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第114話 振り出し

 


 案の定、巨木の上に扉はあった。不思議な事に、木に扉が付いているのではなくて、扉だけがそこの空間にあった。さっそく鍵をさそうとしたが鍵穴が無い。


「この扉、鍵穴が無いよ。どうしよ。」


「え?普通に開くよ。これ。」


 オレが鍵穴を探してもたもたしている間にリオが扉を開けた。


「じゃあ、この鍵はいったいどこのかな?」


「たぶん。後でどっかでいるんじゃないの。アメリ、無くさないでね。」


「わかった。アイテムボックスに入れとくよ。」


 オレがカギをぶらぶらさせながら聞くと、サオリが答えてくれた。こういうのは、ゲームでも後で必ずいるよな。オレは絶対に無くさない保管箱でもあるアイテムボックスに鍵をしまった。


「あれ⁉ここは⁉」


 先に中に入っていたリオが変な声をあげた。


「え?どうしたの?」


 リオに続いてサオリが慎重に扉をくぐった。


「あっ。ここはもしかして一階?」


 サオリが言うようにかって見た光景が広がっていた。


「一階と見せかけて、違う階じゃないの?今までのパターンからして。」


 オレがそう言うと、


「一階かどうかはそこの扉を開けてみればわかるんじゃない?」


 リオがダンジョンの中にあった扉を指さして言った。ここが一階ならオレ達がここに入って来た扉だ。


 リオが扉を開けると、そこには門番の兵士がいた。


「あれ?お前らはいつの間に中に入ってたんだ?」


「え!ここはダンジョンの入り口で間違いないですか?」


「何を言ってんだ。そうだよ。ダンジョンから出るんかい?」


「いや。ちょっと外の空気が吸いたくなって出ただけです。ごめんなさい。ダンジョンに戻ります。」


 リオと門番の兵のやりとりからここが一階に間違いない事がわかった。オレ達は扉を閉めてダンジョンの中に戻った。


「あっ!さっき、オレ達が出て来た扉ってそこにあったよね?」


 オレ達が今さっき、くぐった扉があった辺りには何もなかった。


「え!振り出しに戻されたって事?ここまで来て。」


 セナが慌てふためいて言った。


「セナ落ち着いて。開かなかった扉があったじゃない。そこが先に進む文字道理の鍵だと思うよ。」


 オレはアイテムボックスから取り出した鍵をみんなに見せて言った。大広間の端に階段があって下に行く階段は扉が閉まっていたので、オレ達は階段を上って進んでいたのだった。


「とりあえず、この鍵を試してみようよ。」


 オレ達はダンジョンの一階を再び進む事になった。


 オレとリオが歩き出そうとすると、


「えー。もう一階はいいよ。サオリのワープでサクサク進もうよ。」


「そうね。無駄な戦闘は避けるべきね。開かなかった扉のあった場所は覚えてるから行けるよ。」


 セナとサオリの後衛組は無駄な戦闘は避けてワープで進むべきだと提案してきた。オレとリオの前衛組は後衛組に押しきられてワープで行く事になった。


「アメリ。あそこ。」


「どうやら間違いないようね。」


 サオリが指し示した先では、扉の鍵穴がご丁寧にも光っていた。その光に導かれるようにオレは鍵を挿して回した。ガチャリと音がして扉の鉤が開いた。


 オレが扉を開けて、中に入ろうとすると、


「待って。アメリ。今日はここまでにしようよ。扉が開くのを確認したところまででいいんじゃない。」


「え⁈」


 オレの肩を掴んでサオリがオレを止めた。


「え。もうちょっと行こうよ。」


「ダメよ。あんたもあんたの防具もボロボロじゃないの。」


 オレはモンキーゾンビナイトに何度も体を切られていた。幸い体の方はハイヒールで回復はしていたが、防具の方はボロボロだった。


「あー。本当だ。これはいかんわ。アメリもアメリの防具もなおさんと。」


 サオリが言った事を聞いて、オレをじろじろと観察したリオまで言った。


「アメリは、またおうちで待機ね。」


 昨日までオレとセナは宿屋で自宅療養をしていた。その自宅療養仲間のセナが、また退屈な自宅療養をしろと言った。どこかうれしそうに。


「えー。自宅療養は嫌だー。体はもう何ともないよー。」


「とにかく、帰ろう。帰ってから、そういうの聞くから。」


 駄々をこねるオレを引っ張ってサオリは宿の庭までワープした。ちなみに鍵は、扉を閉めなおしてから、アイテムボックスにしまった。扉を開けっぱなしにして、他の冒険者が安易に中に入って全滅しないように、オレ達なりの配慮であった。


 宿に着くとオレは無理やり防具と服を脱がされて、風呂に入れられた。


「わたしのハイヒールの腕が良かったから傷は完全にふさがっているみたいね。」


「いや~ん。エッチ。」


 油や返り血などで汚れたオレの体を洗いながら、オレの体を観察してサオリが言った。


「良かった。でも、防具の方は修理せんと駄目ね。とりあえず、ダンジョンの方はしばらくお休みね。」


「ごめんね。オレのせいで。」


「いや。謝らんでも良いよ。アメリのおかげで攻略できたんだから。せっかくだから、明日からしばらく観光旅行に行かない?この辺は風光明媚な所が多くあるみたいだし。」


 オレの体を心配してくれたリオが観光を提案した。また、お留守番をさせられると思ったオレは反対をする。


「反対。オレだけ留守番するのはさみしいから嫌だ。」


「アメリの体も何ともないみたいだから、アメリも連れて船長の船で。みんなどう?」


「リオ。大好き。」


「キャー。アメリ。どこ触ってんのよ。」


「どこって、オッパイ。」


 リオはすらりとした美少女であったが、けしからんことにそのオッパイはメロンのようにたわわに実っていた。オレがついついけしからん物をこの手で確認してもしかたないだろう。それなのにオレはサオリにどつかれてしまった。

「もちろん賛成よ。戦闘狂の二人と違ってわたしとセナはできるなら戦いたくないからね。じゃあ、今日は明日からの観光旅行に備えて買い出しとかの準備ね。」


「私も賛成。防具屋と冒険者ギルドも行かなくっちゃね。」


 サオリとセナもリオの観光旅行に賛成した。オレ達は風呂から上がると宿での夕食の時間までに明日からの観光旅行の準備をすることにした。ちなみに、出かけるリオ達について行こうとすると、サオリに叱られて今日の所はお留守番になった。




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