第156話 ビッグアリゲーター
「なんか。大きなワニが待ち構えているんですけど。」
そう言って先頭を歩くリオが歩みを止めた。
「じゃあ、戻ろうか。」
最後尾のセナが戻ろうとした。
「待て、待て。手強そうな敵だからと言って一々逃げてたら、オレ達の腕は上がらないよ。それにこういう魔物は入り口や宝を守ってるのがパターンじゃないの。よし。サンダーの集中攻撃よ。みんな、呪文を唱えて。」
セナを呼び止めるとオレはみんなに指示を出した。
「サンダー!」
真っ先に魔法を撃ったのはサオリだった。
「「「サンダー!」」」
サオリの魔法を皮切りにオレ達の魔法による一斉攻撃が始まった。
サンダーの集中砲火を受けた大ワニ(ビッグアリゲーター)は固まっていた。
「やったの?」
リオが聞いてきた。
「いや。全然効いてないみたいだ。雷がだめなら火だ。みんな、ファイアーを唱えて!」
リオの問いにオレは鑑定でビッグアリゲーターのHPを探って答えた。そして次の手を打った。
「「「「ファイアー!」」」」
4人同時のファイアーが大きな炎となってビッグアリゲーターの巨体を襲った。相変わらずビッグアリゲーターは固まっていた。
「今度こそ効いただろう。とどめの突きー!」
「あっ!ダメ!」
魔法と突きのコンボ技を出そうとしたリオを止めようとしたが遅かった。ビッグアリゲーターはその長い尻尾でリオを振り払った。リオは軽々と吹き飛ばされた。
「どうやら魔法耐性のある変種みたいね。」
「アメリ!のんびり解説してる場合じゃないよ!後ろからもワニが来たよ!」
セナの大声で振り返るとダンジョンアリゲーターが二匹迫ってきていた。
「セナ!サオリ!後ろの二匹は任せた!」
「「おう!」」
二人に指示を出した後にオレは呪文を唱え始めた。そのオレをビッグアリゲーターの大口が襲う。
「この瞬間を待ってたぜ。ファイアーボール!そして突きー!」
いかに鉄壁の防御を誇るビッグアリゲーターであろうと口の中には魔法を防御する鱗がない。口の中を大やけどしたビッグアリゲーターがあわてて口を閉じたため、突きの追撃はならなかった。しかし、大ダメージを与えたのは確かだ。
再び固まるビッグアリゲーター。
「今度こそとどめの突きー!」
すかさずリオが突きを繰り出した。先程と違って今度は反撃の尻尾攻撃はなかったが、リオの打突は浅い傷しか与えてないみたいだった。ビッグアリゲーターの鱗の牙城は強固だった。
「ファイアーボール!そして突きー!」
すかさずオレは再びファイアー突きを繰り出した。先程と違ってリオが突いた所と寸分たがわぬ所を突いた。
「リオ!大あごはさっきオレが封じたから、今オレが突いた所と同じ所を突いて!」
「わかった!サンダーソード!そして突きー!」
さすがのビッグアリゲーターの分厚い鱗もピンポイントで何度も魔法と突きを受けてはもたなかった。リオの打突は鱗の鎧をついに突き抜けた。リオの剣からサンダーがビッグアリゲーターの体内に流れた。先程のオレのファイアーでダメージを受けていたため、リオのサンダーが合わせ技でとどめになった。ビッグアリゲーターは光の球となって消えた。
「おっしゃー!」
「やったね!リオ!」
オレとリオはハイタッチをかわした。ダンジョンアリゲーターを倒したサオリとセナも加わった。ドロップ品はビッグアリゲーター(改)の皮と大きな魔石だった。魔法をはじき、剣もはじく皮だ。鎧の材料として最高だろう。ついでに宝箱も開けた。中には高そうな鎧と剣が入っていたが、この鎧と剣がこのダンジョンでかって死んだ冒険者の物かもしれないと思うとなんか複雑な気持ちになった。
「よし。道を戻ろうか。リオ。また、右へ右へと進んで。」
「おう!わかったよ!」
ビッグアリゲーターを仕留めて上機嫌のリオが手を上げて答えた。
「よし。今日は出だし最高だ。この調子でガンガン行こうぜ。」
「「「おう!」」」
オレはみんなを鼓舞した。途中で現れるダンジョンアリゲーターを倒しながら進むと三又の分かれ道へと戻った。
「リオ!」
「わかってるよ、アメリ。右でしょ。」
そう言ったリオはこちらを振り向きながら右へまがるとどんどん進んで行った。
「いや。さっき見てわかってたけど真ん中の道へ行くと道が途中でなくなるよって言おうとしたんだけど。遅かったか。」
「そう言う事は落ちる前に言ってよ!」
木道から落ちて泥沼にはまったリオが抗議した。
「ごめん。ごめん。リオ、つかまって。」
オレはリオに手を差し伸べた。
「あ、アメリ!リオ!来るよ!」
サオリが警告を発した。
何が来るのか分からないけど、やばい。オレもリオも今戦力にならない。
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