第165話 8人目
「あのう、すみません。もしよろしかったらボス部屋だけでもパーティに入れてもらえませんか?」
剣士風の若い冒険者が声をかけてきた。なんでも駆け出しの冒険者で一人で廃坑のダンジョンで腕を磨いていたけど、さすがにボス部屋は一人じゃ無理だと言う事で声をかけてきたらしい。ちょっとイケメンで私好みだ。八人目のメンバーに良いんじゃないだろうか。
「あー。ごめんね。今、パーティメンバーは間に合ってるんだ。」
え⁉男女がすかさず断った。どうして?渡りに船じゃないの?
「どうして断ったんですか?」
冒険者が向こうに行ったところで男女に聞いてみた。
「あ。男だからよ。」
「え?そんな理由で?じゃあ船長は?」
「基本的にオレのパーティには男はいらんのよ。船長の場合は話せば長いけど仕方ないのよ。」
なんでも男女と同じ元異世界人でひょんな事から従魔にしてしまったので仕方ないって事だった。
「こんにちは。私もパーティに入れてくれない?」
どうやらボス部屋の前は初心者冒険者達がベテラン冒険者にスカウトしてもらう出会いの場となってるみたいで、次には女剣士が声をかけてきた。
「ごめんなさい。メンバーは間に合ってます。」
え⁉男女がまた断った。今のは女の人だったし、しかも強そうな人だったじゃない。なんで断るの。
「今の人は強そうな女の人だったじゃない。なんで?」
「うん。だから断ったんだ。リオとキャラが被るからね。」
「えー!そんな事で?」
「いや。今のは冗談で。年上の人はちょっとね。」
そんな事言って骨も幽霊も100歳以上だろ!と心の中で突っ込んだ。
「あのう。すみません。私をお仲間に加えていただけないでしょうか?」
最後に声をかけてきたのはダンジョンには不似合いのか弱そうな若い女の子だった。
「ああ。良いよ。大歓迎だ。」
え⁉断ると思った男女が即決でオッケーした。
「どうして?今までで一番弱そうじゃないですか。」
私は男女に小声で聞いてみた。
「どうしてって。かわいいからに決まってるじゃない。」
「えー!そんな理由で!バカじゃないの!」
思わず興奮してボスの事をバカ呼ばわりしてしまった。
「あ。すみません。」
「良いよ。どうせいつも脳筋って呼ばれているから。かわいいからって言うのは半分冗談だけど。年もアーリンと変わらんし、今はレベルが低いから魔力も体力も低いけど、将来性は凄くあるんだよ。」
「え?将来性なんかわかるんですか?」
「オレを誰だと思ってんの?オレには鑑定があるんだよ。」
そうだった。鑑定持ちの男女は人のレベルからスキルまでお見通しだったんだ。
「あんた。名前は?軽く自己紹介してもらえる?」
「はい。私はエイミーと言います。」
男女に促されてエイミーは自己紹介を始めた。なんでも鉱山が閉山してからというもの、親たちの働くところがなくなり、家が非常に貧しく、長女のエイミーは剣を少しかじった事があったので手っ取り早く稼げる冒険者になったと言う事だった。
「オレ達の仲間になるって事はオレ達と一緒にキンリーに住んでもらう事になるけど大丈夫?」
「弟達に仕送りできるなら大丈夫です。」
「よし。決まりだね。仕送りどころか毎日でも会えるよ。みんな!ちょっと来て!」
男女は美少女戦隊全員を集めた。
男女はみんなの前でエイミーを紹介した。急な話で脳筋達はビックリしてたが温かい拍手で向かい入れた。脳筋も守銭奴も男女がこうしてスカウトしたらしい。ちなみに私は最初断ったんだよね。関係ないけどね。
「じゃあ、そう言う事でエイミーはアーリン達のチームに入ってもらおうか。」
「はい。わかりました。エイミーよろしくね。」
「よろしくお願いします。」
私はエイミーと握手した。ボス部屋の順番が来るまで私達は自己紹介をした。男女の言う通りエイミーは同い年だった。ガチガチに緊張しているエイミーにリラックスするように言ったが緊張するのも無理はない。初めてのボス部屋は誰だって緊張する。仕方ない。リラックスしてもらうためだ。
「あのエイハブさんはちょっと渋めでかっこいいおじさんでしょ。でもその正体は骨男なんよ。」
「えー!」
骨に聞こえないように小声で話したのにエイミーは声が大きい。
「さらに言うと、骨男の隣の美人さんは幽霊よ。」
「え!そうは見えませんけど。」
「エイミー。声が大きいよ。二人とも人間のつもりでいるから気づかないふりしてあげないと。二人とも簡単に言えば人間に化けてるんだよね。」
「えー!大丈夫なんですか?」
「だから声が大きいって。大丈夫よ。二人ともボスのアメリさんの従魔だから。」
「そ、そうなんですか。」
「さらに言うと、アメリさんは元男で、リオさんは脳筋、セナさんは守銭奴、サオリさんは便利な足なんだ。」
「えー。なんかよくわからないけど愉快な人達なんですね。」
「うん。みんな愉快な仲間だよ。あと私とあんたは同い年なんだからタメグチで話そうよ。」
「はい。いや。うん。わかったよ。なんか私とんでもない所に入ったみたいだけど大丈夫かな?」
「大丈夫。大丈夫。みんな腕だけは良いから。」
私がリラックスしたエイミーと二人で笑ってると男女と脳筋が二人してこちらにやって来た。
「ちょっと。ずいぶん楽しそうに笑ってるけど、オレは元男じゃないからね。生まれた時からかわいい女の子よ。」
「私だって脳筋じゃないよ。脳筋は隣のアメリよ。失礼ね。」
二人が文句言ってるけど、もしかしてあんな離れてるのにしかも小声で話したのに聞こえたのか、おそるべし地獄耳の脳筋コンビ。
「このアーリンだってすかしてるけど、幽霊が怖いチキンなんだから。」
「え!じゃあ、アーリンはマームさんが怖いんですか?」
「そうよ。初めのうちは怖くて毎日泣いてたんだから。」
「違うよ!ヒッ、ヒー!」
男女が言ったのを否定すると、いつの間にか私の背後にいた骨と幽霊が私の首をそーっと撫でたので思わず悲鳴をあげてしまった。私の悲鳴でみんなが笑った。エイミーもバカにして笑ってるけど、エイミーの緊張が解けたから良しとするか。
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