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第138話 山賊2

 


「助けて!助けてください!」


 オレ達と同じぐらいの年頃の少女が馬車の中から手を振って助けを求めていた。一瞬の間にオレは鑑定も使って状況の把握に努めた。馬車の中には助けを求めている少女と合わせて二人、馬車の外で戦っているのは冒険者風の男達が三人。対するは山賊風の男達が九人。冒険者風の男達は馬車の用心棒か、よく頑張ってはいるが多勢に無勢。山賊風の男達が押しているようだった。オレ達は馬車に馬を近づけた。


「あんた達は何者だ?」


「私達はキンリーに向う途中の旅人です。見ての通り、山賊に襲われている所です!どうか助けてください!」


 馬車の中の少女に声をかけると、改めて助けを求められた。もう一人の老人は今の戦闘でケガをしたようでうずくまっていた。


「なんだ?おめえらは!」


 馬車に近づいたオレ達に山賊達が斬りかかって来た。オレとサオリに斬りかかって来た山賊達は一郎とフランソワーズにそれぞれ蹴られた。強い。強すぎる。一郎とフランソワーズだけでもこいつらに勝てるんじゃないか。そして、オレは一郎から降りると言った。


「オレ達はただの旅人だ!お前らに恨みはないが、大勢で老人や少女を襲うような奴らは許すわけにはいかないな!よって、痛い目をみてもらうぜ!」


「ふざけるな!死ね!」


 オレは斬りかかって来た山賊を斬り伏せた。もちろんみね打ちだ。これであと六人になった。馬車の周りの山賊がいなくなったので、サオリに馬車を守らせてオレは冒険者達の助太刀に出る事にした。


「へい!お兄さん!助太刀しようか?」


「すまない!頼む!」


 オレは一番近くにいた冒険者風の若い男に声をかけた。男は二人の山賊を相手にしていた。男はオレに答えると山賊どもから距離を取った。今だ。


「サンダー!」


 前もって呪文を唱えていた魔法を撃った。もちろん対人用に威力は弱めてある。


「なっ!魔法!やばい!逃げろ!」


 オレの魔法を見た山賊のボスらしき男の号令で、山賊達は逃げ出す。


「逃がすか!」


 冒険者達はもちろんそれを逃がすわけがない。追いかけて残りの山賊どもをすべて制圧した。


「ありがとよ。助かったぜ。お前さんら、強いな。」


 最初にオレが声をかけた男が話しかけてきた。


「俺の名前はカイン。こいつらはオルトにリーノだ。俺達はキンリーで冒険者をしている。見たところ、お前さんらもキンリーを目指しているんだろ?仲良くしようぜ。」


「オレはアメリ。こっちはサオリ。オレ達も冒険者で、キンリーを目指してます。こちらこそよろしくお願いします。」


 オレはカインと握手を交わした。オルトとリーノもオレもオレもと握手を求めてきた。


「こんなにかわいいのに、あんなに強いんだもんな。おじさん達と組まないか?」


 オルトが勧誘してきた。悪いけど、チームの傭員は間に合っている。


「すみません。もうチームは組んでるんですよ。」


「でも、女二人だけじゃ、不安だろう?」


 リーノがたたみかけてきた。


「あ、そうだ。馬車の中の人、ケガしてたけど。」


 しつこい勧誘が始まると思ったオレは話題を変えた。


「おお、そうだ。報酬の事もあるし、アデルさんに挨拶してくるがいい。」


 カインの言葉に従いオレは馬車に向った。


 アデルはサオリが既に治療していた。


「おお、あなたがアメリさんか。わしはアデルと言う者じゃ。ありがとうございます。おかげで命拾いしましたわ。見たところうちの娘のシーナと同じくらいの年頃みたいだし、話し相手も兼ねて、この後も一緒に付いてきてくれませんか?もちろんさっきの活躍と合わせて報酬ははずみますよ。」


 オレがどうしようかと迷っていると、


「アメリさん。お願いします。」


 シーナも頭を深々と下げてお願いしてきた。オレは人に頼まれると弱い。サオリに助け舟をお願いする。


「サオリ・・・・・・・。」


「アメリ。受ければ。急ぐ旅じゃないし。」


 おい。おい。急ぐって言ったのはお前だろ。サオリ。


「あー。わかりました。ご同行しましょう。」


「やった。ありがとうございます。アメリさん達二人がいたら百人力だ。これで山賊に襲われても魔物に襲われても安心だ。」


 アデルは何度も頭を下げて礼を言った。アデルはリーベの商人で、里帰りしていた娘のシーナをキンリーの学校の宿舎まで送り届ける所を山賊に襲われたと言う事だった。娘のシーナはオレとサオリと同い年の15歳でキンリーの商業学校で学んでいた。


「へえー。アメリさん達は私と同い年でもう自立してんだ。偉いね。」


「いや。偉くなんかないよ。オレ達みたいな親のいない貧乏人は働かないと食っていけないんだよ。だから、しかたなく冒険者をしてるんだよ。」


「え?ごめんなさい。変な事を言って。私みたいな甘ちゃんはだめね。」


「いや。良いよ別に。謝る事ないよ。」


「ありがとう。ところで、私、学校の友達以外友達いないんだキンリーに。友達になってくれない?」


「もちろん。良いよ。」


「サオリさんは?」


「サオリで良いよ。同い年だし。もちろん。オッケーよ。」


「わー。ありがとう。アメリ。サオリ。」


 シーナはオレとサオリの手を握って喜んだ。そういえば、オレは美少女戦隊以外の友達っていないな。サオリもそうだし、冒険者以外の友達ができるのは大歓迎だ。


「じゃあさあ。オレ達にキンリーの案内をしてよ。」


「もちろん良いよ。どこか行きたいところある?」


「うーん。市場かな。」


「え⁉市場?変わった所に行きたいんだね。もちろん案内するよ。三人で一緒に行こう。」


「うん。行こう。」


 オレ達が仲良く話していると、山賊どもの処置が終わったみたいだった。山賊どもは一本のロープで結ばれて馬車に繋がれていた。


「この人達はどうなるんですか?」


 オレはカインに聞いた。


「ああ、もう少し行くとカラクの町が山の中にあるから、そこの衛兵にひきわたすよ。こいつらは奴隷か死刑になるんじゃないかな。まあ、俺達の知った事じゃないがな。俺達は報奨金さえもらえばいいからな。」


 それを聞いた山賊達が悲鳴をあげた。まあ、かわいそうだけどしかたない。これがこの世界の掟だ。強盗は重罪なのである。


 こうしてオレ達はカラクの町まで九人の山賊を引き連れて行く事になった。オレが先頭で前方の警戒に当たる事になり、後方の警戒と山賊達の監視はサオリがする事になった。馬車はカインが運転して、その横にはオルトが座っていた。リーノはシーナとアデルの親子と一緒に車内にいた。


 山賊達はわざとゆっくりと歩こうとしたが、馬車を操るカインがそれを許さず、馬車の速度を緩めないので、ロープで引っ張られ早歩きさせられるはめになった。しばらく進むと後ろのサオリが大声を上げる。


「止まって!もうこの人達限界よ。」


 サオリの大声でカインが馬車を止めた。


「よし!そこの広い場所で今夜は泊ろう!」


 カインは道が広くなっている所に馬車を停めた。


 山賊達は息も絶え絶えであった。みんなひっくり返るようにへたり込んだ。カインは桶に水を入れて馬達に飲ませていた。しかし、いっこうに山賊達に飲ませるそぶりを見せない。


「あのう。この人たちに水を飲ませてあげないんですか?」


「ああ。飲み水は貴重だからな。こいつらの分まで用意してねえよ。かわいそうだけど。」


 オレが聞くとカインは非情な事を言った。たしかに九人もいたら分けれる水も足りないだろう。オレは馬が飲み干した桶に水魔法で水を注ぐと、アイテムボックスから出したコップと共に先頭の山賊に渡した。


「ありがとう。お嬢ちゃん。」


 先頭のボスは涙を流して感謝してくれた。いくら捕虜でも最低限の人権は守られるべきだ。そう考えるオレは甘いのかな?


「アメリちゃんはやさしいな。こいつらに何もやる必要ないぞ。」


 カインにたしなめられた。


「まあ、この人達だって、好きで悪い事しているわけじゃないでしょ。やむにやまれぬ理由があったかも知れないじゃないですか。罪を憎んで人を憎まずですよ。」


 オレの言った事を聞いた山賊達が泣き始めた。そういうわけで山賊達は一晩大人しくしてくれて翌日無事にカラクの町に届けられた。山賊討伐の報奨金はカイン達と折半した。


「よし、これで邪魔者はいなくなったぜ。一気に山を下りるぞ。」


 カインの掛け声で馬車はスピードを上げた。オレとサオリも後を追った。




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