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第166話 契約金

 



「エイミー、あんた魔法は?」


「魔法なんてとんでもない。私、ただの初心者冒険者ですから。」


 アーリンの問いに村娘エイミーはできなくて当然と答えた。まあ普通はそうだよね。一か月も経たないのに魔法をバンバン使える幽霊マームの方がおかしいか。


「じゃあ、船長と二人で前衛に回って鉄パイプで攻撃して。私とマームさんは後衛で魔法攻撃を主体に攻めるから。」


「「「おう!」」」


 男女アメリ達1軍がボス部屋に入った後、順番待ちの私達2軍は作戦会議を行っている。


「マームさん、サンダーはできますか?」


「いや。できないよ。」


「じゃあ、ファイアーボールをボスに撃って、私はサンダーを撃ちますから。まず後衛組の私とマームさんで魔法を撃ちますから、相手の態勢が崩れたところで、前衛組の船長とエイミーは攻撃してください。その後は状況に応じて臨機応変な対応をお願いします。くれぐれも無理をしないで命大事でお願いします。何か質問は?」


「「「・・・・・・」」」


「ないみたいね。じゃあ、美少女戦隊2軍頑張るぞ!」


「「「おう!」」」


 私がみんなに気合を入れた所でボス部屋の扉が開いた。早い。早過ぎる。男女アメリ達1軍はもうボスを倒したのか。


「マームさん、呪文。」


「おう!」


 私と幽霊マームの後衛組二人は呪文を唱えながら部屋に入った。もちろん魔法による先制攻撃をするためである。


 ボス部屋の中央には3匹のアイアンスライムがいた。真ん中のひときわ大きいアイアンスライムがボスだろう。


「ファイアーボール!」


 幽霊マームの魔法が開戦の合図になった。


「サンダー!」


 負けじと私も魔法を撃った。3匹のアイアンスライムに雷が当たるとあっけなく3匹は光の球になって消えた。


「え⁉凄い!一発じゃない!さすがアーリン!」


「まあ、ボスと言ってもしょせんはスライムだしね。あと金属の魔物は雷に弱いからね。」


 興奮する村娘エイミーに冷静に答える私。もしかして私ってかっこいい?


 後に残った魔石を拾っていると扉が開いた。扉から外に出ると男女アメリ達が待っていた。


「今日はエイミーの入隊祝いもしたいし、ここまでにしよう。」


「はい。サオリさんのワープで帰るんですか?」



「いや。そこの階段で上に戻れるみたいだから歩いて戻ろう。」


 この手のダンジョンによくある事だが、別にボス部屋を通らなくても行き来ができるみたいだった。


「エイミーの腕も見たかった事だし魔物を倒しながら戻りますか。」


 男女アメリに答えると私達2軍は階段を上った。


 階段を上るとさっそく2匹のアイアンスライムのお出ましだ。


「エイミー!行ってみる?」


「はい!」


 走り出した村娘エイミーは1匹のアイアンスライムに斬りつけた。カキーンと金属同士のぶつかり合う音が響き渡ったがアイアンスライムは平気だった。


「うわー!」


 滅多打ちにしてようやく仕留めた。もう1匹は幽霊マームが仕留めた。


 村娘エイミーの剣を見ると刃こぼれしてボロボロだった。


「あちゃー。剣がボロボロじゃないの。アメリさんにこれをもらわなかったの?」


 私は村娘エイミーに鉄パイプを見せて言った。


「えっ?もらってないけど。そんな棒で魔物倒せるの?」


「まあ見てなって。次に出たアイアンスライムは私がこの鉄パイプで倒して見せるから。」


 言葉通り次に出たアイアンスライムを私は一撃で撃破した。


「な!凄い。アーリンって魔法使いじゃないの?それなのに剣も使えるんだ。」


 村娘エイミーがビックリしてるけど、剣も魔法も一流になるっていうのが私達の目標だからね。


「全然凄くないよ。エイミーも鍛えりゃすぐにできるようになるよ。それと私は魔法使いじゃないから、魔法も剣も使えるオールマイティな戦士を私達美少女戦隊は全員目指しているから。」


「じゃあみんな剣も魔法も一流なの?」


「残念ながら私達2軍は修行中だからまだまだ一流とは言えないけど、アメリさん達1軍は超一流よ。」


「私にもやれるかな?剣も魔法も全くできないのに。」


「やれるかなーじゃなくてやるのよ。私達2軍は1軍に追いつき追い越していつかS級になるとみんなで誓ったんだから。ちなみにマームさんだって冒険者になって一か月も経ってないのにもう魔法をばんばん撃ってるよ。」


「え!1か月も経たないのに魔法を覚えたの。すごい。」


「魔法はアメリと隣のアーリンが分かりやすく教えてくれるから大丈夫よ。」


 幽霊マームが話に加わってきた。


 ダンジョンを出ると村娘エイミーの家に私達は挨拶に向った。私の家もぼろかったけど村娘エイミーの家はそれ以上だった。村娘エイミーの弟と妹が村娘エイミーの姿を見ると駆け寄って来た。男女アメリは手品のようにお菓子を出して弟と妹に渡した。お菓子をもらって二人は大騒ぎだった。


 騒ぎを聞きつけて村娘エイミーの両親が出てきた。両親は最初、稼ぎ頭の村娘エイミーが村を出て行くのに難色を示していたが、男女アメリの差し出した金貨の塊に目の色と態度を変えた。それもそうだろう。村娘エイミー一家が一生遊んで暮らせるに十分すぎる額のお金だったからだ。


「あのう。さっきのお金は何ですか?」


「ああ、あれは契約金だよ。」


 私の問いに男女アメリは答えた。


「契約金ですか?私もらってないですよ。」


「ああ。そりゃそうだよ。あれはあげたんじゃないもの。エイミーに貸したんだよ。エイミーにはこれからその働きで返してもらうよ。」


 男女アメリはそう言うとにやりと笑った。さすがはボス、しっかりしてらっしゃるわ。




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