第104話 セナVSリリア
私はセナよ。美少女戦隊一の美少女とは私の事よ。そんな当たり前の事より、私は怖かったんだ。何がって、ゾンビが。あの、この世の物と思えない顔に、さらには、切られても死なない不死身の体に恐怖したんだ。それなのに、アメリのバカが相手の要求を真に受けたもんだから、一対一で戦う事になっちゃった。剣に自信のあるリオやアメリなら、剣でねじ伏せて簡単に勝てるかもしれないけど、私にはそんな度量はないわ。だいたい私は後衛の魔法職よ、本来は。それを不死身の剣士とタイマンだなんてどうかしているわ。私が嫌な顔をしていると、珍しく空気を読んだアメリが一番手をリオにしてくれたわ。
こういう時の脳筋は頼りになるわ。見てても負ける気がしないもん。なんとかしてくれると思うもん。
でも、そんなリオでも苦戦したわ。しりもちをつかされた時は、万事休すだと思った。でも、最後まであきらめないリオのど根性が逆転を導いたわ。しかも、新しい必殺技まで開眼して。
そんなリオの姿を見て私も遅ればせながらやる気が出てきたわ。リオやアメリにできる事は私にもきっとできる。相手が自分より強かったら、その隙をついてでも勝つ。私だって、目立たないけど美少女戦隊の一員よ。
相手の大将のゲランにアメリが突っかかって行こうとしているけど、まだアメリの出番は早いわ。その前に私がやっつけてやる。さあ、かかってらっしゃい。
「さあ、美少女戦隊一の美女のセナ様が相手をしてやるわ。そっちの死にぞこない軍団は誰が相手をしてくれるのかしら。」
私はゾンビ達を挑発した。
「私が行こう。」
向こうも美女剣士が前に出た。
金色の髪に整った顔、まさに美女剣士だった、ゾンビだけど。生前はさぞかしきれいだっただろう。今は顔色が悪すぎるが。
ゾンビがいくらきれいでも私には関係ないが、一つだけ許せない所があった。ゾンビ達は鎧を着けず軽装備であったが、この女ゾンビはただ一点重装備をしていた。
オッパイがでかかったのである。動きやすい服を着ていたが、その服の上からでもわかる、でかい。ペチャパイの私への当てつけのようにでかい。
「私はセナ。美少女戦隊一の美少女よ。よろしく。」
思わず名のりの声も大きくなる。オッパイは小さいが。
「あら、かわいい。私はリリア。親衛隊所属の名もなき剣士よ。おてやわらかにね。かわいいお嬢さん。」
美女剣士が名のった。名のったついでに挑発までしてくれた。なめやがって、私だってこう見えてもう大人よ。子供扱いをした事を後悔させてやる。
私は呪文を唱え始めた。もちろん心の中で。リリアは無防備に近づいてきた。
「ファイガボール!そして突きー!」
特大の火の玉を全身で受けて怯んだリリアにとどめの突きを繰り出した。しかし、私の必殺剣は空を切った。体ごと相手にぶつかっていた私はたたらを踏んで振り返った。そこにリリアの剣が襲ってきた。
「わー!セナー!」
アメリの絶叫が聞こえた。
どうやら私は切られたみたいだった。追撃の剣をかわすと縮地で距離を取った。すぐに体のチェックをした。肩口を切られたみたいだが、クサビ帷子のおかげと前もってかけておいた防御魔法のおかげで傷は浅かった。良かった。あらかじめ防御魔法をかけといて、でなかったら、今ので終わっていただろう。後衛職の私は、スピードや威力を弱めてでも防御第一だ。
そういえば、アメリもリオにサンダー突きをやぶられていたっけ。達人相手に一度見せた技は通用しないってわけね。喉元を突いてくるのがわかっているから、よけるのは簡単か。
「どう?お嬢ちゃん、降参する?そしたら、命までは取らないわよ。」
リリアがさっそく降参をうながしてきた。魔物に降参なんかしても殺されるだけだ。私は再び呪文を唱え始めた。
「ファイガボール!そして突きー!」
バカの一つ覚えの必殺技はかわされ、そして再び切られた。素早く自身にハイヒールをかけた。みるみる傷がふさがっていった。
「セナー!もうファイガ突きは通用しないよ!」
アメリの悲痛な叫び声が聞こえた。
「私にはこれしかないから!」
「あんた。バカなの?」
私の返事にリリアがあきれて言った。
バカでもなんでも結構よ。バカにはバカの戦い方があるのを見せてやるわ。
私は再び呪文を唱えた。
「ファイガボール!」
特大の火の玉がリリアを襲った。そして追撃のために私も飛ぶ。今までならここで一直線に突きを放っていたが、手前で止まった。過去二回のファイガ突きでリリアが目をつぶって突きをかわしていたのは確認済みだ。いくら不死身でもファイガボールを受けて目を開けられるわけがなかった。
「そして、突かず!」
二回も餌を撒いておいたおかげで、リリアは突きが来るものと待ち構えていた。無防備な、リリアの剣を持った両手を切りつけた。剣を握ったままで両手が飛んだ。
「どう?お嬢ちゃん、降参する?」
私はさきほどリリアに言われた屈辱のセリフを返した。
「まいった。まいりました。」
リリアは潔くその首を私の前に差し出した。私はリリアの首をはねた。
「ありがとう。楽しかったよ。」
リリアが首だけで答えると光の球になって消えた。
「セナー!よくやった!ハイヒール!」
駆けつけたリオがハイヒールをかけて介抱してくれた。私はちょっとだけ疲れたから眠るわ。
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今回はセナ視点です。
 




