第168話 スーパースターリオ
「お待たせしました。」
私達の泊っている宿に村娘がやって来た。目いっぱいおしゃれしてきただけあって田舎娘にしてはかわいいじゃない。まあ、私のほうがかわいいけどね。
「じゃあ、みんな揃ったところでキンリーの我が家に帰るよ。みんな手を離さないでね。行くよ!ワープ!」
黒髪のワープで私達はキンリーの家に帰って来た。
「あっ!」
扉の鍵を開けながら男女が叫んだ。
「どうしたんですか?」
私が聞くと、
「アーリン、あなたの部屋は元々2人部屋よね。」
「え?そうですけど。」
「ごめんね。エイミーに半分使わせてあげて。」
えー!そういえば私達の家は元宿屋で部屋がいっぱいあるけれど、骨の住む元管理部屋を入れても7室しかないんだっけ。せっかく一番いい部屋を確保したのに。
「仕方ありません。わかりました。」
「よし。エイミー。今日からあんたはアーリンと同じ部屋に住んで。アーリンはエイミーを部屋に案内して。」
「「はい。」」
私は村娘を我が部屋に案内した。
「こっちのベッドはエイミーが使って、クローゼットは今片づけるから自由に使って良いよ。」
「うわー!おしゃれな部屋。ベッドもふかふか。こんないい部屋に住めるなんて。アーリン、これからよろしくね。」
「うん。こちらこそよろしくね。」
私は村娘とがっちりと握手を交わした。部屋での取り決めを簡単に済ませると私もとっておきのかわいい服に着替えた。
「「お待たせー。」」
ロビーで待っていると最後に黒髪と守銭奴がやって来た。二人はキンリーで流行ってる服を着てきたと言うだけあってかわいい。同性の私でも惚れてしまうくらいだ。ちなみに他の人達はと言うと、ボスの男女はシャツにパンツのボーイッシュなスタイルだ。これはこれでいい。これも惚れてまうやんけ。お姉さまー。ごほん。
脳筋と幽霊は大人のお姉さんって感じだ。これもセクシーで良い。唯一男の骨の格好はどうでもいいかもしれんけど、腰に剣を差した用心棒ってところだ。
7人の美少女がとびっきりのおしゃれをして集合した。それを見て誰がA級冒険者だと思うだろうか。さすがに貴族には見えないけど、良い所のお嬢様には見えるだろう。男女を先頭に私達はぞろぞろと町へと繰り出した。まずは武器屋と防具屋の立ち並ぶ一角へと歩を進めた。村娘の装備を買うためである。もちろん貧乏人の村娘はそんなお金は持っていない。アメリ金融からの借金である。
装備が揃えば次は待望のおしゃれな服だ。おしゃれのセンスは黒髪と守銭奴が抜群だ。私も二人に選んでもらってかわいい服を買った。もちろん村娘も買った。もちろんアメリ金融からの借金で。
みんなで服を選んでいたら、あっという間に時間が経った。外はもう真っ暗だった。私達はお酒の飲めるレストランへと急いだ。
なるべく冒険者などのガラの悪い連中がいないようなおしゃれな店を選んだ。若い女ばかりの集団ってどうしても絡まれるからね。案内されて奥のテーブルに着いた。さすがに高級レストランだ。酒を飲んで騒ぐような連中はいない。私達はコース料理とエールを頼んだ。料理はキンリーでも屈指の美味しい料理のはずだが、昼間に男女の料理を食べた後だけに、そんなに美味しく感じられなかった。男女の料理は後に食べたほうが良いなと誰ともなしに言った。
まあ、ともかく、三人寄ってもかしましい女子が7人もいるんだ。私達は大いに盛り上がった。しかし楽しい時間は突然遮られた。場違いな男達が入店してきたからである。しかも良くない事に彼らはお酒が入っているようだった。
「よう、お姉ちゃん達。一緒に飲まないかい?」
自分達に割り当てられたテーブルを無視して隣のテーブルに座るとさっそくナンパしてきた。
「男一人に女7人かよ。俺ら4人を混ぜて5対7でちょうどいいじゃねえか。」
何がちょうど良いんだよ。おまえらみたいなむさくるしいのとは飲みたくねえや。
「あー。すみません。今日はこの子の入隊祝いで内輪だけで祝ってるんですよ。」
骨がやんわりと断った。
「おい。色男。一人で女の子を独占しないでこっちにも少し回せって言ってるんだよ。」
ついにはどすの効いた声で恫喝してきた。
「おい。兄ちゃん。俺らはこう見えてもB級冒険者なんだぜ。言う事聞いた方が身のためだぜ。なあにちょっとだけ女の子がお酌してくれればいいのよ。」
別の男がにやにやしながら言ってきた。
もう。絡まれるのが嫌だから、こういう高級なお店に来たのに。まったく冒険者って空気をを読まないバカばっかりなんだから。
「お断りします。」
今度は男女がぴしゃりと断った。
「いいね。俺はこういう気の強いお姉ちゃん。好きよ。」
さらに別の男が言った。お前の好みなんてどうでもいいわ。
「おい!」
きたー。ついに脳筋お姉さんが立ち上がった。こういうトラブルには黙ってないよね。脳筋さんは。さあ、どうやってこいつらを懲らしめてくれるの?私はこれからおきるだろう展開にわくわくしていた。しかし、私の期待する展開にはならなかった。
「あ、あなたはもしかして稲妻殺しのリオさんじゃないですか?」
「ええ。リオだけど。」
冒険者の一人が脳筋に聞いた。それにしても稲妻殺しって何?もしかして脳筋に二つ名が付いてるの?
「やっぱりリオさんだ。失礼しました。」
突然絡んでたうちの一人が立ち上がって最敬礼をした。
「え?リオってなんだよ?」
「ば、お前。稲妻殺しのリオさんを知らんのか?あの有名な稲妻のメンバーを瞬殺したお方だぞ。」
「あ。聞いたことあるぞ。A級冒険者をパンチ一発でのした女がいるって。それがすごい美人だって。」
「「「「す、すみませんでした。」」」」
冒険者4人は這う這うの体で店から出て行った。
「え!あなたがあの有名なリオさんですか?」
「握手してください。」
今の騒ぎを遠巻きに見ていた周りのテーブルの客が冒険者どもが帰ると一気に集まって来た。
さらに遠くのテーブルの客もなんだなんだと集まって来た。
「やばい。逃げるよ。」
そう告げると男女は慌ててお会計をしに向った。最悪な事に会計してくれた店員も脳筋に握手を求めてきた。脳筋のキンリーでの人気が凄いのを忘れていた。私達は追いかけてくる脳筋のファンを振り切って家へと急いだ。
「後を付けられてないよね?」
「大丈夫。私達の足に付いてこれる一般人はいないわ。」
男女が振り返って聞いてきたので、私は遠くを見渡して答えた。ともかく脳筋が有名人なのは良いけど、一緒に追っかけられるのは迷惑だ。
「キンリーではリオさんとは別行動にしますか?」
「えー。私だけ独りぼっちだなんて嫌だよ。」
私の提案に脳筋は速攻で反対した。
「しかたないね。リオにはこれから変装してもらうよ。」
「変装?良いね。ちょっと楽しみ。」
男女の変装の提案には食いついてきた。私も脳筋がどんな格好をするのかちょっと楽しみかな。
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