第102話 ゾンビ剣士
登場人物紹介
・アメリ 主人公、体は女心は男よりの女。まさに性同一障害。
・リオ 力も魔法も超一流。ただし頭は三流。
・サオリ チート技の持ち主。こっちが主人公?
・セナ 賢者のはずが剣を鍛えさせられた魔剣士。
・エイハブ 元転移者。魔物に転生してただのおっさんになった。
・???? ゾンビ剣士。元名のある剣士。
ガキーーン!
左手に持った盾で剣を受け止めたリオ。
「アブな!いきなり何すんのよ!」
右手の剣で剣士を切り払った。
「思わず切り返しちゃったけど大丈夫かな?」
何が大丈夫だ。リオのバカ、まだ魔物だと気づいてないのか。
「大丈夫だけど、大丈夫じゃない。」
オレが言うと同時に剣士が立ち上がった。
「よかった無事みたいで。」
「いや。良くねえよ。そいつ魔物よ。」
「えー!人間じゃないの?て言うか不死身?わたし、確かに切ったよ。」
「うん。元人間の魔物よ。不死身って言うか、もう死んでるからね。」
「じゃあ、どうすりゃいいの?」
「燃やすか、首をはねるしかないね。」
そう言いながら、オレはゾンビの首を切り飛ばした。
ゾンビとはまたやっかいな魔物が出てきたものだ。オレは倒れているゾンビを詳しく鑑定しなおした。
「ゾンビだったら、噛まれたら感染するんじゃないの?」
「いや、それは大丈夫みたい。」
地球で最も有名な魔物、当然元地球人のサオリも知ってるわけで、ゾンビの最大の恐怖の感染について聞いてきた。鑑定によると、地球のゾンビとは違い、異世界のゾンビは感染しないみたいであった。
「よかった。もし感染するんだったら、このダンジョンは封鎖しないといけないものね。」
「え?なんで?なんで?」
「もし、感染した冒険者が外に出ると、外でうつしまくって全世界がゾンビに支配されるからよ。」
「えー。怖い。」
地球でのゾンビ映画を思い出して、サオリはゾンビパニックの恐ろしさを異世界人のリオに説いていた。異世界のゾンビはどういう原理で生まれるのかはわからないけど、感染はしない。その点では安心だったが、ほぼ不死身という点ではやっかいだった。
「まあ、ファントムと違い実体があるから、首さえ跳ねれば魔法無しでやっつけれるから少しはましよ。」
オレがゾンビについて言うと。
「でも、元人間なんでしょ。今のは雑兵みたいだったけど、もし名のある剣士がゾンビになったら、不死身の体を得たわけでしょ。船長みたいに無敵なんじゃないの?」
セナが聞いてきた。
ここは元お城だ。厄介な事に名のある剣士は履いて捨てるほどいるだろう。
「と言う事は腕試しにもってこいね。」
リオが口を挟んだ。
「腕試しになるかどうかわからないけど、強敵は確かよ。気を引き締めて行くよ。いざとなったら丸焼けにすればいいから。」
オレはみんなに気合を入れた。
ゾンビ兵を倒しながらしばらく進むと、ついに名のある剣士が出た。なんでわかったかと言うと自分で名乗ったからだ。
「やあ、こんにちは。」
突然現れたゾンビ剣士が挨拶した。
「あ、こんにちは。」
先頭のリオも思わず挨拶した。
「生身の人間に合うのは久しぶりだ。何年ぶりだろう?オレ達にはもう時間の概念もないからな。あ、申し遅れた。わしはゲランと申す者。この城で一応親衛隊長をしておった。どうだ?オレ達と一対一の試合をしないか?」
ゾンビのくせに知性がある?何年ぶり?一対一の試合?突っ込みどころが満載だが、とりあえず挨拶は返すか。
「オレはアメリ。ただの冒険者よ。こいつらは仲間。それで、一対一の試合ってどういう事?見たところ一人しかいないみたいだけど。」
「あー。わし達は退屈してたんだよ。何年も何年もただ彷徨ってたからな。」
ゲランがそう言うと、残り三人の剣士が現れた。どいつもこいつも只者じゃない事が鑑定でわかった。鑑定で相手のレベルが分かってもオレ達よりも強いか弱いかまではわからない。ゾンビ自体の強さが分からないからだ。魔物自体が強ければレベル一でもオレ達よりも強い魔物はいるだろう。
「それで、一人ずつ順番に戦うのはどうだ。オレ達は魔物にまで身を落としたが誇りまでは失っていない。正々堂々と死合おうじゃないか。」
こいつは戦闘狂がそのまま魔物になった口だな。
「面白い。受けて立つわ。」
こっちの戦闘狂のリオが答えた。リオ。男前である。女だけど。
「ちょっと待った。こっちにも都合と言う物があるから、条件を着けさせてもらうわ。そちらの選手をまず先に出してよ。それを見てこっちも選手を決めるから。あと、こちらは魔法も使わせてもらうわよ。」
「よかろう。じゃあ、まずはこいつだ。ロン!」
ロンと呼ばれた若者?剣士が前に出た。
「おう。オレの名はロンだ。よろしくな。そっちの威勢のいい姉ちゃん。オレと一つどうだ?」
リオを指名してきた。一つどうだと指名してきたけど、エッチな指名じゃない死を賭けた指名であった。
「ふん。身の程知らずね。格の違いと言う物を思い知らせてやるわ。」
指名されたリオが鼻息荒く答えた。
オレはロンを詳しく鑑定した。力が突出しているみたいだが、スピードはそれほどじゃない。典型的なパワーファイターか。しかし、剣士の強さは力やスピードだけで決まるものじゃないからな。エースのリオを初戦で出すのはもったいないが、ここは様子見も兼ねてリオに頑張ってもらおうか。
「アメリ。もうリオを出して大丈夫?わたしが行こうか?」
「いや。サオリ。ここは相手の力量を見るためにも、エースのリオに頑張ってもらおう。なんせ、オレ達は負けイコール死だからね。慎重に行かないと。」
サオリが心配して声をかけてきた。セオリー道理なら、先鋒はセナかサオリで行くとこだが、リオに圧勝してもらって、勢いをつけてもらうか。
「よし。リオ頑張って。相手は首を飛ばされない限り死なないけど、こっちは生身だから気を付けてね。」
「おう。わかった。頑張るよ。」
待ち構えるロンに向ってリオがゆっくりと歩き出した。
「アメリ。リオ大丈夫かな?」
「大丈夫よ。リオの口元を見て。」
「あっ。あれをやる気ね。」
心配して声をかけてきたセナにオレは答えた。脳筋リオもなかなかやるじゃないか。この技なら不死身のゾンビも堪らないだろう。
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