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短めです。

そうだ。もう話は始まっているんだった。


「そのことなんだけど…。私引越し、したの」


苦笑する以外にできる表情も知らず、気まずさと何か話さなければという圧迫感だけでなんとか声を絞り出す。


「え? そうなの? 知らなかった。最近?」

「さ、三ヶ月前に」


澪は何かを感じ取ったのか、少し考えるように間を置いた。


「その新居に招待してくれんの?」


考える仕草を解くと優しい雰囲気を纏い言い放った。

澪は、きっと何か感じるところがあったのだろう。そう思うと胸が張り裂けてしまいそうな痛みが身体を襲ったが、そんな自分勝手な痛みを表に出すのも申し訳なく、ただ頷いた。


「もしかして、新居に侵入する友人第一号?」


戯けた仕草が、心に沁みた。


「…うん。ここからだと電車に乗るんだけど、いい? まだ終電には余裕があるし」

「全然いいよー。楽しみ」


優しい笑顔に励まされつつ、二人で駅に向かった。



最寄駅から歩いてすぐ住宅街が広がる。その中でもわりと新しく建ち、洋風の外観がこの界隈から少し突出している。これが、私たちの住む自宅だった。


「すっごー。高級マンションだ」


私が初めて連れて来られた時も同じようなリアクションを心の中で叫んだので、思わず苦笑してしまった。


「…こっち」


そう言って、自分たちの住む部屋へ案内する。

きっと、これから話す御伽噺に澪は激怒するだろうな、と頭の端っこで思いながら。



玄関からすでに興奮状態だった澪をなんとか宥め、とりあえずリビングに座らせる。そうすると、来た意味を思い出したのか、大人しくなった。


「何か飲む? って言っても、コーヒーか紅茶くらいしかないんだけど」

「じゃあ、コーヒーで」

「わかりました。荷物、空いてるところに置いてくれていいから」


息の詰まるような空気、とまではいかないが、いつもと違う空気にお互い戸惑いながら、落ち着きも取り戻せぬまま向かい合った。


「…コーヒーありがとう」

「うん。…急に、ごめんね」

「それは別にいいけど…。さっきのどういうこと?」


遠回りが面倒だったのか、彼女はコーヒーを一口含むと、意を決したように問いかけた。


「…察しの通り、新見さんと暮らしてるの」


震える声を気にせず、視線を机の上に置いたコーヒーへ落としながら力なく言った。


「サト、ちゃんと話して」


咎めるような声に、息が詰まりそうで誤魔化すようにコーヒーを流し込んだ。


「三ヶ月前に新見さんに提案されたの…」


あの、三ヶ月前の夜に―――


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