気の抜けた犬使い(エイミー)の号令で私達は再び歩き出した。


 そして子犬ロボの警告のうなり声で前を凝視すると現れたのは2匹のドラゴン?いや、大きなトカゲだった。これも先に攻略した男女アメリから聞いて知っている魔物だ。岩トカゲと言うらしい。岩を食っていてやっぱり非常に硬いらしい。


「岩トカゲよ!硬いから武器を鉄パイプに替えて!魔法も水以外はあまり効かないみたいよ!」


 水魔法を使えるのは私だけだ。私はいざと言う時に備えて、今まで唱えていたファイアーボールの呪文を破棄してウォーターボールの呪文を唱えなおした。


 案の定岩トカゲは硬かった。真っ先に飛びついた子犬ロボもその硬さと急所の無さに戸惑っていた。


 私が指示を出すまでもなく、エイハブ幽霊マームの助太刀に飛び出した。私も犬使エイミーを助けないと。


「エイミー!ロボをさがらせて!」


「ロボ!さがれ!」


「ウォーターボール!」


 ロボが岩トカゲから離れるやいなや私はウォーターボールを撃った。極限まで凝縮された水の球が岩トカゲにぶつかり爆発した。あたり一面を水浸しにすると同時に岩トカゲも粉砕され光の球になって消えた。


「す、すっごーい!」


「まだよ。もう一匹残っているわ。」


 私が残りの岩トカゲに気をつけるように犬使エイミーに言うと、残りの一匹は達人のエイハブが斬り伏せたところだった。


「本当に凄いのは船長よ。こんな硬い魔物を鉄パイプで斬ったら、普通ははじかれるか、良くてちょっとひびを入れる程度よ。それをオークかゴブリンでも剣で斬るように易々と斬るなんて。」


「そんなに褒めても何も出んよ。これぐらいの事はアメリさんもリオさんも易々とやるよ。」


 私が褒めるとエイハブはちょっと照れて謙遜して言ったが、たしかにあの二人なら楽勝だろう。私が1軍に並ぶには剣技において、少なくても目の前のエイハブと同等の実力をつけなくてはならないと言う事だ。道のりは遠そうであるが頑張るしかない。


「今度はわしが剣を振る番ですな。」


 得意の剣を振れるとあってエイハブはやる気満々だった。


 それに対して犬使エイミーの方はなんか元気がない。


「どうしたの?エイミー?」


「うん。なんかロボが自信喪失しているみたいなの。」


 私が心配して声をかけると、犬使エイミー子犬ロボに代わって話し始めた。曰く子犬ロボは自分の牙が通らないほど硬い相手に初めて遭遇したらしい。その上、悪い事は重なり、ゴブリンやオークのような今までの人型の魔物と違い、首筋と言う明らかな急所が見当たらないのでどこを狙えば良いのか分からないって事だった。


「うーん。確かにロボにとっては相性最悪の魔物ね。でも大丈夫。ああいう背中の硬い魔物はお腹が弱点だとアメリさんに聞いたわ。次はお腹を狙うようにロボに伝えて。」


 私の言った事を犬使エイミー経由で聞いた子犬ロボは元気を取り戻して尻尾を振りながら私の周りを回り始めた。かわいい。私はロボを呼んで抱きしめてやった。


「じゃあ。頑張って行こうか。」


 従魔と一緒に元気を取り戻した犬使エイミーを先頭に私達はまた歩き出した。


 そして次にエンカウントしたのも2匹の岩トカゲだった。エイハブの方は私から岩トカゲの弱点を聞いていたので、弱点の腹を一撃で斬り上げた。さすが達人であった。


 もう1匹の岩トカゲの方に目を向けると、犬使エイミーが何度も上から斬りつけて岩トカゲの注意を上に向けさせると、素早く子犬ロボが下に潜り込んで腹に噛みついた。こちらもナイスコンビネーションだった。


 こうやって私達美少女戦隊2軍はローテーションしながら、剣と魔法を鍛えつつ何匹もの魔物を撃破して進んだ。


 そしていよいよボス部屋の前に到達した。


「みんな。怪我してない?魔力量は大丈夫?」


 聞いた所、全員怪我は大丈夫だが、張り切って魔法を使い過ぎた幽霊マームの魔力量がそろそろ限界だと言う事だった。


「よし。エイミーと船長の前衛。マームさんと私の後衛で行くよ。最後だから私は魔法を惜しまずに使うけど、マームさんは無理しないで。前衛二人も無理しないで。命大事によ。それじゃあ、美少女戦隊ファイト!」


「「「おう!」」」


 私が作戦と気合をみんなに入れているとボス部屋の扉が開いた。エイハブを先頭に部屋の中に入って行くがいつもこの瞬間が一番ドキドキする。はたしてヘビが出るか蛇が出るか。




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