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4月 入学式2

 ―――春だ。


 四月、入学式の朝。

 大量にお菓子が詰め込まれた紙袋を右手に持ち、生徒会室を目指し、春の暖かい日差しが差し込む廊下を倒裏彗銀は歩いていた。

 「…お」

 窓から下を見れば新しい制服に身を包んだ新入生たちが見える。

 去年の今頃は、自分も緊張してあそこにいたんだと思うとなんだか笑える。

 もう一年近く着て着慣れてしまった制服を見て、少し去年のことを思い返す。

 「もう高校2年生かぁ」

 「そうよー、今日からもっと働いてもらわないとね」

 「え!?…あ、麻子さん。おはようございます」

 「おはよう、彗銀君」

 窓の外を見て日差しに目を細める彼女は、ここ霧ノ森高校の生徒会長姫川麻子。

 青のセーラーに三年生の学年色の青いリボン。軽くウェーブのかかった肩より少し長く茶色い髪に、少しつり目気味だが大きく開かれた瞳、スッと通った鼻筋。誰が見ても「美人」と評するような容姿を持ち、その上、全国でもトップクラスの偏差値をもつこの高校で常に主席の座に君臨する。

 いってしまえば、霧校の女王様のような存在だ。

 そんな彼女と、大量のお菓子を持つこの僕が知り合いなのかというと

 「今日も大量ね。さすがお菓子係」

 「皆さんのためですから」

 ―――そう、お菓子係。

 霧校の生徒会にはお菓子係があるのだ。

 去年、生徒会役員にスカウトされたものの、特にやりたい役職のない僕のために、実家が菓子店だからと去年の会長たちがつくってくれた役職だ。

 人に言うと笑われることもあるけど、僕は結構気に入っている。

 まあ勿論お菓子を持ってくるだけが仕事じゃないし、他の仕事の手伝いもしている。

 「なんだか、彗銀君も頼もしくなったわね」

 「えっ!ど、どうしたんですか急に」

 「んー?別に何もないわよ、思ったことを言っただけ」

 いきなり誉められたので驚いて会長の顔を見ると、会長はいたずらっぽく笑った。

 「でも、彗銀君自身そう感じてるところもあるんじゃないの?」

 「えっ…」

 頼もしくなった…その言葉を会長は僕のどこをみて口にしたのだろうか。

 去年と変わったことといえば、少し背が伸びて、生徒会の仕事を前より楽しめるようにことくらい。

 でも、けっして背が高いわけでも仕事が早く正確なわけではない。子供っぽいと言われる容姿も変わらない。

 …でも

 「…分からないですけど、会長が言ってくださるならそう思えます」

 「…ふふ。でも、弟系な可愛い彗銀君は消えてほしくないかな~」

 「はっ!?」

 冗談めかしてそういう会長。

 今、誉めたのも冗談だったのか?

 「…あの、」

 「にしても早く来過ぎたかしら。召集かけた時間より30分もはやいけれど」

 僕の言葉を遮り喋り始める会長。

 「………」

 この人は…。

 でも、なんとなくだけど、この人になら振り回されてもいいと思っている自分もいる。


 …不思議な人。


 もう数メートルとせまった生徒会室の扉に手を伸ばしながら僕は答える。

 「大丈夫ですよ。今日は入学式ですから、きっと皆さん早く来られますよ」

 「…ふふ。そうね」

 少し自信ありげに言ったせいか、会長は不思議そうな顔をしてから軽く微笑んだ。

 「まあ、それまで彗銀君のいれてくれる紅茶でも飲んで待ってましょうかね」

 そういうと、僕は生徒会室の扉を開いた。

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