第106話 アメリVSゲラン
登場人物紹介
・アメリ 主人公、体は女心は男よりの女。まさに性同一障害。
・リオ 力も魔法も超一流。ただし頭は三流。
・サオリ チート技の持ち主。こっちが主人公?
・セナ 賢者のはずが剣を鍛えさせられた魔剣士。
・ゲラン ゾンビ剣士。元名のある剣士。
歩きながらオレは呪文を唱えた。一度見せた技はおそらく通用しないだろう。しかし、オレにはこれしかない。絶対に避けれないサンダガの呪文を唱えた。
「サンダガ!」
オレの魔法が試合開始のゴングになった。
「そして・・・」
オレが踏み込む前に、ゲランが縮地を使って踏み込んできた。やばい。魔法は目くらましにもなっていない。なぜなら、ゲランは目をつぶって攻撃してきているからだ。オレは頭を切られるのを避けるので精一杯だった。肩口から切られた。
軽装と言えど、革鎧と鎖帷子を着込んでいたのと、サオリのかけてくれていた防御魔法のおかげで傷は浅かった。浅いさ。血が派手に飛び出しているけど。めちゃくちゃ痛いけど。
「わしぐらいの達人になると目をつぶってでも敵を切れるぞ。そんなしょぼい魔法じゃ
目くらましにもならんぞ。どうだ降参するか?」
ゲランが降伏勧告をしてきた。
「アメリ!降参してもいいよ!わたしがゲランをやっつけるから!」
サオリの申し出はありがたいが、オレにもプライドがある。オレは無言で手を振って拒否の意思表示をすると、縮地で距離を詰めてゲランに切りかかった。
オレの渾身の一撃は両手持ちの長剣で簡単に防がれた。返す剣で胴を狙うがこれも防がれた。強い。オレはたまらず縮地で後ろに下がった。剣の勝負じゃ敵いそうもない。やはり、魔法を撃っていくしかないか。
オレはさらに縮地で距離を取った。そして呪文を唱えた。
「ふっ。無駄な事を。好きなだけ魔法を撃ってくるがいいさ。」
ゲランが挑発をしてきた。
「サンダガ!」
オレの魔法が炸裂すると同時にゲランが踏み込んできた。来るのが分かっていればオレにも対処ができる。オレも縮地を使ってかわすと同時に切りかかった。手ごたえはあったが不死身のゾンビにはダメージは与えられなかった。分かってはいるけど、切っても切ってもダメか。首を落とさないと。
オレは距離を取って懲りずに魔法を唱えた。サンダガが炸裂すると同時にゲランも懲りずに踏み込んできた。待ち構えていたオレはゲランを切ったが不死身のゾンビには大きなダメージを与えられなかった。
四度目にもなるとさすがにゲランはもう踏み込んで来なくなった。待ち構えているオレのカウンターを喰らうと言う事を学習したみたいだった。じりじりと距離を詰めて切りかかってきた。剣と剣の勝負ではさすがにオレの分が悪い。また切られてしまった。満身創痍になってしまった。
「アメリー!」
リオの悲鳴にも似た声援が響く。
オレはさらに懲りずに五度目の呪文を唱える。
「また無駄な事を。懲りてないのか。よかろう、撃って来なさい。」
ゲランを無視してオレは魔法を撃つ。
「サンダガ!」
辺りが雷の光で包まれている所で黒い影がゲランを襲った。
待ち構えていたゲランが黒い影を切った。
「何―!」
ゲランがさけんだ。
「わしは何を切らされたんだ!くさ、くっさい!」
頭からその物体をかぶらされたゲランが再びさけんだ。
「それは油よ。ちょっと臭いけど我慢してね。」
オレはサンダガでゲランが目をつぶっている隙に、アイテムボックスから油の入った瓶を取り出してゲランに投げつけたのだ。目が見えていればそんな不審な物をゲランも切りはしないだろうけど、見えないばかりに本能的に切ってしまったのだ。ゲランの足元は油でひたひたになった。油は当然滑る。足元がおぼつかなくなったゲランにオレは襲い掛かった。さすがの達人と言えど、思ったようには剣を振れない。オレの攻撃が面白いように決まった。お前は滑らないのかって、オレのブーツは世紀末使用なんだぜ。鋲が打ってあるんだぜ。もちろん靴底にもたっぷりと。攻撃用にしたつもりの鋲が滑り止めとして役立ったぜ。
しかし、さすが達人だ。いくら切られても、唯一の弱点である首を切らせない。オレは縮地を使い距離を取った。
「さすがやるわね。あんたはオレが今まで戦った中で最強の剣士だわ。あんたが死んでもあんたの技はオレの中で生きていくから安心して。」
「何を勝ち誇ったような事を言っているんだ。わしはまだ死んどらんぞ。いや、もう死んでるか。ややこしいな。とにかくまだやれるぞ。来い!」
それを聞いてオレは六度目の呪文を唱え始めた。
「ファイガボール!」
オレの剣から特大の火の玉が出てゲランを襲った。
「ぐがー!」
ゲランの絶叫が響き渡った。いくら不死身のゾンビ剣士と言えども、丸焼けにされたらおしまいだ。ただのファイガじゃ焦げて終わるところを前もってかぶらせておいた油のおかげで良く燃える。このまま燃やし尽くしてもいいけど、苦しんで死ぬのはかわいそうだ。武士の情けでとどめをさしてやろう。
「そして突きー!」
オレはリオのように剣を水平にして突いた。もちろん剣を抜くときに横に払った。首が飛んだゲランはようやく光の球になって消えた。油が燃え尽きると、特大の魔石と鍵が一個ずつ残されていた。
「アメリー!」
泣いて目を真っ赤にしたリオが抱き付いてきた。
「ギャー!」
オレは絶叫を上げた。
「あ。ごめん。ごめん。ハイヒール!」
オレを抱きしめるリオの体から青白い光が出てオレを優しく癒した。オレの体の傷がみるみるうちにふさがって行った。
「さすがアメリね。きっとやってくれると信じて待ってたわよ。」
サオリもやさしく声をかけてくれた。
「なに言ってんだよ。サオリは降参を勧めてたくせに。」
「それはアメリの事を思ってだよ。やられ過ぎてかわいそうだったもの。」
「うん。オレも正直降参したかったんだけどね。」
「それにしても、さすがアメリね。アイテムボックスまで戦闘に利用するなんて凡人のわたしには思いつきもしないわ。」
「さすが、脳筋と言いたいんでしょ?」
「良く分かってるじゃない。」
サオリとリオの笑い声でオレ達の戦いは幕を閉じた。ちなみにセナはずっと眠ったままであった。
「鍵が出たって事は扉もどこかにあるって事ね。」
オレは周りを見渡して言った。
「あ、あそこ。」
リオが指さした。リオが指さした壁にはいつの間にか扉ができていた。
オレはサオリに肩を借り、セナはリオにおぶられて扉の外にでた。扉の外は再び草原であった。どうなっているのかはもうどうでもいい。扉の外を確認するとオレ達はサオリのワープで宿に帰った。
*************************




