第137話 空飛ぶ魚
所変わってこちらは船の上です。あっ。私は誰かって?私は美少女戦隊2軍の期待の星、アーリンさんよ。アーリンさんが船の上から実況するわ。よろしく。
「それにしても釣れないわね。」
「はい。もうおなかペコペコです。」
リオが釣った5匹を最後に、なぜか昨日から一匹も釣れていなかった。水は水魔法でいくらでも出せたが、食料は自分たちで釣って調達するしかない。それが一匹も釣れないのだ。昨日はリオの釣った5匹をみんなで分けて食べたが、今日は朝からまだ何も食べてない。だから、リオのボヤキに私はお腹がすいたと答えたのだ。こんなことなら、アメリ達がいなくなった時にすぐに戻れば良かったのではないか、そう考えた私は横で釣りをしているリオに言ってしまった。
「リオさん。アメリさん達がいなくなったあと、サークルアイに戻れば良かったんじゃないですか?」
「あんた何言ってんの!私の決断が間違ってたと言うの!」
リオが声を荒げた。
「いや、そこまで言ってません。」
リオの迫力に私はしどろもどろで答えた。
「いい。もし、あの時戻ってたら、今頃はマッドシャークの腹の中よ。それでも良いの?アーリン。」
「い、いいえ。」
どすの効いた問いかけにもちろん反論なんかできない。しどろもどろでかえすしかなかった。お腹が減ったリオは大変機嫌が悪くなると言う事を私は学んだ。触らぬ腹ペコに祟りなしだ。くわばらくわばら。
私はリオの機嫌を損ねないように、黙って釣りに集中することにした。しばらく沈黙が続いたが、船の周りを見回してリオが言った。
「ねえ。さっきから船を追っかけるようにして飛んでくるのがいるけど、あれは魚?鳥?」
「ああ、あれはトビウオって魚ですよ。良く見てください。海の中から飛び出してくるでしょ。」
私は海の町の出身だからトビウオぐらいは珍しくもないけど、初めて見た人は鳥と間違えるのかな。そういえばリオ達は海のない町の出身だっけ。
「トビウオって人を襲うの?」
「リオさん!?」
リオは腕から血を流していた。
「リオさん。大丈夫?」
「かすり傷よ。こんなもの。だけどびっくりしたわ。」
「びっくりじゃないわ。魔物よ。船室に退避しましょう。」
私とリオが船室に入るやいなや、数え切れない多数の空飛ぶ魚が襲って来た。船室にも一匹入って来た。
「アーリン。扉を閉めて!」
私はリオに言われて扉を閉じた。そういうリオは空飛ぶ魚を一刀の元に斬り伏せた。
「なにこれ?この空飛ぶ魚、このヒレで鳥みたいに飛ぶんだ。」
「いや。ビックリするのはそこじゃなくて、このするどい角でしょ。これで刺すんだ。」
私は思わず、リオにつっこんでしまった。この角でリオは刺されたのか。
「そういえば、骨いや船長は大丈夫でしょうか?」
「ああ、骨だから刺されても大丈夫だろ。それに操舵室に入っているし。それよりもこいつらをどうにかせんとね。」
リオは扉の隙間から外を覗いて言った。
「とりあえずは魔法でしょ。サンダー!」
船室にいたセナが扉の隙間から魔法を撃った。
「だめ。数が多すぎる。きりがないわ。」
セナが言うように空飛ぶ魚はまるでイワシの群れのように空を飛び交っている。一匹一匹は弱くても集団で襲ってくれば私達でも危ないだろう。なんとかしなければと思い船室を見渡した。船室には船の修理用の木材がゴロゴロしていた。そうだ。これだ。私は転がる木材でかかしを急いで作った。かかしには私の荷物の中から帽子と服を取り出し着せた。
「りおさん。これを船室の外に出してみて。」
扉の隙間から外を覗いているリオにかかしを渡した。リオは恐る恐るかかしを外に伸ばした。
カツッ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!カツ!・・・・・・・
かかしに無数の空飛ぶ魚が突き刺さった。それどころか食べようとでも言うのか、無数の魚がたかって来た。
「今よ!サンダーを流してリオさん!」
「わ、わかった。サンダー!」
リオは手に持ったかかしにサンダーを撃った。
かかしにたかっていた魚がぼたぼたと落ちてきた。
「これで大分少なくなったわ。外に出て追撃しましょう。」
「「おう!」」
私の仕切りで私達は船室を飛び出した。残った空飛ぶ魚の群れを魔法で次々と撃破した。
「サンダービーム!」
しばらくの戦闘の末、残った最後の一匹をリオが魔法で仕留めた。
「「やった!」」
私とリオは手を取り合って喜んだ。いつも冷静なセナも喜んでいた。
「やったのは良いけど、お腹がますます減りましたね。」
私が言うと、
「何言ってんの。食材が向こうからやって来てくれたじゃないの。」
リオが甲板に転がる無数の魚を見て言った。
「えー!これ食えるんですか?」
角の生えた凶悪な魚、見た目は食えそうになかった。ていうか、知らない魔物を食っても大丈夫か?こんなときにアメリがいれば鑑定してくれるんだけど。
「私は食うわ。毒があったとしても死にはしないでしょう。」
「ちょっと待ってください。まずはマームさんか船長に食べてもらいましょう。」
「ああ、あんた。アンデッドに毒見させる気ね。それはいい考えね。」
リオはにやりと笑って転がる魚をとって調理を始めた。ナイフで鱗と内臓を取ると串に刺して、船に備え付けのコンロで焼き始めた。見た目の凶悪さに反してこんがりとおいしそうに焼けた。調味料は海水を干して作った塩だけであるが充分であった。
「船長。お魚が焼けたから食べて。」
リオが船の舵を取る骨に魚の串を差し出した。
「お、いいんですか?わしらは別に食べなくても死なないんですよ。」
「いや。いや。日ごろの船長に対する感謝のしるしですよ。」
「わかりました。じゃあ遠慮なく。」
骨はおいしそうに魚にかぶりついた。
「なんか、リオさんもアーリンもわしの事見つめすぎですよ。食いにくいんですけど。」
「いや。相変わらず、いい男だなあと思って見つめてるだけよ。それで、お腹は大丈夫?舌がピリピリするとかも無い?」
「え?別に。美味しいですよ。」
「そう。良かった。」
「良かった?あー、あんたらわしに毒見をさせましたね。酷い。」
「酷くなんてないわよ。船長は何を食べても死なないんだから、こういう時に活躍してもらわんと。」
「やっぱり。酷い。」
骨の味見(毒見)の結果、空飛ぶ魚の魔物は大変美味しい魚であるとわかった。こうして私達の食糧不足は一気に解決した。それどころかこの魚の魔物はフライングホーンと言って港で高く売れた。こうして私達は食料不足と資金不足を一気に解決できた。
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