第145話 活動再開
「あー。それではこれからのキンリーでの活動方針について話し合いたいと思います。」
お風呂騒ぎから明けて翌朝、私達は食堂で朝食を食べながら会議をしていた。司会は男女がしている。
「それはもちろんランクアップを目指す事じゃない?アーリン達はDランクを私達はSランクを。」
「「Sランク!?」」
脳筋の発言に男女と黒髪がビックリした声をあげた。男女と黒髪はキンリーに着いたばかりで知らないのか。そういう私達も一昨日ミカエル達稲妻に聞いたばかりなんだけど。
「なんでも冒険者ランキングはA級が最上位じゃないんだって。A級の上にはS級って言うのがあって、さらにその上もあるみたいよ。」
「「えー!」」
脳筋の説明に男女と黒髪が再びビックリした声をあげた。無理もない。田舎じゃA級が最上位だって言われていたし、私達もそれを疑うことなく活動してきた。
「S級って何人いるの?」
「私達のいる第三冒険者ギルドには一組四人いるみたいよ。」
男女の質問に脳筋が答えた。
「ちょっと待って。第三って事は他にも冒険者ギルドがあるの?」
男女がさらに質問した。
「うん。キンリーには冒険者ギルドは四つあるんだって。他にも商業者ギルドもいくつもあるみたいよ。」
脳筋が答えると、男女と黒髪が目をぱちくりとしていた。
「じゃあ、ランクアップするにはどうするのが良いかな?」
「そりゃダンジョンに潜るのが一番手っ取り早いでしょ。」
「え!ダンジョンあるの?」
脳筋の答えに司会の男女が食いついた。こいつら(脳筋コンビ)は本当にダンジョンが好きみたいだ。
「うん。大小様々なダンジョンがすぐ近くにあるみたいよ。キンリーがこんなに発展したのはダンジョンのおかげでもあるって事よ。」
リオが言う通り、ダンジョンから供給される様々な物質(主に魔物の肉)がキンリーの人口を支えていた。
「じゃあ、さっそく今から行こう。」
「ちょっとアメリ。まず馬車を買いに行かないとだめでしょ。それに、まずは冒険者ギルドに顔を出して依頼を受けないとランクアップにつながらないでしょ。」
ダンジョンと聞いて目の色が変わり、すぐにでも出発すると言った男女を黒髪がたしなめた。後先考えずに突っ走る男女の手綱を握る黒髪、この二人も良いコンビだ。
「じゃ、じゃあ。依頼を受けるのと馬車を売っている所を聞くために冒険者ギルドに行こうか。」
「「「「「「おう!」」」」」」
朝一の冒険者ギルドは出発前の冒険者で賑わっていた。今日の依頼を受けなければまんまの食い上げであるから、みんな必死である。他人にかまっている余裕などない。余裕などないはずなのに、私達美少女戦隊7人が入ってくるとみんな手を止めてこちらに注目した。先日の脳筋の活躍のおかげだと思うが、ここまで注目されるとは脳筋の相手であるシオンはよっぽどの有名人だったみたいだ。脳筋のおかげで注目されているんだけど、一緒にいる私もなんだか有名になったみたいで悪い気はしない。
私達は依頼書を張り出してある掲示板に向った。依頼書はランクごとに張り出されていて私達はEランクの、男女達はAランクの掲示板に向った。打合せ道理ダンジョン関係の依頼の紙を何枚か取った。それを持って男女達と合流した。
「じゃあ、あっちのテーブルで打合せしようか。」
男女は冒険者ギルドの飲食スペースの方を差して言った。そこにはお酒を出すカウンターがあり、そこいらのテーブルでは朝から冒険者どもが酔っぱらっていた。私達はカウンターで飲み物を受け取ってテーブルに着いた。もちろん、ノンアルコールである。
「アーリンに見せてもらった依頼書とオレ達が取って来た依頼書を照らし合わせてみたら、この迷いの森ってダンジョンがどっちの依頼書にもあるんだ。キンリーの近所みたいだし、ここに行かない?」
「そこってどういうダンジョン何ですか?」
質問に質問で返すようで悪いけど、私は男女に質問した。なんせ命がかかっているのだから、ダンジョンの事を知るのは最重要事項だ。
「うん。さっきカウンターでもらったダンジョン案内書によると、主に動物系の魔物が出るみたいで、キンリーの食物供給源の一つとなってるみたいよ。」
動物系って事は私の苦手な怨霊系が出ないって事だ。それなら大賛成だ。
「はい。私は賛成です。」
私は手を上げて言った。
「アーリンは賛成みたいね。他のみんなは?」
「うん。私はダンジョンならどこでも良いよ。」
「わたしも。」
脳筋と黒髪が賛成した。
「リオもサオリも賛成だね。セナは?」
「私は儲かる所ならどこでも良いよ。」
「うん。肉は金になるし、オレのアイテムボックスがあれば運搬に困らないから儲かると思うよ。」
「じゃあ、大賛成。」
守銭奴は相変わらずもうけにうるさい。なんでも冒険者を引退したら稼いだお金で大きな商会を作るのが夢なんだそうだ。守銭奴なら商人としても大成しそうだ。雇ってもらえるように今から媚でも売っとくか。
「船長とマームはどう?」
「わしはアメリさんの使い魔だからアメリさんの決めた事に逆らえませんよ。」
「私は人間だけど、私も。」
「オレは二人の事を使い魔だなんて思ってないから、マームの言う通り一人の人間として扱ってるから、自由な意見を言って良いんだよ。」
「ありがとうございます。それを聞いたらますます逆らえません。」
「私も。」
骨も幽霊も涙を流して男女に感謝していた。男女、脳筋だと思っていたが人(魔物)をたらすのが上手い。さすがだ。
「じゃあ、決まりね。」
私達が席を立とうとしたところで声がかかる。
「リオー!」
脳筋の好敵手であるシオンがテーブルに近づいてきた。強敵と書いてともと呼ばせるのかこの二人は。あれから仲良くなったみたいだ。
「こいつらが私らの仲間のアメリとサオリ。」
脳筋がシオンに男女と黒髪を紹介した。
「アメリです。よろしくお願いします。」
「サオリです。よろしくお願いします。」
二人はぺこりと頭を下げて自己紹介をした。
「あ、私はシオンね。リオの仲間だから、どんな生意気なクソガキかと思ったら礼儀正しい可愛らしいお嬢ちゃん達じゃないの。こちらこそよろしくお願いしますね。」
「嫌だな。その言い方だと、まるで私が生意気なクソガキみたいじゃないですか。」
「違うの?」
脳筋が文句を言ったがシオンに軽くあしらわれてしまった。
「それでみんなはこれからどうするの?」
「馬車を買って馬車で迷いの森に行こうと思ってるんですけど。」
シオンの質問に脳筋が代表して答えた。
「あら、迷いの森なら、キンリーの街中にワープポイントがあるから、馬車はいらないわよ。」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
シオンの言葉に私達は全員驚いた。なんでもサオリのワープみたいな事ができるポイントがキンリーにはいくつかあるそうだ。どういう原理の魔法かはわからないらしく、おそらくは失われた古代魔法の遺産じゃないかと言う事だった。そしてそれは迷いの森の中にもいくつか存在していて、中と外を便利につないでいるそうだ。
「え!それってまるでサ・・・・。」
サオリの能力と言いかけたと思われる脳筋が男女にどつかれていた。
「ど、どうしたの?」
それを見ていたシオンが不審に思って尋ねた。
「いや。なんかリオの頭に虫がついてたもんで。」
男女が必死でごまかしていた。脳筋は考えもなしにしゃべるから困る。自分達の能力を自らばらすのはリオとアメリだけかと思っていたら、違った。脳筋はやっぱりリオだけだった。
「そ、そう?ケンカしてるように見えたけど。まあいいか。迷いの森なら私達稲妻も今から行くところだから、よかったら一緒に行かない?案内するよ。」
「え!いいんですか?よろしくお願いします。」
シオンのありがたい申し出に男女が代表して返事した。右も左もわからないキンリーで道案内をただでゲットできた。大事にすべきは人との出会いだ。いや、脳筋友達か。
私達はEランクとAランクの迷いの森での依頼書をカウンターに提出した。どちらも魔物の肉の依頼だった。違うのは依頼された魔物のランクだけだ。こうして私達美少女戦隊のキンリーでの冒険者としての活動が今スタートした。脳筋コンビじゃないけど、腕がなるぜ!頑張るぞ!
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