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第132話 マッドシャーク三度

 


 私はアーリン、美少女戦隊の新入隊員にして、期待の星よ。今日もエイハブ幽霊マームと一緒にセシルの町のダンジョンを攻略していたの。私は魔法を骨は剣を封じての挑戦だったため、浅い階層と言えど、けっこう苦労していたわ。それでも頑張って何とか進んでいたわ。


 ボス戦はさすがに得意技を封じてと言うわけにはいかなかったけど、私の魔法と骨の剣攻撃で楽勝だったわ。私達美少女戦隊2軍もけっこういけてるんじゃないの?美少女戦隊のボスのアメリに私達の今日の戦果をさっそく報告だわ。アメリは、すごいね、やるねと褒めてくれた。私がいい気になっていると、リオがとんでもない事を言った。信じられない私は聞き返した。


「それは本当ですか?」


「うん。本当。古城のダンジョンはもう制覇したから、明日から王都キンリーに向って船出するよ。」


 何と言う事だ。サークルアイの冒険者達が束になってやろうと思ってもできなかった事をこの人達は一か月もかからずに達成したのか。改めてアメリ達の規格外の強さを思い知らされた。私が驚くやらあきれるやらしていると、アメリが口を開いた。


「そういうわけで、アーリン達のダンジョン挑戦もしばらくは延期ね。明日からまた船での暮らしだから、アーリンは家に帰って準備してくると良いよ。なあに、サオリのワープでいつでもサークルアイに戻って来れるから、寂しくはならないよ。」


「は、はい。準備と言っても、私はほとんど身一つですから。」


「身一つって言っても、着替えの下着や服がいるでしょ?それに、最後の晩くらいはおばあちゃんに甘えてきなよ。」


 アメリの好意で私は最後の晩を自宅で過ごせた。翌朝、アメリ達4人が私の家まで迎えに来た。アメリは私の祖母のノアまで船にワープで送ってくれた。船ではエイハブ幽霊マームが出航の準備をしていた。私達5人が船に乗り込むと、


「じゃあ、そろそろ出航しますか?」


 骨がみんなに声をかけた。船の上では骨がみんなを仕切っているみたいだ。


「それじゃあ、お嬢さんを預かります。ほれ、おばあちゃんに別れの挨拶をしな。」


 アメリが私の横腹をつつきながら、岸壁にいる祖母と横にいる私に言った。アメリに促されて私は船尾に走った。


「おばあちゃん・・・・」


「アーリン!達者でなー!」


 船はゆっくりと動き出した。祖母は姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれた。


 私が祖母との別れに浸っていると、


「よし。感動の別れも終わったし、これから王都キンリーに向って出航よ。船長、みんなに注意事項とかある?」


「はい。この先は、今までのような湾から外洋に出ますから、波が強くなりますし、遭遇する魔物も手強くなりますね。今まで以上に気を引き締めてください。」


 アメリが骨に航海上の注意点を言わせた。基本的に昼間は骨が船を操り、他の者がサポートするらしい。驚いたのは夜中も走ると言う事だった。その際は交代で船を操るって事で、私はアメリとリオの班になった。


 船はサークルアイの港から沖に出ると、風を帆に受けて順調に走り出した。船での作業が珍しく、覚える事も多く、私は必死で働いた。半日も働いた頃に、私と幽霊の新人二人はサオリとセナと交代して休憩に入った。アメリとリオは船尾から釣り糸を垂らして釣りをしていた。


「釣れますかー?」


 私は二人に声をかけた。


「うん。良く釣れるよ。」


「・・・・・」


 リオが上機嫌で答えた。反対にアメリは不機嫌に黙っていた。どうやら、あまり釣れてないみたいだった。


「この勝負はどうやら私の勝ちみたいね。約束通りセシルの店でケーキとお茶を奢ってもらうよ。アメリ。」


「ぐぬー。まだ、時間はあるよ。勝ち誇るのは早いんじゃない。リオ。」


 この人達は釣りでも勝負しているみたいだった。本当に勝負が好きな人達だ。


 他にすることも無いので二人の釣り勝負を見る事にした。


「キンリーまでどれくらいで着きますか?」


「そうね。船長の話によると、明後日の朝には着くって。」


 私が聞くとアメリが不機嫌ながらも答えてくれた。凄い。馬車でも五日はかかる距離をさすがは船だ。私が船の速さに感心していると、アメリの竿が大きく曲がった。


「来た!」


 アメリがそう叫ぶと竿を手に持って糸巻きのお化けみたいな物を回し始めた。リールと言うらしい。


「これは大きいわ。アーリン。船長に言って、船を止めてもらって。」


「わかりました。」


 アメリの命令で私は骨の所に向った。骨は、サオリとセナに命じて帆を下ろさせた。帆が下ろされた船はゆっくりとスピードを緩めた。船がスピードを緩めると、骨を残して私達はアメリの元に向った。


「また、アメリが大物釣ったよ。私がギャフをひっかけるから、サオリはサンダービームで魚を仕留めて。セナとアーリンはギャフについたロープを引っ張って。」


 ギャフを構えたリオが、みんなに指示を飛ばす。


「「「おう!」」」


 返事を返すと私達は持ち場に着いた。私とセナはロープを掴んだ。


「なに勝手に仕切ってんだよ。これはオレと魚との一対一の勝負だぞ。」


「はい。はい。じゃあ、一人でどうやって甲板まで上げるの?」


「い、いや。」


 アメリの抗議はリオに却下された。


「たしかこの糸はアイアンボールの血を塗った特製の物よね?じゃあ、サンダー!」


「ギャー!」


 釣糸を掴んだサオリがサンダーを糸に流した。糸から電気が流れると言う事は、当然アメリにも流れる訳で、感電したアメリが悲鳴をあげた。


「ちょっと、いきなり何するんだよ!」


「おかげで、獲物が浮いてきたみたいじゃない。」


 アメリの抗議を受け流して、サオリが海面を指さして言った。海面には一メートルはあろうかというマグルが腹を上にして浮いていた。


「じゃあ、ギャフ組のみなさん、準備は良いかしら。今から寄せるから。」


 アメリの竿を掴んだサオリがそう言った後に、アメリが叫ぶ。


「なにか、海中から来るよ!」


 海面が盛り上がり、とてつもなく大きな物が飛び出し、マグルを一飲みにすると再び海中へと消えて行った。そのショックでマグルにかかっていた針が外れた。


「い、今のは?」


「マッドシャークよ!一匹じゃないよ!何十匹もいるわ!みんな!気をつけて!」


 私が何の化け物が出たのか問いかけると、それにアメリは、答えると同時にみんなに警告を発した。アメリのチート能力の鑑定で索敵もできるらしく、魔物の存在を察知したアメリが警告を発したのだ。のんびり釣りモードだった船はいきなり戦闘モードになった。


「船の右から一匹来るよ!」


 ズゴーン!


 アメリが警告するとほぼ同時に衝撃が走った。一匹のマッドシャークが船に体当たりしたのだった。そのあまりの衝撃に甲板から海に振り落とされそうになったが、隣にいたリオが私を掴んでくれたおかげで助かった。


「ばかめ!こいつは海賊船よ!ぶっつけ合うのは本業よ!そこらの船とは頑丈さが違うわよ!」


 リオが高らかに吠えた。


「いや!いくらこの船でも、今の攻撃を何発ももらうのはまずいですよ!」


 船の舵を取っていた骨が言った。


「よし!みんな!サンダガビームよ!呪文を唱えて!」


 骨の言葉に答えるようにアメリがみんなに魔法の指示をした。魔法使いが五人も六人もいるこの船を襲うとは馬鹿な魔物達だ。そう思い、私もあわてて呪文を唱え始めた。


「今度は左から来るよ!」


 アメリのその声に左舷に走ると、大きな三角のヒレがこちらに向って来る。


「まだよ!もっと引き付けて!・・・よし!今だ!」


「「「「「サンダガ!」」」」」


 アメリの号令で五人が一斉にサンダガを撃った。超巨大な稲妻が水面に出ていたマッドシャークを襲った。さすがのマッドシャークも五人の合わせ技の超巨大サンダガの前では一発だ。


「ばかめ!一昨日きやがれ!」


 リオが勝ち誇っていると、


「右から来ます!みなさん、衝撃に備えて!」


 甲板から一段高い所にある操舵室で舵を取る骨が叫んだ。


 ドゴーン!


 再びの衝撃に今度は頭から水をかぶった。


「みんな!一か所に固まるのはまずいわ!オレとサオリが右舷に行くから、残りは左舷に回って!船長はどこから来るかみんなに指示して!」


「「「「おう!」」」」


 アメリの指示で私達は二手に分かれた。左舷には数えきれない数のヒレが見えていた。そのヒレに対して、私は力の限り魔法を撃った。リオとセナと力を合わせ五匹はやっつけた。しかし、きりがない。このままでは私達の魔力が尽きてしまう。そう考えていると、アメリが叫ぶ。


「きりがないわ!アーリン右舷に回って!」


 私が右舷に回るとアメリはアイテムボックスから取り出した銛を構えて船首に走り出した。そして、渾身の力を込めてそれを投げた。


「これでも喰らえ!」


 辺り一面を漂う中で一際大きなヒレにアメリの投げた銛が突き刺さった。


 さらにアメリは銛を何本も投げた。銛を突き刺されたマッドシャーク達が怒り狂ってこちらに向って来るかと思われたが、その突進を止めたのは、他でもない仲間のマッドシャーク達だった。なんと、マッドシャーク達は仲間割れを始めたのだ。


「え?なんで?」


 私が思わず、疑問を口に出すと、アメリが得意げに解説を始めた。


「奴らは血の匂いが大好きなんだよ。血を流す者なら親兄弟でも襲うって事さ。さっ。今のうちに逃げるよ。全速前進!」


 アメリの掛け声で船はなぜか急に走り始めた。帆も上げて無いのに。まるで意思を持った生き物ようだ。(後で聞いた話によると、船自体が一匹の魔物で本当にアメリの命令に従って走り出したらしい。どうりで寝苦しかったわけだ。本当に幽霊船だとは。)


「マッドシャークに取り囲まれたときはどうなるかと思いましたけど、さすがアメリさんですね。」


「まだ安心するのは早いよ。」


 ほっとした私がアメリを褒めると、アメリがそう言った。アメリの警告が当たったようで、操舵室から周りを警戒していた骨が叫ぶ。


「後ろから特大のヒレが追って来てます!」


「そら、真打の登場だ!みんな持ち場について!」




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