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桜の考えている事とか、オイラの気持ちとか
今は分からない。
そもそも正式に告白されたかが微妙な所だ。
でも桜に対する気持ちにちゃんと返事が出来るように、考えるだけはしておかないといけない。
今は出来る事をしないと
「……香り」
部屋の机に座り、未だ終らない作文を見つめる
さっき作文が完成した所だ。明日先生に提出しに行こう。
「おふろ、空いているよぉ〜」
「わぁっ」
姉ちゃんは反省というものを知らない。
いつも何度止めるよう言っても後ろから、前ふりもなく、耳元で話しかけてくるのだった。
「もう、いい加減にしてよ!びっくりするじゃないか」
振りほどくと、後ろによろめいて姉ちゃんは危うく転びそうになる。
なんだ、そのまま転んで痛い目でも見れば良かったのに。
「はいはい。で?なに?また作文?」
「今完成した所」
あ、そうだ、姉ちゃんにも聞いてみよう
「姉ちゃんはオイラ、どんな香りがする?」
「ガキ臭い」
姉ちゃんは即答して、馬鹿にしたように笑う。
ほら、やっぱり。
人によって違う
寿の作文(一部)
人の香り
佐々木 寿
僕の香りは汗臭いと思います。夏だからだと思います。
でも友達は、僕の事を土や、太陽とか、別の香りで例えてくれました。
「香りは?」
と聞かれたら、体臭だけでは無く、雰囲気の事を表した様な“香り”が返って来ました。
今回この課題をやってみて、分かった事があります。
それは、人によって、僕の見方が違うということです。
好意を寄せてもらっていたり、僕を通して青春時代を思い出している人もいました。
(中略)
きっと、この先僕の香りが嫌いだと言う人も出てくるかもしれません。
けれども僕は、それもその人の感じ方なんだと、この課題のお陰で受け入れる事が出来そうです。
おわり




