第16話 美少女仲間入り
甘味処でケーキを頼み、ハーブティを飲みながらオレ達は反省会をした。
「ねえ。アメリ。パーティメンバーを増やした方がいいんじゃないの?今日だってもう一人いれば、ボアロードの体当たりをくらう事無かったんじゃないの?」
「うん。わたしもそう思う。剣士がもう一人いれば、わたしも攻撃に集中できるしね。」
「有望な剣士に心当たりはないの?」
「凄い剣士はいっぱいいるわよ。でも、そういう人たちはみんな自分のパーティを持ってるわよ。それに男よ。おっさんよ。」
「男はだめなの?」
「だめ。だめ。絶対だめ。剣士は断然美少女よ。美少女剣士に限るわ。」
「アメリ。あなたの趣味を聞いてるんじゃないんだけど。
まあ、わたしも男の人と組むのは苦手かな。」
「でしょ。」
「で、美少女剣士に心当たりはあるの?」
「ない。」
オレはきっぱりと言った。
「じゃあ、どうするのよ?」
「うーん。そうね。いなければ、作ればいいのよ。」
「作る?」
「うん。美少女剣士を作るっていうか育てるの。私達ってどうせ子供で駆け出しじゃない?今から強くなっていくんでしょ?だから、強い剣士を入れるよりも、美少女を剣士にして、私達と一緒に強くなってもらうの。」
「そんなにうまくいく?」
「大丈夫、私達には王国一の鬼指導者がついているじゃないの。すぐに強くなれるわよ。それに普通、剣の修行と言ったら型とか素振りでしょ。木剣で殴り合えば下手したら死んじゃうから。竹刀で実践稽古できるのも大きいわ。」
「そっか。頼もしい鬼教官がいるんだった。すぐに強くなれるよね。あの地獄の特訓に耐えれたら。」
「でしょ。」
「でも、耐えれるの?普通の人が?」
「耐えれるか耐えれないかじゃなくて、絶対に耐えさすの。」
「どうやって?」
「それは借金で縛るとかして逃げられなくするのよ。」
「アメリ。あんた。鬼?」
「そうよ。鬼でもなんでもなるわよ。仲間の命を守るためならね。」
「何カッコつけてんのよ。あんたにはそんな非道なまねはできんでしょ?」
「うっ。確かに。」
「まあ、冒険者みたいな超危険な仕事に就こうってんだから、気合の入ったひとが多いんじゃない。地獄の特訓ぐらい耐えてくれるんじゃない?」
「そうよね。一日に何度も気絶させられるぐらいは普通よね。」
「いや、いくら異世界でもそれはないんじゃないかな。」
「そっか。そうだよねー。今のわたしの夢は、いつか師匠より強くなって、ボコボコにしてやることだもん。」
「わたしもよ。いつか土下座してまいりましたって言わせてやるんだからと思って毎日耐えてるの。」
なんかいつの間にか師匠への逆襲の話になってしまった。
「師匠へのお礼参りの話はひとまず置いといて、地獄の特訓に耐えさせるのに奴隷を買うというのもあるわよ。」
「奴隷ってあの奴隷?」
「うん。あの奴隷。でも、私たちの世界の奴隷と違って、そんなに悲惨でもないわよ。無理やり拉致されて自由を奪われたってのが無いもの。あと、財産の所有とかある程度の自由は認められてるしね。」
「無理やりじゃなかったら、なんで奴隷になんかさせられるの?」
「そうね。主に経済的な理由じゃないかな。借金のかたに売られたとか。あと、犯罪を犯した罪に落とされたと言うのもあるわ。」
「奴隷かー。そういうの聞いてもなんか抵抗あるなー。」
「まあ。良識のある日本人だもんね。まあ、そういうのもあるって事で心の片隅にでも止めといて。」
「アメリ。あんた。奴隷なんか買って、ハーレムでも作ろうって思ってるんじゃないでしょうね?」
「わたしは女よ。ハーレムになんか興味はないわよ。」
「アメリ。眉毛が上がってるわよ。」
「それはサオリのはったりでしょ。もう、だまされないわよ。」
「いや。それがあながちはったりでもないんだよな。それに私はあんたの事を女の子だと思ってないから。」
「ば、ばれてるなら、もう隠さないわ。そうよ。ハーレムは男の夢よ。ロマンよ。悪い。」
「あ。今度は開き直った。」
「ま、まあ、奴隷はひとまず置いといて冒険者をスカウトしに冒険者ギルドに行こう。」
「そうね。奴隷は置いとこうね。」
オレ達は冒険者ギルドに戻った。
「あら、アメリちゃんとサオリちゃん。どうしたの?忘れ物?」
カウンターにはアリシーがいた。
「ええ。忘れ物と言うか人探しですね。わたしらと同年代の女の人でパーティを組んでいない冒険者見習の人っていないですかね?」
オレが言うと、個人情報だから教えられないとアリシーが答えた。まあ、普通はそうだよな。しかたない。
「アメリ。受付のお姉さんは何て言ってたの?」
「個人情報は教えられないって。」
「えー。じゃあ、どうするの?」
「そうね。ダンジョンの一階は腕を磨きにきてる冒険者見習でいっぱいじゃない。そこでスカウトしようよ。」
オレ達は冒険者ギルドでのその日のスカウトはあきらめて、いつものように師匠の家に向かった。
翌日、サオリのワープは使わずダンジョンの入り口から入った。地下一階には一番の雑魚モンスターのスライムを倒してレベルアップを図る初心者の冒険者が何人かいるはずだ。
最初に見かけたのは少年三人のパーティだった。当然この三人はパスだ。次に見かけたのはこの世界でも珍しい女冒険者の二人組のパーティだった。一人は剣士で一人は魔法使いか。なかなかの使い手であった。
「ねえ。アメリ。声をかけないの?女二人って願ってもないじゃん。」
「うーん。ちょっとねえ。わたしの好みじゃないわ。ごついのわね。苦手なの。」
「え?そんなことで決めるの?ばかじゃないの。」
「それは冗談だけど、年上はだめね。わたしたちが彼女たちの手下になっちゃうじゃない。」
次に会ったのは、年はオレ達と同じくらいの少女だった。ただし、剣の腕はまだまだでスライム2匹に苦戦していた。
「あの子はだめよね。スライムごときに苦戦しているようじゃ使えないよね?そうよね?アメリ?」
「いた。あの子に決めた。」
「えー?なんで?」
「なんでって、かわいいじゃない。他に何があるの。ちょっと、行ってくる。」
「ちょっと、アメリ。」
オレは少女に横から攻撃したスライムをたたき切った。
「こんにちは。」
「あ、どうもありがとう。助かったわ。」
「ねえ。あなた、見たところ駆け出し冒険者で、スライムを倒して腕を磨いてるみたいだけど。」
「そうよ。それがどうしたの?」
「わたしたちもそうなの。良かったらわたしたちとパーティを組まない?」
「わたしはここで腕を磨いて有名パーティに入れてもらうのが夢なの。あんたたちと組んでもたかが知れてるわ。ありがたいけど遠慮しとくわ。」
「有名パーティに入ってもわたしたち子供は弾除けにされるか、小間使いにされてこきつかわれるのが落ちよ。だからわたしたち自身が有名になればいいのよ。」
「でも有名パーティに入ってれば生き残れる可能性が高いじゃない。あんたたち、わたしを守ってくれるの?」
うーん。こいつは安定志向の冒険者か。寄らば大樹のなんとかってやつか。
「要するに実力を見せればいいのね。ファイアーボール。」
オレはファイアーボールを撃った。
「あんた。そのなりで魔法使い?しかも、今の無詠唱?」
冒険者少女がビックリして尋ねた。
「魔法使いじゃないよ。どっちかというと剣士ね。それで、今のは無詠唱じゃないわよ。ちゃんと唱えてたわよ心の中で。」
「えー!そんなん、あり?」
「驚くのはこの子の魔法を見てからにして。」
サオリに魔法を連発して撃たせた。
「ファイアーボール。ファイアーボール。ファイアーボール。」
「えー!ファイアーボールの三連発!今度はどういうトリックなの?」
さらに驚いた少女。
「トリックじゃないわ。今のが正真正銘の無詠唱よ。わたしたちじゃ、あなたを守れないかしら?」
「いえ、十分に守れます。」
唖然とする少女にオレは名のった。
「わたしはアメリ、13歳。そしてこっちがサオリ同じく13歳よ。あなたは?」
「あ、わたしはリオ、14歳。」
「リオさんですね。一つ上ですか。タメグチ叩いてすみません。よろしくお願いします。」
オレは手を差し伸べた。
「ちょ、ちょっと待って。あんたたちが強いのはわかったけど、わたしみたいな駆け出し冒険者で本当にいいの?」
「もう、めんどくさい人ですね。わたしたちも冒険者になって数か月の駆け出しですよ。お互い様ですよ。」
「え?数か月?あんたたちは天才なの?」
「天才かどうかわからんけど、あなたもすぐにわたしたちのレベルになれますわよ。」
「本当に?」
「うん。わたしたちには王国一の指導者がいますからね。有名パーティの下働きになるか、自分自身が有名になるか、さああなたはどっちだ?」
ややあって。
「アメリさん。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。リオさん。」
リオが仲間になった。
「ねえ。アメリさん。なんでわたしに声をかけたの?」
「あっ。アメリでいいですよ。独りぼっちだったから。ボッチていうことはどこのパーティにも属してないって事でしょ。」
「わたしもリオでいいし、タメグチでいいよ。それで、ボッチな冒険者は他にもいるでしょ。」
「だから、最大の決め手はリオさんじゃなかったリオが美少女だからよ。」
「えー。そんな理由で。バカじゃないの?」
「バカじゃないよ。わたしもサオリも男と組みたくないし、年上だと手下になってしまうでしょ。あと、美少女戦隊を作るのはわたしの夢だから。」
「美少女と認めてくれてありがとう。でも。わたし年上だけど?」
「リオはわたしたちを手下にしないでしょ?わたしたちのパーティに上下関係は要らないの、みんな友達よ。」
「もちろん、手下なんてとんでもない。喜んで友達になるわ。ところで友達と言えば、そっちのサオリさんだっけ、ずいぶん静かだけど無口な方?」
サオリのほうを向いてリオが答えた。
「あ、ごめん。ごめん。サオリは見てもわかるでしょうけど。この国の人じゃないの。」
オレが代わりに答えると。
「え!外人?そう言われれば。わたし、初めて見た。でも、言葉も通じないのにどうやってコミュニケーションはかるの?」
「あー。それはわたしが通訳するから大丈夫。それにサオリは片言なら話せるから。」
「アメリは外国語はなせるの。すごいね。じゃあ、アメリ。わたしはサオリと仲間になれてたいへんうれしいです。これからよろしくお願いしますって通訳して。」
オレはサオリに通訳した。
「オネガイシマース。」
サオリはリオの手を両手で握って上目遣いで言った。
「なんか。この子たどたどしくてかわいい。本当にうれしいわ。」
お前もかい。サオリの魔手にはまるんかい。
しかたない、通訳してやるか。
「リオがね。サオリがかわいいって。」
「まあ、かわいいのは事実だからね。ところで、簡単に仲間にしちゃったけど良いの?」
「大丈夫よ。もし、変な人だったらパーティを抜けてもらえばいいし、わたしには変な人には思えないけど。」
「まあ、アメリが言うならいいか。」
「ねえ。何を話してたの?」
リオが口を挟んできた。
「リオがかわいいって言ってると言ったら、うれしいって言ったわ。ところで、リオは魔法を使えるの?」
「わたしは見ての通り剣士だから、魔法は使えないよ。」
「いや。見てもわからんし。」
リオは大剣一本の装備で防具らしいものを着てなかった。
「うん。防具揃えるお金ないの。」
「まあ、駆け出しじゃ仕方ないよね。防具代は貸してあげるから、今度買いに行こう。」
「え!いいの?ありがとうアメリ。」
「まあ。仲間なら当然よ。」
リオが防具を着てない事もあり、今日は地下一階までにした。リオが剣でサオリが槍でスライムを倒しながら進んだ。ボス戦ではオレも加わったが、今日はオレもサオリも魔法を使うことなくダンジョンを出た。サオリがもうちょっとやりたがってたが、我慢してもらった。
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