理解できない日常7
「いっぱい買っちゃった」
幸せそうに隣を歩く彼は、両手に紙袋を提げていた。けっこうな量だったため、会計のときお金が足りないのではないかと焦ったが、しっかりと財布にお札が入っていたのをなんとなく視界に入れて、ほっと胸を撫で下ろした。
次の目的地はどこか訊ねようとしたとき、彼越しに見覚えのある店を見つけた。
「あ…」
「ん?」
立ち止った私に首を傾げつつ、奏斗が私の見ている方を振り返った。
「ティノティナがどうかしたのか?」
「あ、いや…」
この間偶然会った怜都くんに訊かれたことが、今になっていやに気になった。
「奏斗って、こういう服着るの?」
「あー。あんまりフリフリは着ないかなぁ」
「そうなんだ」
「うん。でも、なんで?」
「え…」
彼の質問に、思わず言葉が詰まった。
「いつもどうでもよさそうなのに。あ、ちょっと興味でてきた?」
「いや、それはないから」
嬉しそうにニヤニヤしだす彼に、反射的に返してしまったが、私にこれといった理由などあるはずもなく、今まで私が彼にとってきた態度からすれば、今日突然彼の洋服選びに興味を持ち出したと思われても仕方がない。だからといって、怜都くんに訊かれたから、だなんて答えたら、奏斗が怜都くんをこの道に引きずり込みかねない。
どうしたものかと悩んでいたときだった。
「あ、幸さん」
後ろから怜都くんの声がして、私は驚いて振り返った。
「え…」
そして、彼の姿をみて驚愕した。