第161話 脳筋軍団
「それで、今日はなんでみんなこっちに来るんですか?」
私は霧の草原に来ると言う美少女戦隊1軍のメンバー4人を見ながら聞いた。
「うん。オレ達(美少女戦隊1軍)の所はボス部屋まで行っちゃったからね。とりあえず今日は休みみたいなもんだし。アーリン達も毎回毎回落とし穴のとこから始めてたら、永久に前に進めないでしょ。そこでサオリの投入よ。サオリがいれば今日進んだところから明日は始められるでしょ。」
リーダーの男女が代表して答えた。驚いた。ここよりはるかに難しいはずの迷宮をもう攻略したのかこの4人は。そして、行っては戻りを繰り返していたら永久に前に進めないってのは私も思ってた事だ。自分達の事だけでも大変なはずなのに私達の事まで考える余裕があるなんて。昨日の幽霊の事と言い、この男女は何て凄いんだ。脳筋だなんて馬鹿にしていた自分がはずかしい。
「でもそれだったらサオリさん一人が来ればいいですよね?」
「そうだよね。アーリンもそう思うよね?」
「なに言ってんのよ。わたし一人だけ働かせる気?わたしが仕事するって事はアメリ達も当然働くって事よ。」
「というわけでオレ達おまけも強制参加ってわけさ。」
黒髪以外の3人が手を前に出してとほほっと言うジェスチャーをした。
「そ、それじゃあ。戦闘とかどうするんですか?」
「あ、それは大丈夫。オレ達は離れて歩くからアーリン達の邪魔はしないよ。」
邪魔をしないって、あんた達の存在自体が邪魔だわ。
「そんな。アメリさん達が後ろから付いてきたら私達緊張しちゃいますよ。」
「いやいや。オレ達はたまたま同じ方向に進む事になった見知らぬパーティだと思ってくれたらいいから。もちろん呼んでくれれば何時でも助っ人に駆けつけるけど。」
「わ、わかりました。」
それから私は2軍のメンバーの前で今日の作戦を話した。
「みんな。今日はアメリさん達がいるから帰りの心配もないし初めからガンガン飛ばして行きましょう。マームさん。魔法全開よ。」
「わかったわ。ファイアーボールをばしばし撃ってやるわ。」
「わしも昨日アメリさんに習ったから撃ってみるわ。」
いや。骨は普通に剣で斬って欲しいんですけど。
そういうわけで骨、幽霊、私の順番で歩き始めた。視界の悪い霧の草原だ。すぐにアメリ達4人の姿は見えなくなった。
「ウィンドストーム!」
アメリの魔法の呪文が突然聞こえた。するとまるで嵐のような突風が吹いた。風が収まった後には辺り一面を覆っていた霧が消し飛んでしまった。一瞬で迷宮がただの草原になってしまった。な、なんてでたらめな。風で霧を吹き飛ばす発想は私にもある。けれどこれだけの風を起こすにはどれだけの魔力がいる事やら、思っていてもできない事である。それをこんな簡単に成し遂げるとは。さすが男女私が目標とする冒険者だけの事はある。
「あそこに2匹猪がいますな。」
そう言うと剣を抜いた骨と幽霊が走り出した。ちょっと待ってよ。二匹固まってるし、見通しも良いし、これは魔法での先制攻撃のチャンスじゃないのよ。それを剣を抜いて大声で喚き散らしながら走って近づくってどういう事。あんたらは脳筋か。案の定気づいた猪二匹が骨と幽霊めがけて突進してきた。
「「ファイアーボール!そして突きー!」」
おいおいダブルファイアー突きですか。仲のよろしい事で。
後ろを振り返ると脳筋が一人で3匹のレッドボアを相手にしていた。あんたらも魔法を使おうよ。後の3人は座ってるし、魔物なめすぎ。
なんか私も慎重にやってるのが馬鹿らしくなったわ。次の魔物のエンカウントの時は私も負けずに突っ込んでいくわ。もちろん大声でファイアーボールの呪文を唱えながらね。
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