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連れていかれた場所は会社から近い、個人経営の居酒屋だった。澪曰く、朝井さんの知り合いのお店らしく今日は貸し切りだそうだ。


「な、んかすごいお店だね…」


思わずそう呟いてしまうような、そんなすごいお店だった。


「なんか朝井さんらしいといえば朝井さんらしい雰囲気のあるお店だよね」

「うん」


店先でじっくりと眺めていると、お店のドアがゆっくりと開いた。


「…あれ? 滋の会社の人?」

「あ、そうです。少し早く着いてしまって…」

「あー、そんなの全然いいよ。もう準備できてるし、中入りなよ」

「では、お言葉に甘えておじゃまします」

「どうぞ、どうぞ」


眼前のにこやか好青年は店員とは思えない態度で接するからか、朝井さんの分身のようで、うまく顔を作れないでいた私を横目に澪はヒーローよろしく、終始愛想のいい態度で接してくれ、心強かった。


私たちが一番乗り、というわけではなく、秘書課の綺麗なお姉さま方や知らない営業課の人が何人か座っていたが、私は交友範囲が広いわけでもないため、知り合いと呼べる人はいなかった。


「あれ? 工藤じゃん」


そんな中、奥にいた男の人が声をかけてきた。


「斎藤君も呼ばれたの? なんでもありになってるなー」

「工藤こそ、呼ばれてたの?」

「あたしは今、朝井さんの部下だもん。営業の斎藤君とは土俵が違うんですー」

「あ、そうなんだ? 異動になったとは聞いてたけど。…えっと、もしかして、里中さん?」

「は、はい。里中です」

「やっぱりー? 覚えてない? 一応、俺同期なんだけど」


頬をぽりぽりと掻きながら、でもそんな仕草が絵になる好青年に困った顔をむけると、澪が笑いながら助け船を出してくれた。


「覚えてるわけないって。同期って言っても何百人っているんだから、同じ課でもなければ知らないって。それにこの子、ほぼ直帰で飲み会とかでないし。営業のエース君は人を覚えるのが長けているみたいだけど」

「どうも。イヤミをありがとう」


そう微笑んだ顔も爽やかで、きっとどんな嫌みを言われたってその爽やかな笑みでかわしてしまうのだろうな、とぼんやり考えていた。


「サト、この無駄に爽やかな男が営業部エース、斎藤 純一君。ちなみに、営業課の前は企画課にいて、私と少し仕事してたの」

「そうなんだ。営業の斎藤君って噂で聞いたことある。お目にかかれて光栄です」


大袈裟に畏まって言うと、斎藤君は爽やかな笑みに目尻にしわを作って優しさも加わった。


「どんな噂か気になるところだけど、とりあえず座りなよ」

「そうだった。斎藤君の横ってうるさそうでいやだけど仕方ないね。サト、いい?」

「もちろん。横、失礼します」


そう言って、座敷に腰をおろした。





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