表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/373

第126話 セシルに帰るぞ

 


「それで、どういうつもりよ!」


「す、すみません。うっうっうっ・・・・」


 オレが最後のスケルトンナイトをサンダーソードで撃破して戻ってくると、泣いて土下座をしているアイリーンをサオリが厳しく問い詰めている所だった。


「まあまあ、サオリ。怖かったんだよね?アイリーン。」


 オレは激高しているサオリをなだめ、土下座するアイリーンの前に腰を下ろしてやさしく問いかけた。


「はい。私、実は大変な怖がりでして、さっき初めてみた魔物があまりに怖かったものですから、早くやっつけようと思ったら焦って、自分でも訳が分からなくなり魔法を連発してしまいました。」


「ふーん。魔物が怖くて連続攻撃をするなんて、まるでリオね。」


「な、なによー?」


 自分の事を引き合いに出されたリオが口を挟んだ。


「まあ、悪気が無いのがわかったからもういいよ。でも、困ったね。後ろから魔法を撃たれると思うと、安心して敵に当たれないわね。」


「アメリの言う通りだわ。暁がアイリーンを手放した訳がわかったわ。」


 サオリがしみじみと言った。アイリーンは暁のメンバーとケンカしてパーティを首になったと言っていたが、アイリーンほどの魔法使いを簡単に手放すとはおかしいとは思っていた。アイリーンは対人戦は素晴らしく強いが魔物相手はてんで使い物にならないって事だろう。


「このまま先に進むのは危険ね。とりあえず、一回外に出ようか?」


 オレ達はサオリのワープでダンジョンの外に出て、エイハブとマームのいる船へと向かった。


「おや、今日は随分お早い帰還ですね。」


 船の整備をしていたエイハブが声をかけてきた。


「うん。実は困った事が起きてね。それで、みんなで話し合おうと思って。」


 オレはダンジョンでの出来事をエイハブに話した。


「ふーん。それは困りましたね。」


 そう言うとエイハブは同じく船を整備していたマームを呼びに行った。オレ達はテーブルに着くとアーリンの事について話し合う事にした。


「アーリン。それで、今までもこんな事はあったの?」


「いえ。恐怖で固まってしまう事はちょくちょくありましたが、訳が分からなくなったのは初めてです。」


 議長のオレが問うとアーリンは小さな声で答えた。それに対してサオリが吠えた。


「訳が分からなくなったら魔法を味方に撃つの?あんたは。」


「ごめんなさい。」


「まあまあ、サオリ。今はアーリンの糾弾会じゃないから、それに被害を受けたのはリオとオレだから。その被害者のオレ達が許してんだから誤爆の件はもういいよ。今はこれからの事を話し合おう。それで、怖いのは魔物だからなの?それとも幽霊だからなの?」


「はい。ダンジョン以外の魔物以外はわりと平気です。幽霊が怖いんです。今もなぜか寒気がしています。」


「ふーん。リオと一緒ね。わかった。幽霊を克服するためにアーリンとリオはしばらくこの船で寝泊まりしなさい。」


「えー。なんで私まで?」


 リオが不平を言った。


「リオ。あんたも幽霊に弱いじゃない。文句は言わないの。」


「はーい。」


 リオは渋々返事した。


「あのー。この船で寝泊まりするのがなんで幽霊克服に繋がるんですか?」


「ああ、それはね。」


 おずおずと質問するアーリンにオレは説明した。この船が海賊船である事、そして幽霊船である事を。


「え!?」


「ど、どうしたの?アーリン。」


「アメリ。アーリンが白目をむいて気絶してるよ。ヒール!」


 サオリが気絶したアーリンにヒールで活を入れた。


「うわー!」


 気が付いたアーリンは船から逃げ出そうとした。


「アーリン!」


 オレはアーリンの頬を平手で殴った。


「しっかりしろ!怖くないから!船長だって、マームだって幽霊だけど怖くないだろ!」


「は、はい。」


 アーリン頬を手で押さえて弱々しく答えた。


「うーん。とりあえず、アーリンには慣れてもらうしかないけど、それにしても古城のダンジョンはアーリンにとっては最悪のダンジョンね。そうだ。船長とマームのレベルアップも兼ねてオレ達の故郷のセシルの町のダンジョンに潜ってもらうか?」


「え?そんな事ができるんですか?」


 オレの提案にアーリンが聞き返した。


「できるよ。オレ達にはサオリさんという素晴らしいタクシーがいるじゃない。サオリのワープでセシルの町なんかあっと言う間よ。」


「ちょっと、人の事をタクシー扱いなんて酷いじゃない。でも、今の案は賛成だわ。幽霊が出なくても、レベルアップを図るには古城のダンジョンは厳しすぎるわ。」


「良い案でしょ。アーリンにはこの船で幽霊に慣れてもらって、実力はセシルの町で磨いてもらうの。他のみんなはどう思う?」


「うん。賛成。だけど、私の船暮らしは反対。」


「はい。リオさんは賛成ね。セナは?」


「私も賛成よ。」


「じゃあ、決まりね。明日からアーリン、船長、マームはセシルの町のダンジョンに潜ってA級冒険者を目指してもらうわ。オレ達四人は変らずに古城のダンジョンの攻略ね。」


「ちょっと、私の船の件はどうなったのよ?」


 リオが文句を言ってきた。


「あー。それはもう決定事項だから。幽霊が怖くなくなるまでアーリンと船長と一緒に寝泊まりしてもらうよ。」


「えー。やだよ。」


「じゃあ、あんたは若い男女が二人っきりで船で寝泊まりしても良いと言うの?リオ。アーリンに付き合ってあげなさい。」


「わかった。」


 リオは渋々了承した。


「私のせいですみません。」


 アーリンがリオに頭を下げた。


「いいのよ。リオもアーリンと同じく幽霊が怖いんだから。」


 謝るアーリンをオレはフォローした。


「じゃあ、アーリン達の冒険者登録とかメアリー師匠への挨拶も兼ねて、オレ達も久しぶりにセシルの町に戻ろうか?」


「「「「「賛成!」」」」」


 そういうわけでオレ達はセシルの町にいったん戻る事にした。セシルの町で大事件が起きているのも知らずに。




 ****************************






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ