第123話 VSスケルトンナイト
「サンダー!」
四体のスケルトンナイトの起き上がりざまに、サオリの無詠唱の魔法が炸裂した。スケルトンナイト達は動きを止めた。
「やったの?」
セナが聞いてきたが、残念ながらオレの鑑定ではスケルトンナイトの反応がまだ消えていない。
「まだよ!来るよ!」
オレの注意にあわせるように、止まっていたスケルトンナイト達がはじけるように動き出して、オレ達それぞれに一斉に襲って来た。
キーン‼
オレに向って来たスケルトンナイトの剣を剣で受けた。つばぜり合いのさ中に呪文を唱え続ける。
「サンダーソード!」
呪文を唱え終えたところで剣に電気を流した。オレの剣からスケルトンナイトの剣を通じてスケルトンナイトの体にも電気が流れた。スケルトンナイトは一瞬動きを止めたが、それだけだった。死にもしなければ、弱りもしなかった。くそ、またこのパターンかよ。電気は効くがHPが高くて致命傷にはならないって言うやつか。ただ斬ってもダメージは与えられないし。また反則的な強さじゃねえか。
だが、斬り合いのさ中に動きを止めてしまうという致命的な欠点があるじゃないか。
オレはスケルトンナイトから距離を取ると、呪文を唱え始めた。スケルトンナイトはこちらの出方をうかがっているのか攻撃をしてこない。チャンス。
「サンダービーム!そして突き!」
久しぶりの必殺技のサンダー突きである。サンダーで動きの止まったスケルトンナイトの喉元にオレの必殺剣が炸裂した。いくらHPが高い化け物でも首を落とされたらそれでおしまいだ。
おしまいのはずが、オレはスケルトンナイトの反撃を受けてしまった。なんと首を飛ばされたスケルトンナイトが攻撃をしてきたのだった。首の骨を破壊されたスケルトンナイトは何事もなかったように攻撃してきた。
カキーン‼
ここのところ、持ち歩いている鉄の盾でかろうじて受けた。危なかった。基本盾を装備しないオレだが、リビングアーマーの戦利品のおかげで命拾いをしたぜ。
首がだめなら頭だ。オレは再び距離を取ると呪文を唱えた。
「サンダーソード!」
オレの剣が電気を帯びて光りだす。ただならぬ気配を察したスケルトンナイトがすかさず攻撃してきた。オレはそれを盾ではなくて剣で受けた。剣から伝わった電気で感電したスケルトンナイトは動きを一瞬止めた。一瞬だがオレにとっては十分すぎる一瞬だ。オレは剣を滑らせるとその勢いでスケルトンナイトの兜をたたき斬った。さすがのスケルトンナイトも頭をかち割られてはおしまいだ。光の球になって消えた。
スケルトンナイトを一体撃破したところですかさずセナの助太刀に入った。
「セナ!サンダーで動きを止めて!」
「サンダー!」
セナの至近距離からのサンダーを受けてスケルトンナイトは固まった。
「サンダー斬り!」
サンダーソードでオレは動きの止まったスケルトンナイトの頭を叩き斬った。スケルトンナイトは光の球になって消えた。
「セナ!リオの助太刀に入って!それと弱点は頭だから、頭を潰して!」
「わかった!」
オレはセナに指示を出すと、サオリの助太刀に入った。
サオリは魔法を連発してスケルトンナイトのHPを削る作戦のようだった。
「サオリ!お待たせ!サンダーで敵の動きを止めて!とどめはオレが差すから!」
「了解!」
オレはサオリに指示を出すと呪文を唱えながらスケルトンナイトに斬りかかった。
「サンダーソード!」
「サンダービーム!」
「そして突きー!」
オレのサンダーソードが発動するのとほぼ同時にサオリがサンダービームを放った。間髪入れずオレはスケルトンナイトの頭を突いた。ツープラトンのサンダー攻撃を受けて、さすがのスケルトンナイトも一発で光の球になって消えた。
次はリオ達だ。オレとサオリが向かうとちょうどリオが最後のスケルトンナイトを頭からたたき斬ったところだった。
最後のスケルトンナイトを撃破したところで部屋の扉が開いた。遠くでも扉の開く音がした。オレ達は残った魔石を拾い集めると出口に向かった。この部屋だけでなく、この階層の扉も開いていた。
扉を出ると通路が奥へと続いていた。その事を確認したオレ達はサオリのワープで宿へと戻った。時刻はお昼少し前と言ったところか。宿で各々鎧を脱ぎ着替えて船に向った。ちなみにマームはエイハブと一緒に船の手入れをしていた。
「アメリ。お昼はどうするの?」
お腹を減らしたリオが聞いてきた。
「うーん。どうしようか?今日もいい天気だし、船上パーティをしようか?」
「と言う事はアメリがまた異世界料理を作ってくれるの?」
「うん。任せて。」
「やったー。」
リオの喜びの声に釣られてサオリとマームが来た。
「ちょうどいい所に来た。マームはお皿とフォークとスプーンにナイフを並べて、サオリは料理の下準備を手伝って。」
「わかりました。」
「わかったけど、今日は何を作るの?」
「うん。久しぶりに天ぷらというかフライね。」
「やったー。」
オレはアイテムボックスから食器を取り出してマームに渡した。サオリには野菜に肉、魚介などの天ぷらのタネになりそうなものを渡した。オレはと言うと、ボールに小麦粉をとき卵を入れて混ぜた。そして大鍋に油を入れて加熱した。サオリを手伝いタネをどんどん作った。油が十分に熱くなったところでみんなを席に着かせた。テーブルの上にはすでにパンとスープが並べてある。みんなには揚がるまでパンとスープを食べてもらっていた。パンもスープもアイテムボックスから出した出来立てのほやほやである。それだけで十分にごちそうであった。
まずはエビやカニの魚介からだ。衣をつけて油に入れるとジュワーとおいしそうな音をたてて揚がる。揚がった物から順次マームに頼んで皿に並べてもらった。天ぷらは何といっても揚げたての熱々が美味しいからね。
「やっぱりアメリの料理は美味しい。」
真っ先に飛びついたリオがうれしい事を言ってくれた。作り甲斐があるってもんだ。
「本当に美味しいですね。熱々で噛むとじんわりと甘くて。エビをこんなにおいしく食べたのは初めてです。これはなんて料理ですか?」
エイハブが衝撃の質問をした。日本人なのに天ぷらを知らないのか。いや、田舎の明治人なら知らないかもしれないか。
「天ぷらって言うのよ。日本の料理よ。知らない?」
「あー。これが天ぷらですか。聞いたことはあったけど食べたの初めてです。異世界に来て日本のこんなに美味しい物が食べられるなんて。アメリさん。ありがとうございます。」
エイハブは感極まって泣き出した。泣くほど旨いってか。料理人として感無量だ。オレも泣きそうになった。
「マームも食べてよ。」
「はい。ありがとうございます。でも、アメリさんは?」
「さすがにオレは作るのに忙しいから無理だけど、後でたっぷりと食うから良いよ。なんせ、食材は売るほどあるからね。」
「わかりました。私もいただきます。」
マームが遠慮して食べてなかったので声をかけた。マームは使用人じゃないし、オレ達の間に上下関係はない。遠慮は無用である。
マームが食べているのを確認してから、今度は魚を揚げていく。大きめの魚は開いた物を小魚はそのままから揚げにした。油っこい物が続くとあれが欲しくなる。
「アメリ。エールは無いの?」
「はい。セナさん。ありますよ。アイテムボックスから取り出すから取りに来て。」
オレはアイテムボックスからキンキンに冷えたエールと人数分のコップを出してセナに渡した。セナはエールをコップに注いでみんなに配った。
「やっぱり、天ぷらにはエールよね。」
セナがもっともらしい事を言うけど、セナはどんな料理でもエールを飲んでいた。
魚をみんなが食べ終わったところでいよいよ肉の投入である。ダンジョン牛にボアの肉を小さく切った物を衣を付けて揚げた。
「やっぱり肉よね。」
リオが言った。この世界の人達は基本的に肉食である。魚介はあくまで珍味の一つであるので、肉の評判の方が良い。
肉が一通り行きわたった所でサオリが調理を代わってくれた。席に着いてオレも食べた。まずは海老天から食べる。旨い。さっきまでぴちぴちと動き回ってたやつだ。鮮度も抜群だ。塩をつけても旨いが、手製の天つゆにつけても旨い。ご飯が欲しいとこだがパンにも合う。もちろんエールにも合う。サオリにリクエストして次は小魚を揚げてもらった。日本で言うところの鮎みたいにいい匂いのする魚で、天ぷらにしても美味しかった。いや、むしろ天ぷらこそが一番の調理法と言えた。いい香りは損なわれずにほくほくした旨味が加わっていた。小魚を食べたところでメインのお肉である。噛むと熱々の肉汁が口中に溢れかえる。熱い。けど、それ以上に旨い。熱々の塊をエールで流し込んだ。
「あ、アメリ。泣いてんの?」
「いや。あわてて食べたら熱くて、涙が出ただけだよ。」
サオリの問いかけにオレはとっさに嘘をついてごまかしたが、そう言うサオリ自身も泣いていた。ちなみに貧しい漁村の出であるマームも美味しさのあまり泣いていた。
「マーム、どう?アメリの料理は美味しいでしょ?」
「こんなお貴族様が食べるような料理は初めてです。美味しくてと言うのもありますけど、それ以上に、私まで平等に扱って下される皆様に感激して涙が止まりません。」
リオの問いかけにマームは涙を流しながら答えた。
「うん。私達はなんでも平等だからね。」
「平等って言うならリオ君にも仕事を与えよう。君は洗い物と片付けをよろしく頼むよ。」
「そんな、私がしますよ。」
「だめ。今、平等って言ったでしょ。マームはさっき料理を運んでくれたから、今度はリオにも働いてもらわないと。良いよね。リオ。」
「えー。藪蛇。でもしかたないか、喜んでやらせてもらいます。」
「じゃあ、片付け係も決まった事だし、食べて飲もう。あっ。午後からはノア婆さんの所に行くからエールの方はそこそこにしてね。」
こうして楽しく美味しい船上パーティは盛り上がっていった。
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