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第十話 サオリの初ダンジョン

 翌日、オレとサオリはダンジョンに来ていた。


「わたし、魔物なんて、倒せるかな?」


 強気なサオリが珍しく怖気づいてた。初めてのダンジョンで怖気づくのも無理もない話であった。ここはなんとか励まさないと、


「大丈夫。大丈夫。サオリの魔法はメアリー師匠のお墨付きよ。雑魚魔物なんてちょろいもんよ。」


「そ、そうかな。でも、アメリみたいに避けるんでしょ。当てれるかな?」


 もう、めんどくさいな。


「そのためにわたしがいるんでしょ。わたしがフォローするから。大丈夫。」


「アメリ。お願いね。助けてね。」


「オッケー。全力で守るわ。」


 オレはサオリに自信をつけさせるためにスライムを魔法で撃たせることにした。スライムごときに魔法を使うのは魔力の無駄遣いだけど。

「ねえ。サオリ。ここ地下一階の魔物はスライムだけど、まず、サオリが魔法で倒してみない。」


「魔法で?わかった。頑張る。」


 しばらく、歩くとスライムが現れた。


「あっ。スライムよ。サオリ。」


「わ。わかった。ファイアーボール!」


 大きな火の玉がスライムを飲み込んだ。スライムは跡形もなく蒸発した。


「やった。アメリ。やったよ。」


「うん。やったね。グッジョブ。ところで。魔物といえど、一つの生命を奪っちゃったけど、大丈夫?」


「何が?」


「罪悪感とかない?」


「うーん。スライムはかわいいから。ちょっとだけかわいそうだと思うけど、それよりも達成感の方があるわ。」


「よかった。サオリがナイーブな人でなくて。」


「なによ。わたしほどナイーブな人はいないわよ。アメリにいじめられていつも泣いてるんだから(笑)。」


「はい。はい。とんだナイーブですこと。ところで、かわいいスライムだけど、スライムに顔を埋め尽くされると息ができなくて死んじゃうから、気をつけて。」


「え。そうなの。わかった。気を付ける。」


 特に魔法を使わなくても、射程の長いサオリの槍はスライムたちを楽々撃破していった。そして、ボスのスライムロードですら魔法で一撃だった。オレは残りのスライムたちを倒しただけだった。一人でスライムを倒しまくったサオリのレベルは3にまであがっていた。


「すごーい。サオリ。わたしでさえ、スライムロードは一撃で倒せなかったよ。サオリの称号はスライムスレイヤーね。」


「スライムスレイヤーはいいけど、地下二階層の魔物はどんな奴なの?」


「ホーンラビットっていう、ウサギの化け物ね。」


「ウサギさんね。早く倒しましょうよ。」


「やる気満々なのはわかるけど、今日はここまでにしない?」


「えー。なんで?」


「危険だからよ。」


「わたし、今日は一回も攻撃受けてないよ。まだ、行けるんじゃないの?」


 調子に乗ってるサオリは撤退に納得しない。まあ、痛い目に合わないと納得しないか。オレもいるし、まだ大丈夫か。


「じゃあ。もうすこし行ってみるか。でも、危ないと感じたらすぐに撤退よ。わかった?」


「ラジャ。」


 しばらく進むと、ホーンラビットがこの階の壁である草むらに潜んでいるのを発見した。


「ストップ。ホーンラビットが潜んでるわ。四匹いるわね。」


「え?どこに?」


「あそこの通路の壁の中よ。」


「壁ってこの草の壁の事ね。こんなところに隠れられたら、まったくわからないじゃない。」


「そうよ。スライムみたいに簡単にはいかないわよ。やめとく?」


「いや。やる。」


「よし、わかった。じゃあ、わたしが草むらからあぶりだすから、出てきたところを攻撃して。魔法でも槍でもどっちでもいいわよ。」


「はい。」


 オレは石ころを拾うと草むらに投げ込んだ。


 ホーンラビットが4匹飛び出した。飛び出すのみならず、こちらに向かって突進してきた。


「ファイアーボール。」


 サオリがファイアーボールを撃つが当たらない。


「ファイ・・・。」


 サオリの次の魔法よりもホーンラビットの突撃のほうが早かった。サオリはホーンラビットの角の一撃を受けてしまった。その場でうずくまるサオリ。とどめをさそうともう一度突進してきたホーンラビットをオレは薙ぎ払った。最初にオレに向ってきたホーンラビットと合わせて、これで二匹を倒した。オレは呪文を唱えながらサオリの前にかばうようにして立った。残りの二匹は同時にオレに向って突進してきた。


「ファイアーボール。」


 最初のホーンラビットに外すはずもない至近距離からのファイアーボールを剣先からぶっつけると、その勢いのまま後ろのホーンラビットを突き刺した。十八番のファイアー突きである。


「サオリ。大丈夫?」


 オレはサオリを抱き起した。


「うっ。もう、駄目。」


「え?ケガしてないじゃん。」


 ホーンラビットの角はクサビ帷子によって防がれていた。


「え?そうなの?良かった。死ぬかと思った。」


「やっぱり。今日はここまでね。本当にケガしなくて良かったよ。引き返そう。」


「はーい。でも、なんでわたしの魔法は当たらなくてアメリのは当たったの?」


「ホーンラビットは動きが速いから、遠くで飛び跳ねてるのを狙ってもなかなか当たらないわ。こっちに体当たりしようとして、最後に大ジャンプするでしょ。その時が当てるチャンスね。まっすぐこちらに向かって、飛んでくるから、当てるのは簡単よ。」


「そうなんだ。早く教えてよ。」


「いや、こういうのは人に教えてもらうもんじゃないよ。実戦の中で工夫して自分で身に付ける物よ。」


「わかったわ。技は目で見て盗めね。」


 ちょっと違うけど、まあいいか。


「あと、剣先から魔法が飛んだように見えたけど、それもマスターするわ。」


「魔法を飛ばすだけじゃだめよ。間髪入れないで突かないと。これがわたしの必殺技火の玉突きよ。」


「火の玉突きね。よし。盗んだる。」


「使用料。一回百円ね(笑)。」


 地下一階に戻ると、サオリはスライム相手にオレの必殺技の火の玉突きを出そうとしたがうまくできなかった。


 しかたない。コツを教えてやるか。


「サオリ。聞いて。剣先から火の玉が出ているように見えるけど実は手から出してるの。槍を握ったまま、握った手から出すイメージね。」


「そうだったんだ。何回やってもうまくいかないわけね。ありがとう。わかったわ。」


「あと、火の玉を飛ばすんじゃなくて、剣にまとわせれたら火炎剣の完成ね。わたしはできないけど。あっ。サオリはいかずち魔法ができるんでしょ。いかずちを魔物に当てるのは難しいけど、槍を伝わせるのは簡単じゃないの?槍を標準機にして、サンダーを発射よ。」


「アメリって天才。さっそくやってみるわ。」


 次にスライムが現れたときに、サオリは槍から火の玉を発射するのに成功した。槍で狙いをつけているから、正確にスライムに当たった。


「できたわ。」


「うん。発射と同時に突きを出せたら、わたしの必殺技の火の玉突きの完成ね。」


「よし。やってみる。」


 こうして、オレの必殺技はサオリに見事に盗まれてしまった。それどころか、いかずちを発射して突く、サンダー突きまでマスターされてしまった。オレはちょっと複雑な気持ちになった。ちなみにさすがに火炎剣は難しすぎてまだ無理だった。


 こうして、サオリのダンジョン初体験は終わった。オレのできない技(サンダー突き)までマスターして、サオリは得意満面であった。すこし悔しいのと、調子に乗らせないために釘を刺しとくか。


「本当に。スライム相手だと無敵ね。スライムスレイヤーさんは。」


「なによ。動きの速いホーンラビットには通用しないと言いたいんでしょ?

 でもね。わたしのオリジナル必殺技のサンダー突きのサンダーは目にもとまらぬ速さよ。

 槍で狙いを付けて撃てば遠くの敵もいちころよ。」


 そうだった。炎と違って電気は速いんだった。悔しい。


「オリジナルって。わたしの火の玉突きのパクリじゃないの。」


「はい。はい。原案アメリさんね。案を出した人はできないけど。」


「悔しい。ホーンラビットに刺されて泣いていたくせに。生意気。」


「なによ。もう、ホーンラビットになんか二度と負けないわよ。悔しかったら、早くファイアーボール以外の攻撃魔法をマスターすることね。」


「あんたにはわからないでしょうけど、魔法をマスターするのって大変な事なのよ。古代語を発音からイントネーションまで正確に発声できるようにならないといけないんだから。」


「ふーん。大変ね。ご苦労様。」


「きー。悔しい。」


 釘を刺すはずが、ますます調子に乗らせてしまった。


 ダンジョンを出ると、オレ達は冒険者ギルドに向かった。サオリの冒険者登録のためである。メアリーの言ったとおり、冒険者登録が後でも問題なかった。魔石二個とホーンラビット4匹のポイントはサオリの冒険者プレートに入れた。サオリのランクはGランクをすっ飛ばし、いきなりFランクになった。


 オレ達は甘味処でお菓子を買い、酒屋でエール(ビールのような酒)を買うと師匠メアリーの家に向かった。さすがに今日は稽古は休みにしてくれた。メアリーの淹れてくれたお茶を飲みながら、ダンジョンの話をした。そのあと、いつものように夕飯までごちそうになってから帰った。




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生まれて初めて小説という物を人前にさらしています。初心者ですので、生暖かい目で見てやってください。それで、良かったらブックマークをお願いします。あなたのそのひと手間で底辺作家のわたしが救われます。

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