ほんっと、可愛い!
「ねぇ、怜央ー。今日暇ー?」
長い髪を綺麗に巻き、メイクは派手。香水をぷんぷん体にまとわせている女が怜央という男の腕に体をくっ付けて言った。
「んー?いや、今から彼女の家行くつもり。」
しかし、怜央はそんな女に見向きもせず携帯をいじりながらそう答えた。
「怜央の彼女って、この前一緒にいた年上の人?」
すると、今度はふわふわパーマのかかったボブカットの女が怜央の空いている方の腕をとり自分も反対側の女と同じように体をくっ付けた。
「あー、それは二人前の彼女。」
「え、あれから彼女二人も変わったの?」
すると今度は怜央の後ろにいたショートカットでくりくりした大きな瞳が可愛らしい女が洸の首に腕を回し後ろから抱きしめるようにして問いかけた。
「うん。」
三人の女に密着されても怜央は全く動じず、まだ携帯をいじっている。
「相変わらずだねー、怜央。今の彼女ともすぐ別れちゃうんじゃない?」
ロングの女が笑いながらからかうように、そう言った。
「さあねー。」
興味なさそうに怜央は言った。
「うわ、否定しないんだ。ひっどーい。彼女さんかわいそーう。」
ボブカットの女も笑いながら言った。
「ねぇねぇ、じゃあ次私彼女にして!」
ショートカットの女が後ろから怜央の顔を覗き込みながら、言った。
「あ、抜け駆けずるっ!」
「私も立候補するー!」
はいはーい!と元気よく手を挙げるボブカットの女。
「どーだろ。俺が彼女と別れんのは、いつも俺がほかに好きな子できたときだからなー。だから、今の彼女と別れても次に付き合いたい子は決まってるだろうからねー。」
やっと携帯を閉じ、笑顔で怜央は言い放った。
「「「えー!」」」
三人は怜央の言葉に口をとがらせた。
「まあ、誰を好きになるかはまだわかんないけど。」
三人の顔を意味ありげな笑顔で見つめた。
「じゃ、じゃあさ!怜央の好みのタイプってどんな子?」
端正な顔の怜央に見つめられ顔を赤くした。
「うーん。あんま好みのタイプとかは無いかも。」
首をかしげ、そう言った。
「確かに怜央の彼女って見た目も性格もばらばらだよね。」
うんうん、と頷きながらロングの女は納得した。
「えー、じゃあどうやったら怜央に好かれるかわかんないじゃーん!」
「なんでもいいからさっ!こんな所に魅力感じるー、とかないの?」
「魅力・・・ねぇ。・・・フッ。」
考えこんだあと、怜央は急に笑い出した。
「・・・怜央?」
怪訝そうな顔をする女。
「ごめん。なんか急に彼女に会いたくなっちゃった。だからもう行くわ。」
気持ちの良いくらいさわやかな笑顔を浮かべ怜央は立ち上がり去って行ってしまった。
「・・・は?ちょっと、怜央!?」
「なにそれー!?」
「怜央ー!!」
置いて行かれた女たちは、しばらく呆然としていたがハッと我に返り怜央の背中に向かって声を張り上げるが怜央は一度も振り返らなかった。
女たちを置いて行った怜央はスキップでもしそうなほどご機嫌な様子で彼女の家に向かっていた。
「あー、香水くさ。今日もハル怒りそうだなー。」
自分の体や服から香る女たちの香水の香りに顔を顰めるものの、彼女の反応を想像し怜央は口角を上げた。
怜央は歩きながら携帯を取り出し彼女に電話をかけた。
『もしもしー?ハルー?もうすぐ家着くからー。』
そう用件だけを伝えさっさと通話を切る。切る直前に聞こえた彼女の怒ったような声にまた怜央は笑った。
「あー・・・早く会いてぇ。」
ポケットに手を入れ怜央は歩くスピードをアップさせた。