第169話 女子会(乙女限定)
「え?せっかく家に帰ったのに家に泊まらないんですか?」
せっかくリオのファンを振り切って我が家まで走って来たと言うのに、男女は廃坑のダンジョンのある山の宿に泊まると言う。
「当たり前じゃない。せっかく楽しい旅行に行ってるのにいちいち家に戻って寝るバカがいる?宿に泊まるのも旅の醍醐味じゃないの。」
男女にとって、ダンジョン行は楽しい旅行なんだ。ダンジョンに潜って魔物を倒すのは楽しいアトラクションなんだ。苦しい仕事の旅だと思っていた私とはえらい違いだわ。男女達が強くなるわけだわ。私のような普通の人がつらいとか怖いとか思ってやる事が楽しくて仕方ないらしいから。
そう言うわけで部屋で着替えると私達は廃坑のダンジョンのある山の宿に再び戻った。ちなみに村娘は実家に帰った。
宿に戻ったと言っても、ご飯も食べたし後は風呂に入って寝るだけだ。風呂?そう言えば、この宿には温泉がひいてあるんだっけ。温泉は良いよね。男女のおかげで私達は毎日の入浴の習慣ができた。熱いお風呂に首まで浸かっていると一日の疲れが取れるよね。
「え?エイミーを帰したの?せっかくの温泉に入って行けば良いのに。」
男女が温泉に入らず帰ったのを残念がっていた。
「そんな事言ってエイミーの裸が見たかっただけじゃないの?」
黒髪が突っ込んでいた。
「そりゃ見たいさ。かわいい女の子がいたらそのすべてを見たいと思うのは当然の欲求でしょ?」
あ。このお姉ちゃん、開き直ったよ。
「そんなに裸が見たいなら私の裸を見せてあげますよ。」
「え!いいの?」
「ちょっとアーリン。こいつ見た目はかわいい女の子だけど、中身は男なんだよ。」
黒髪が忠告してきた。
「それなんですけど、男100パーセントじゃないのも聞いた事あります。アメリさんは男にまったく興味はないんですか?」
私は日ごろから疑問に思っていた事を思い切って聞いてみた。こんなかわいい女の子なのに女にしか興味が無いなんてもったいない。その気になれば男の子にもて放題の容姿をしているのに。
「それなんだけどさ。最近男にもだんだん興味が出てきたんだよ。たぶんオレの中の黒野トキオの要素がどんどん薄まっていると思うんだ。アメリ自身の成長とともに。でも黒野トキオの事は忘れちゃダメなんだよ。オレはアメリであるけど黒野トキオでもあるんだよ。オレが忘れたら黒野トキオと言う人間が消滅してしまうんだよ。そのためにもオレは黒野トキオとして行動しなくちゃならないんだよ。だからオレはかわいい女の子が入浴していれば覗かなくっちゃならないし、大きなオッパイが目の前にあればもまなければならないんだよ。」
そうか。そういえばアメリって異世界人と合体しているって聞いたことがある。アメリはあえて男としてふるまう事で、その異世界人の事を忘れないようにしているのか。私達はちょっとしんみりした。
「あー。なんかもっともらしい事言ってるけど、男だから覗いたりセクハラしたりするって言うのは違うんじゃないの?現に船長は覗きもセクハラもしないでしょ?」
危ない。私達は男女の詭弁に騙されるところだった。いつも冷静な黒髪の言葉で我に返った。
「いや。船長もオレと一緒によく覗いてるんだけど。」
「「「「「「船長―!」」」」」」
「い、いや。わしはアメリさんにそそのかされて。す、すみません。」
骨は最上級の謝罪である土下座をした。ほんと、男ってやつはしょうもないんだから、でもそこがかわいいところかな。
「なんかみんなでごちゃごちゃ言ってるけど、私はアメリの中身が男であろうと女であろうと裸を見られるのは平気よ。中身が男であろうと女であろうとアメリはアメリでしょ。アメリになら裸を見られても平気だし、それでアメリが喜ぶなら喜んで見せるよ。」
今まで黙っていた脳筋が衝撃の発言をした。
「私ももちろんオッケーよ。アメリが望むなら女同士の愛だってオッケーよ。」
さらに幽霊が脳筋を上回る衝撃の発言をした。みんなが凍り付いた。
「わ、私はさすがにアメリの愛には答えられないけど、一緒に入浴ぐらいは全然オッケーよ。だって今までだってそうしてきたじゃない。」
守銭奴がおずおずと言った。
こうなるとみんなの目が最後の一人である黒髪に注がれた。
「え!わたし?もちろんオッケーよ。だってわたしがいないと誰がアメリのセクハラや暴走を止めるのよ。」
こうして男女の一緒の入浴やある程度のセクハラは公認された。めでたしめでたしと思いきや男女がさらに衝撃の発言をする。
「ねえ。みんな。いっその事。船長も入れてみんなで入浴しない?」
「えー!冗談じゃないわ。」(セナ)
「アメリ。調子にのりすぎ。」(リオ)
「ばーか。」(サオリ)
「無理です。」(私)
もちろんみんな大反対だ。
「あー。ちょっと、船長とマームは席を外してくれる?今から若い子だけの女子会をするから。」
「「はい。」」
めげない男女はおじさんとおばさんを人払いした。今から何を語るのやら。
「ねえみんな。この中で男の人とエッチした事ある人いる?」
「「「「・・・・・・」」」」
男女の衝撃の質問にみんな押し黙った。
「ないよね。もちろんオレも無いよ。じゃあ。男の人のあそこを見たことある人?」
脳筋と黒髪が無言で手を上げた。
「リオとサオリ。それは誰の?」
「え!弟のだけど。」
脳筋が真っ赤な顔をして答えた。
「わ、わたしも弟の。」
同じく黒髪も真っ赤な顔で答えた。
「と言う事はだ。誰も大人のおちんちんは見たことないって事ね?」
「え!大人のおちんちんって子供のと違うの?」
「良い質問だ。アーリン。全然違うぞ。たとえて言うならゴブリンとオーガぐらい違うぞ。」
「はい。それは大きさが違うって事ですか?アメリ先生。」
「はい。リオさんも良い質問ですね。確かに大きさもそうですが、小さいからってオーガの子供をゴブリンと見間違う人はいないでしょ。それくらい違うのよ。元男のオレが言ってるから間違いないよ。」
「はい。」
「はい。セナさん。どうぞ。」
「子供ちんこと大人ちんこが違うのはなんとなく分かりましたが、それがどうしたんですか?」
「みんな。見たいとは思わない?見たいと思うでしょ?元男のこのオレでさえ見たいもの。見たいよね?あー。恥ずかしがって、格好つけなくて良いよ。本音で語ろうよ。あと、みんないつかは恋人を作って結婚したいよね。その時に初めて見て卒倒したくないよね。さあ。ここまで話してまだ船長との混浴に反対の人いる?」
「「「「・・・・・・」」」」
みんな、無言で赤面していた。
「よし。決まりだね。なーに。心配しなくても、船長のほうが恥ずかしくて何もできないよ。10分後に大浴場に集合よ。」
「「「「おう!」」」」
露天風呂の大浴場に行くと男女と骨以外のみんなは既に湯船に浸かっていた。
「わ、わしはいいですよ!」
「いいから。いいから。来なさい。」
最後に嫌がる骨を男女が無理やり引きずって来た。
「あんた達の時代は混浴が普通だったんでしょ?さあ、脱いだ。脱いだ。」
覚悟を決めた骨はすみっこで着替えるとこれまた露天風呂のすみっこに小さくなって入った。もちろんあそこはタオルで隠していた。
男女の方は堂々とすっぽんぽんになると露天風呂に飛び込んだ。飛び散るしぶきを私達はまともにくらった。
「みんなでお風呂に入るのって気持ち良いよね。さあ。それではショータイムと行きますか。」
そう言って男女はすみで固まっている骨に襲い掛かった。
「キャー!」
女の子みたいな悲鳴をあげて骨が露天風呂の中を逃げ回った。
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