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第151話 メガロボア

 


「助けて!アメリ!」


 アーリンの声を聞きつけて、オレ達は声の元へと急いだ。そこにはビッグボアをはるかにしのぐ巨大な猪がいた。マームはケガをしているようで、エイハブがそれをかばうようにして立っていた。アーリンもメガロボアの攻撃が自分に向くように攻撃していた。


 間に合った。仲間のピンチを救ってこそ。ヒーローって言うもんだ。


「セナ!マームを治療して!あと、みんなに補助魔法をかけて!サオリ!魔法で攻撃して!リオはオレと一緒にサンダーソードで攻撃!」


「「「おう!」」」


 オレの指示に従って、それぞれ呪文を唱えながらメガロボアを取り囲むように散った。


「ファイアーアロー!」


 まずはサオリの魔法が発動した。炎の矢がメガロボアを襲った。炎の矢を顔面に受けてメガロボアが一瞬怯んだ。その隙にオレはアーリンの横に並んだ。


「アーリン!大丈夫?」


「私は大丈夫だけど、マームがちょっと心配だわ!」


 オレが声をかけるとアーリンはマームの心配をして答えた。仲間を気遣うなんてまだ余裕があるじゃないか。とりあえず、ここはオレに任せてもらって後ろに下がってもらおうか。


「アーリン!よくやった!ここ(最前線)はオレとリオに任せて、後ろに下がって魔法攻撃!」


「おう!」


 後ろにさがったアーリンに代わってサンダーソードをおみまいした。だめだ。剛毛と分厚い脂肪の鎧の前にオレの剣では歯が立たない。わずかなダメージしか与えていないだろう。しかも剛毛と脂肪に絶縁作用があるのかもしれない。得意の電気攻撃も効いてないみたいだ。


 メガロボアはオレを一睨みすると、自ら後ろに下がり距離を取った。


「グモオオオオオオオオオオオオオオ!」


 雄たけびと共にオレに突進してきた。咄嗟にオレは横に飛んだ。危ない。あれをまともにくらえば、いくらオレ達でも無事にはすまないだろう。


 最大限の攻撃は最大限の隙に繋がる。オレにすかされたメガロボアはリオとエイハブに斬りつけられた。しかし、


「ダメ!私の剣がまったく通らない!」


 リオが叫んだ。


「ワシの剣もですよ!」


 エイハブも叫んだが、のんびり状況を解説してんじゃねえとばかり、メガロボアの後ろ足が襲う。


 ガキーン!


 エイハブはうまくその攻撃を受け流したが後方へと吹き飛ばされる。


「ファイアーボール!」


「ファイアーアロー!」


 チャンスとばかりアーリンとサオリが火の魔法を撃った。


「ダメ!全然効いてない!こんな化け物にかなうはずないわ!」


 アーリンが泣きごとを言った。


「泣き言を言ってる暇があったら、呪文を唱えて!」


 サオリが弱気になったアーリンを叱責した。


「グモオオオオオオオオオオオオオオ!」


 メガロボアは今度はターゲットを魔法を撃つ二人に絞ったみたいで、剣を振るオレ達には一瞥もくれず突進して行った。


「きゃああああああああああ!」


 逃げ遅れたアーリンが吹っ飛ばされた。


「セナ!アーリンの治療!」


「お、おう!ハイヒール!」


 オレの指示を受けてセナがアーリンを治療した。アーリンがすぐに立ち上がった所を見ると大したケガではなかったみたいだ。よかった。


「グモオオオオオオオオオオオオオオ!」


 とどめとばかりメガロボアがアーリンとセナに突進した。


「させるか!」


 二人の前に出たリオが盾でその突進を妨害した。しかし圧倒的な体重差である。リオも吹き飛ばされた。


「サオリ!リオの治療!」


「おう!」


 サオリに指示を出すとオレはサンダーソードで斬りつけた。効かないとわかっていても今はそれしか術がなかった。


「もうだめだわ!逃げましょう!こんな化け物にかなうはずないわ!」


「何言ってんの!アーリン!弱気になったらだめよ!私達はサークルアイのダンジョンでいつもこれ以上の化け物を相手にしてきたのよ!何とかしてくれるよ!アメリが!」


 再び弱音を吐いたアーリンをリオが恰好良く叱責したが、格好つけてるけどオレに丸投げかよ。しかし、本当になんとかせんとな。


「サオリ!こっち来て!他のみんなはオレとサオリを援護して!」


「「「「「「おう!」」」」」」


 オレはみんなに指示を出すと、サオリに目で合図した。


「ワープ!」


 オレとサオリはメガロワープの背中の上にワープした。


「さて。ワンパターンで悪いけど。焼き豚になってもらうよ。」


 そう言って、オレはアイテムボックスから取り出した油の瓶から揮発性の強い油をぶちまけた。サオリにも瓶を渡してぶちまけてもらった。


「もういいだろう。振り落とされる前に戻ろう。」


 オレとサオリはリオ達の元にワープした。


「じゃあみんな!油はたっぷり仕込んだから!炎の魔法よろしく!」


「「「「「おう!」」」」」


 オレの指示でみんなは魔法の呪文を唱え始めた。その間、エイハブはメガロボアを牽制してオレ達に攻撃が向かわないようにしていてくれた。ナイス船長。


「ファイアーボール!」


 意外にも一番槍はサオリでもセナでもなくマームだった。マームは自分の唯一できる攻撃魔法のファイアーボールの呪文を唱えながら撃つチャンスをずっとうかがっていたのであった。


「ファイアーボール!」


「ファイアーアロー!」


「ファイアーボール!」


 マームの魔法を皮切りに美少女戦隊の炎の一斉攻撃が始まった。しかしなかなか火が着かない。考えてみれば当たり前である。いくら油がしみ込んでいると言え、動き回る動物に火を着けるなんて容易いわけがない。


「アメリ!ちょっとだけ、メガロボアの動きを止めてくれるかな。」


 さらりとサオリがとんでもない事を言った。


「お、おう!」


 オレは答えたが、力じゃ絶対に無理だ。オレは慌てて呪文を唱え始めた。


「メガウオール!」


 オレは土魔法でメガロボアの前に壁を作った。付け焼刃の魔法であるから、もちろんペラペラの壁である。しかし、メガロボアはそうは思わなかった。突然目の前に現れた土の壁に戸惑い足を止めた。


「ファイガ!」


 チャンスとばかりにサオリが炎の上級魔法を撃った。しかも火をぶっつけるような魔法でなくじっくりと燃やす魔法である。さすがに今度は火が着いた。


「グモオオオオオオオオオオオオオオ!」


 火だるまになったメガロボアが暴れまわる。


「しぶといね。まだ死なないなんて。」


「いや。燃えているのは毛だけだから。本体の方はまだまだ元気よ。しかし、あまり苦しませるのもかわいそうだからとどめをさしてやるか。」


 見た目の派手さ加減に比べまだまだ致命傷にはなっていないだろう。オレはリオにそう答えると呪文を唱え始めた。


 背中に火が着いてかちかち山の狸状態になったメガロボアはパニクッていた。やたらと突進をかましてきた。最大の攻撃技は最大の反撃のチャンスである。奴は毛が薄くなっている弱点の腹部をかばおうともせずにオレ達に突進してきた。


「とどめだ!ファイガボール!そして突きー!」


 オレは懐かしの必殺技のファイアー突きの上級技であるファイガー突きを繰り出した。


「アメリ。恰好つけてる所、悪いけど。致命傷にはなってないみたいね。でも、有効みたいだから私も。ファイガー!そして突きー!」


 なんとリオは炎の球をぶっつけるんじゃなくて、剣ごと燃やして突きを放った。リオのパクリ攻撃を皮切りに今度は美少女戦隊によるファイアー突きの一斉攻撃が始まった。


 元々はオレの一撃必殺の技だ。それが弱点の腹部に何度も何度も叩き込まれると、さすがのメガロボアも命運が尽きた。特大の青白い球となって消滅した。後には特大の魔石に特大の肉の塊と特大の毛皮が落ちていた。


「やった!必ず助けに来てくれると思っていたわ!」


「仲間のピンチに駆けつけなくて、何のための美少女戦隊よ。オレ達は仲間のピンチなら例え火の中水の中でも駆けつけるよ。」


 オレは涙を流して抱き付いてきたアーリンにそう言った。


「感動の抱擁はそれくらいにしてもらって、なんでこんな危険な穴に落ちたか説明してもらおうか?」


 いつも冷静なサオリが言った。


「それは私が・・・・」


「いや。私が悪いんです。あまりに簡単に敵を倒せるので調子に乗って、帰る時間を忘れてしまって。それで早く帰ろうとあわててたもので落とし穴にはまってしまって。」


 何か言いかけたマームを制してアーリンが謝った。


「ふーん。おおかた走って魔物から逃げてたらマームが穴に落ちたって言うところでしょ?でもどんな言い訳しても、約束の時間を破ったのは確かなんだからボーナス査定それぞれマイナス50ポイントね。」


 金庫番のセナが冷たく言い放った。うなだれるアーリン達美少女戦隊2軍のメンバー。


「ちょっと待って。穴に落ちるなんて誰でもあるよ。それに想定外の魔物に襲われたら遅刻も仕方ないよ。」


 リオがアーリン達美少女戦隊2軍を擁護した。


「あー。リオ。自分も落ちたからアーリン達をかばってるのね。」


「違う!私の言いたいのは遅れたぐらいで給金を減らすなって事だよ!」


 セナに図星を刺されてリオが真っ赤な顔で反論した。


「まあまあ、ここはアメリの判断に任せよう。」


 サオリがオレにふって来た。


「あー。確かに調子に乗って遅刻したのは悪いけど、その分マームもアーリンも腕を上げたじゃない。マームのファイアーボールにアーリンのサンダーソードはオレ、ビックリしちゃったよ。だから、お咎め無し!」


 オレがそう言うとマームとアーリンが無言でオレに抱き付いてきた。


「本当に人をたらすのが美味いんだから、こいつは。」


 サオリがオレの頭を軽く小突いた。


「さあ。こんな暗くてじめじめした所に長居は無用よ。みんなわたしにつかまって、帰るよ。」


 サオリのワープでオレ達は家に帰った。



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