第134話 目指せキンリー
「みんな今までありがとう。」
謎の言葉を残してアメリとサオリはワープした。行先は海面に姿を現していたメガロシャークの上だった。メガロシャークの上に乗るとアメリは手に持った銛をぶっ刺した。巨体のメガロシャークにとって、銛で刺されても蚊に刺されたようなもの。まったく効いていない。アメリとサオリを上に乗せたままこちらを攻撃するべく向って来る。アメリとサオリが乗っているために私達は攻撃できない。あと少しで船にぶつかると言う所でサオリが叫ぶ。
「ワープ!」
何と言う事だ。アメリとサオリはともかく、メガロシャークの巨体までかき消えてしまった。
「「「消えた!」」」
思わず、同じことを言ってしまう私達。船には今までそこにいたメガロシャークの起こした波が当たると、後には何もいなかった。まだ、マッドシャークがいるにも関わらず、あっけにとられた私達はメガロシャークのいた海面を見続けた。しばらくみんなで呆けていると、いつも冷静なセナが口を開いた。
「ワープよ。サオリのワープでどっかに行っちゃったんだわ。前にサオリが言ってたもん。生き物ならどんな大きな物でもワープで運んで見せるって。」
ワープ?じゃあ、どこにワープしたんだ?私がそんな事を考えていると、オレを忘れるんじゃねえとばかり、マッドシャークが体当たりをかましてきた。
「今はアメリ達の事より、マッドシャークよ。みんな呪文を唱えて。」
アメリの代わりに指揮を執るリオに合わせて、私達はサンダガの呪文を唱えた。しばらくすると波間に大きなヒレが現れた。大きなヒレが一直線にこちらに向って来る。
「みんな今よ!」
「「「サンダガビーム!」」」
リオの号令で私達は雷の魔法を一点に向って飛ばすサンダガビームを一斉に撃った。いくら化け物でもメガロシャークに比べればマッドシャークなんて雑魚だ。私達三人の渾身の魔法で一撃で撃破した。しかし、誰も喜びはしない。みんな黙って、アメリ達が消えた海面を見続けた。
「アメリ達、帰って来ないね。」
「これもサオリに聞いたんだけど、ワープはサオリの目で見える物か、行った事がある所しか行けないんだって。」
ぼそっと言ったリオの独り言に、セナが被せた。
「え!それって?」
私が聞き返すと、セナはとんでもない事をさらりと言いやがる。
「そう。今どこを走っているかわからない船には戻れないって事よ。」
「「ええー!」」
私とリオは驚嘆の声をあげた。
「じゃあ、アメリ達と離れ離れになっちゃったの?どうしよう?」
「リオ!落ち着いて!アメリがいなくなったら、この美少女戦隊を仕切るのはあんたの仕事よ!」
おろおろするリオを冷静なセナが一喝した。セナが仕切った方が良いのではと思ったが言わないでおこう。
「ごめん。私頑張る。」
リオは自分の頬を叩いて気合を入れた。
「アメリが、何があってもキンリーへ行けと言ってたよね。それが再会の最善策と思うわ。よし!このままキンリーに行くよ!」
「「「「おう!」」」」
気合を入れなおして復活したリオの仕切りで、私達は再びキンリーを目指して走り出した。船はリオの号令でスピードを上げた。
「ところで、ご飯どうする?」
しばらく順調に走ると安心したのか、お腹を減らした食いしん坊のリオが聞いてきた。
「ご飯ならアメリが、あっ・・・」
私達は船に残った食料を探した。船にあったのはさっきリオが釣った魚が五匹だけだった。
「え!私の釣った魚しか食う物ないの。私達って、人間倉庫のアメリにいかに頼り切ってたって事ね。まあ、嘆いても何も始まらないわ。これはアメリとサオリがいなくても頑張れと言う神の試練だわ。幸いにして竿と仕掛けはアメリが残して行ってくれたから、魚を釣るよ。アーリンも手伝って。今までの遊びの釣りじゃないから、頑張って。」
「はい。頑張ります。」
私はリオに習って釣りを始めた。まったくの初心者の私だけど、釣れなければ今日明日の食べ物がない。必死で釣りを学んだ。
こうして前途多難な旅が始まった。どうなることやら。こんなことならサークルアイに残ってれば良かった。
あっ、そういえば、お金も武器も防具もみんなアメリが持ってたよね。キンリーに無事ついても私達文無し?おばーちゃん。
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