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第113話 モンキーゾンビ戦決着

 


 モンキーゾンビキングはとにかく巨大なサルだった。3メートルを超えるサル。まるでキングコングだった。的は大きい、当てるのは簡単だろう。


「ならば、燃やすまでよ。ファイアーボール!」


 見るからにパワーファイターであるモンキーゾンビキングは、縮地は使えないみたいで、オレのファイアーボールをまともに受けた。ファイアーボールを受けたモンキーゾンビキングが燃え始める。


「げぎゃぎゃぁ!(ウォター!)」


 モンキーゾンビキングは大水を浴び、自らに着いた炎を消した。


 それを見たサオリがオレに言った。


「あ、言い忘れたけど、水魔法も使えるみたいよ。」


「うん。そうみたいね・・・」


 これで、得意の火責めも封じられた。ならば、剣で首を落としてやる。オレは縮地で距離を詰めてジャンプして、モンキーゾンビキングに切りかかった。切るのは簡単だったが、3メートルを超える化け物の首を一発で切り落とすのは不可能に近かった。首をひっこめられ、守りを固められてオレの剣撃を簡単に堪えられた。


 今度はこちらの番だと言わんばかりに、モンキーゾンビキングが手に持った巨大な剣を振りまわしてきた。オレは縮地を使い避けた。大振りな剣は避けるのは容易いが、一発でも当たれば致命傷になるだろう。そう思わせるに十分な剣圧だった。


 モンキーゾンビキングを囲んでオレ達は距離を取っていた。モンキーゾンビキングはオレ達の出方をうかがっているのか自分からは攻めて来ない。


「アメリー!タイマンでけりをつけたい気持ちはわかるけど、みんなで協力しないと無理みたいよ。」


「タイマンじゃなくて相手の実力を測ったんだ。どうやら正攻法で行ってもダメみたいね。からめ手で行くしかないね。」


「アメリ得意の卑怯技ね。」


「卑怯技でなくて頭脳攻撃ね。じゃあ、しばらく仕込んでくるわ。後はよろしく。」


 そうサオリに言い残すとオレは戦線を離脱した。


 オレ達は魔物と正々堂々と勝負しに来たわけではない。魔物を狩りに来たんだ。マンモスや人食い熊などの巨大で凶悪な獲物を狩人はどうやって狩ってきた?飛び道具?いや、鉄砲はないし、第一不死身のゾンビにそんなものは効かない。マンモス?古代人はどうやって巨大なマンモスを倒した?そうか、これだ。


 オレは仕込みを終えると、リオ達と合流した。リオ達は火魔法で燃やしたり、剣で切りつけたりして、一見押しているように見えるが、不死身で回復魔法まで持っているモンキーゾンビキングには何のダメージも与えてないに等しかった。逆にこちらは一発でも攻撃をもらえばそれが致命傷にもなり兼ねる。実質は圧倒的に不利だった。


「みんなあの木に仕掛けたから、あの木まで逃げるよ。」


 オレは一本の大木を指さして言うと、一目散に駆けだした。だが、モンキーゾンビキングと対戦中の他のメンバーは簡単には来れない。


「サル相手に木の上で戦うんかよ!」


 サオリが吐き捨てるように言った。それでも木の麓近くまでモンキーゾンビキングを誘導してきてくれた。オレはアイテムボックスから取り出した大小様々な石を木の上からモンキーゾンビキングにぶっつけた。石をぶっつけられて頭に血が上ったモンキーゾンビキングは一目散にオレの登っている木を目指して走り出した。上を見ながら走っていたモンキーゾンビキングが突然転んだ。


「頭上注意も大事だけれど、足元も見て歩かないと足元掬われるよ。」


 そう言うと、オレはアイテムボックスから海賊の斧を取り出した。海賊の斧を上段に振りかぶるとオレは木の上から飛び降りた。オレの全体重を乗せた斧の一撃が転んでじたばたしていたモンキーゾンビキングの首を襲った。さすがのモンキーゾンビキングも今度は耐えられなかった。その首を落とすと大きな光の球になって消えた。後にはこれも大きな魔石が残されていた。


「みんな!やったよ!大猿をやっつけたよ!」


 魔石を掲げたオレは勝どきを上げた。


「やったー!アメリー!うわっ!」


 真っ先にオレに駆け寄って来たリオが転んで網に絡まった。


「リオ。動かないほうが良いよ。その網には鉤がいっぱい仕込んであるから、下手に暴れると体に食い込むよ。」


「えー。早く助けてよ。」


 オレがリオに絡まった網をほどいていると、サオリとセナがゆっくりと近づいて来た。


「ふーん。足元にロープを張ったんだ。」


「しかも、これ細くて丈夫だわ。」


「うん。メタルロックの血を染みこませてあるからね。でも、いくら細くてもそのままでは見破られるでしょ。だから木の上から挑発して意識を上に向かせたんだ。」


「さすがアメリ、卑怯技のスペシャリストね。」


「いい。オレ達はここに決闘をしに来たんじゃないよ。魔物を狩りに来たんだよ。古来から人間は強い獲物を狩るときは工夫をしてきたんだよ。わかった?原始人なみの脳筋君。」


「え?そうなの?魔法でやっつけてきたんじゃないの?」


 リオの言葉にむっときて説教してしまったが、何よりも便利な魔法と言う物があるこの世界では、たしかに大概のものは魔法で解決してきたのかもしれない。だから、オレの工夫も卑怯に映るんか。なんかちょっと落ち込んだ。いや。卑怯けっこう。卑怯こそオレの持ち味だ。オレは開き直って行くことにした。


「それで、ボスを倒したんだけど、どうしたらここから出られるんかな?見たところあの木も変化がないみたいだし。」


 サオリがモンキーゾンビ達が出てきた大木を指さして言った。


「じゃーん。これ、これ。」


「あー。また、鍵が出たんだね。じゃあ、扉を探そうか。」


「その通り。オレはあの木の上が怪しいと思っているんだ。早く行こうよ。」


「よし。じゃあ、ワープするね。」


 サオリがワープしようとすると、


「ちょっとー。わざとやってるでしょ?早く助けてよ。」


 いも虫のようになっていたリオが抗議した。


「いも虫が何か言ってるよ。」


 セナがそう言うと戦闘が終わって気が緩んでいたオレ達は笑った。笑い過ぎて本当にリオを置いていきそうになった。



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