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第171話 頑張れエイミー

 


 黒髪サオリのワープで地下二階まで来た。地下一階をスルー出来るのはありがたい。昨日の続きからリスタートできるからである。これも男女アメリ達1軍の短期間での躍進の秘密の一つである。私達2軍も今その恩恵にあずかってる。私達も実力をつけて1軍に追いつけ追い越せだ。


 1軍が出発してから、やや距離を置いて私達2軍もスタートした。エイハブを先頭にしてアーリン幽霊マーム村娘エイミーの順である。先頭のエイハブの後ろ姿を見ているとなぜか赤面してしまう。別に惚れた晴れたじゃないけど、妙に異性を意識してしまう。私だって前のパーティは男ばっかりの所だったから、男に慣れてないわけではない。しかし、昨日の出来事は衝撃的過ぎた。エイハブの事ばかり考えてしまう。いかん。戦闘の前に余計な事を考えていては大けがの素だ。集中、集中。私は自分の頬を自分で張り、気合を入れなおした。ちなみに幽霊マーム村娘エイミーは涼しい顔だ。人生経験の豊かな幽霊マームはあんな事ぐらいじゃ動じないし、村娘エイミーは昨晩いなかったし。


「二匹います!ゴブリン!」


 そんな事を考えていたら、戦闘を歩くエイハブが警告を発した。


「私と船長で当たろう!マームさんとエイミーはフォローして!」


 そう指示を出すと私は向かって左側のゴブリンに斬りつけた。鉄パイプで。ゴブリンは持っていた木の棒で防ごうとしたが、私は木の棒ごと脳天に鉄パイプをぶち込んだ。ゴブリンは光の球になって消えた。


「凄い。凄い。ゴブリンも一撃じゃん。」


 村娘エイミーが褒めてくれた。


「毎日の特訓の賜物よ。ところでエイミーは地下2階は初めて?」


 照れ隠しで聞いてみた。


「うん。ゴブリンも初めて。」


「じゃあ、次はエイミーが戦ってみる?」


「え?わ、わかった。」


 私とエイハブで敵を全て倒していたら、後衛の幽霊マーム村娘エイミーの鍛錬にはならない。私とエイハブは後衛に下がった。


「マームさん。ゴブリンに魔法はもったいないから鉄パイプで攻撃してください。エイミーは無理しないで、敵わないと思ったら逃げて良いよ。」


「「おう!」」


 私は二人にアドバイスをした。アドバイスも2軍のチームリーダーである私の大事な仕事だ。


「また2匹のゴブリンよ!」


 先頭の幽霊マームが警告を発した。


「よし!マームさんとエイミー行って!」


 村娘エイミー男女アメリにもらった鉄パイプを振りかざして突進した。


「うおー!」


 村娘エイミーは渾身の一撃を繰り出した。しかし、ひらりとかわされた。ゴブリンは木の棒で村娘エイミーの頭を殴った。まずい。ゴブリンが2撃目を出そうと木の棒を振りかぶったところに私はファイアーボールを撃った。私はハイヒールの呪文を唱えながら、うずくまる村娘エイミーに向った。


「大丈夫?エイミー。」


「うん。アーリンの回復魔法のおかげよ。」


「良かった。大事に至らなくて。今日はもう後ろに下がる?」


「いや。大丈夫。当たり前だけどゴブリンも反撃してくるんだね。」


「当たり前じゃない。奴らだって必死よ。」


「私、反撃受けたら死んじゃうんじゃないかと思ってたの。それで怖くて。でも一回受けてみたら思ったよりもたいした事はないわ。もう怖くはないから思いっきり行くわ。」


「よし。その意気ね。あと、一つだけアドバイスすると。鉄パイプを振りかぶって突進したら、上から斬りつけてくるの丸わかりじゃない。簡単によけられるよ。」


「わかった。」


 村娘エイミーは元気に走り出した。思ったよりも根性はあるみたいだ。冒険者に一番必要なのは魔法の素質でもなければ剣の素質でもない。どんな苦境をも跳ね返す根性だと私は思う。その点で言えば村娘エイミーは合格である。ちなみにもう一匹のゴブリンは幽霊マームが危なげなく葬っていた。同じ初心者でも私達と一か月すごしただけはある。


「また2匹よ!」


 そう言って幽霊マームはゴブリンに斬りかかって行った。例によってもう一匹は村娘エイミーが当たる。ゴブリンはアイアンスライムと違って動きは素早いし、木の棒による反撃もしてくる。初心者が腕を磨くのに最適な魔物だろう。


 村娘エイミーは先程と違って、鉄パイプを構えたままでゴブリンとの距離を詰めた。


「おりゃー!」


 今度は当たったが木の棒で受けられた。危ない。また木の棒による反撃を受けてしまう。魔法による助太刀をしようと呪文を唱えかけたがやめた。なんと村娘エイミーは自分の頭を殴ったゴブリンの木の棒を左手で掴んでいた。


「次はこっちの番よ。」


 そういうと右手に持った鉄パイプをゴブリンの頭に振り下ろした。非力な村娘エイミーでは一撃と言うわけにはいかなかったが連打するうちにゴブリンは光の球になった。


「やったじゃん。すごいよ。エイミー。」


 ハイヒールで村娘エイミーを治療しながら褒めた。


「さっきの攻撃でゴブリンの攻撃は致命傷にはならないと分かっていたから。つかんだの。つかんでしまえば、ゴブリンの動きも封じれるから私の剣でも当たるわ。」


 ゴブリンを倒して興奮した村娘エイミーは聞いてもいないのに解説を始めた。


「エイミーの工夫が凄いのはわかったけど、次は攻撃を受けないようにしようね。怪我したらつまらんよ。でも弱いなりに頑張ったのは素晴らしいわ。また頑張って。」


 私は村娘エイミーのやる気をそがないように、注意しつつも褒めた。


「よし。次は攻撃を受けないで倒すわ。」


 それから何匹ものゴブリンと対戦して何度も反撃を受けて、そのたびに私がハイヒールで治療をして行くうちに、村娘エイミーは無傷でゴブリンを倒せるようになった。男女アメリがよく言ってるように実戦に勝る訓練はない。しかし、いくらハイヒールで跡形も無く治療すると言え、殴られれば痛いし、その恐怖も相当な物のはずだ。私はどや顔で勝ち誇っている村娘エイミーの肩を抱きねぎらった。よくやった。村娘エイミーの頑張りは私からボスの男女アメリに伝えておくからね。いや。守銭奴セナに伝えておいた方が良いのかな。守銭奴セナはケチだけど、こういう時はボーナスはずんでくれるからね。


 その後、ボス部屋をつつがなくクリアした私達は黒髪サオリのワープで宿屋に戻った。思えばここまでだった。私が村娘エイミーを高評価していたのは。




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