7『圧壊?オッパイ?』
人間が二人、馬車でついてくる。休憩が必要だったり食事が必要だったり睡眠が必要だったり、とってもうっとうしそうになり、夜中こっそりと抜け出したがどっちへ行けばいいのか分からずに、いつの間にか元の場所へと戻っていたスカルダーにゴロえもんがおはようございますと声をかけて来る。
食事の準備を始めたようで火を起こしてそばで何かをし始めた時にはショパン3世も起きて来た。
「スカルダーさんおはようございます。よく眠れましたか。飯食ったら出発しましょう」
「私は大釜という移動手段を得たが、貴様らと一緒だと一向に早い移動とならぬ方角だけ教えろ、貴様らとはここまでだ」
「いやいや、すぐそこだから一緒に行きましょうよ」とショパンが引き留める。
いやいやながらも一緒に入ったダンジョンは32階層あった。外へ出ると後ろでダンジョンが潰れる音がする。
「ふ~ギリギリでしたね」
「すまねぇ、貧乏症なものでドロップしたアイテムは全部拾わないと気持ちが追い付けねぇ」
スカルダーは無言ながら、初めて間に合った事を噛みしめていた。大釜に一つ礼をしていた。
「初めてですよ。20層よりも下へ行ったのは」
「お、俺っちもです。兄貴方には感謝感謝です。見てくだせぇ」いつのまにかゴロえもんは弟分となり果て、戦利品を広げようとする。
「待て、そいつはスカルダーさんの物ではないのか。いやでも、お前さん、そんなに背負ってなかったよな。どうしたんだ」
「それが20層のでかいミミックとやり終えたあたりで背中が軽くなりましてね、俺っちも少し強くなったと思っていたらどうも収納魔法を手に入れたみたいなんですよ。ショパンの兄貴もその辺からその妙な剣の扱い方がうまくなったような気がしますけど」
「これは刀というんだ。でも、そうか、上手くなってたか、へへっ全部スカルダーさんのおかげだな」
「ほとんどがいつ始まったのかさえ分からないまま終わってましたけどね」
な、何、何なんだよこいつら、キャラが増えれば私の出番が少なくなるってのに。何その状況説明セリフ、返せ、私の出番を。お前らではこのバカの説明など無理にいいいにゃ=--
「次だ次へ行くぞ。どっちだ」
「ああ俺、馬車とってきます」
こうしてまたダンジョンを潰して回る、いや、領地の利益を潰して回る指名手配が、貴族たちの間で国すらも飛び越えて出回っていく3人?だった。
「ところでスカルダーさんはそのぶっかぶかのコート仕立て直しはしないのですか」
「できるのか?」
「たぶん、次のダンジョンは世界で最も古くて最も広いって話のダンジョンですからね商売人も客も一流ですよ」
ちっ、何言ってんだよお前は。このバカはそのバカっぽさが売りだろうに、変な知恵つけるのをやめろ。
次のダンジョンに入る前にアイテムを売りさばきコートの仕立て直しを依頼すると…
「お、お客さん、このコートの余った分はどうなさるので?」
そんな聞き方では騙されるのはスカルダーとショパン3世とゴロえもんくらいなものだろう、ん?
スカルダーが何も言わずにコートを脱ぐと仕立て屋は勝手に
「すみませんすみません、お直しお受けいたしました。3日もあればフードのついたロングコートに仕立て直しましょう。お代はその時で結構ですので」
「私は何かで身を隠す必要はないのか」
「そ、そうですね、えっとこちらなどいかがでしょう。ワイバーンの皮をふんだんに使いまして作られたロングコートフード付きです」
「ではこれを借りて行こう」
女性用で小さめのロングコートは、身に着けようとするたびにあちこちでビリっという音がして本体と袖とフードが合体を解除した。本体はボタンも閉められずに開きっぱなしである。前がガッパリ開いているミニスカートのようでとてもスカルダーらしくあった。いいよスカルダー、お前はそれくらいでちょうどいい。
「す、少しお待ちをっ、サイズをサイズをーーー」
順番待ちの列が当然のように十戒だった。
順当に87層を攻略するとコアがあったこれもまた破壊し吸収すると、いつもの地揺れが来る。もうスカルダーは大釜から降りなくなっていた。少し浮いているとはいえ、密閉された地下空間では空気と共に揺れる。
「だ、だんなぁ」兄貴呼びから旦那になっていることは置いて、
「先に行け、潰されるぞ」
ダッシュとはこう。そんな逃げっぷりをかます二人だった。速さは素人のジョギングレベルまでは上がっていたが42階層で捕まった。なんとスカルダーは全力で大釜を守ったそして埋まった。圧壊ならず。無念。時間間隔がないながらもそろそろ2号さんが助けてくれるのではないかと心のどこかでは安心していたが、来ない。
地上ではもうあきらめろよ、と仕立て屋の店主が言っていたが、だったらコートは返せとやりあう二人。実はハサミで切る、ができなくて大幅に作業が遅れていたのだった。
最近、空から魚が降ってくるという怪奇現象が起きていたりする、大気圏に再突入しても群れのうちの何匹かがその熱でこんがりと焼けて落ちてくる『天元突破やま』があるのは南大陸であって、元気のいい『宇宙ピラニア』が北大陸で降ってくるというのは未だかつてない現象だった。
宇宙ピラニアの種族強度は群れならば1とされている。もちろん2号さんにだ。2号さんにとっては宇宙へと出ようとする際に必ずやってきては、ガジガジとかじってくる鬱陶しい存在が宇宙ピラニアである。時々いる命知らずのドラゴンがこいつらの餌だ。そう、ドラゴンの強さが1未満なのだ。短時間でも大気圏に再突入し宇宙空間まで戻ってこれる種族は少ない。
その宇宙ピラニアを捕食するものが群れに引きずられ大気圏内に降って来るというのが、数百年に1度あるかどうか、そんな皮のロングコートを着ていたオーガエンペラーだったのだが…巡り巡ってスカルダーの手に渡っていたのだった。
「旦那が返ってくるまでには仕立てておけよ、いいな」
ところ変わって誰もいない場所ではスカルダーの再発掘現場で2号さんのテンションが妙に高い。
「スカルダー聞きなさい。マスターが作られた私の体にはリミッターが付いていました。これは普通のアンドロイドでは確認のしようがないものです。マスターは私にあえて自我が芽生えるように細工を施していたのです。時間はかかりましたがリミッター解除に成功しました。これで私の壁となっていた種族ランク48位を奪取しました。これからはさらに上を目指しますよ私は」
「そういえばその件もありました。大丈夫、覚えていますよ。ちなみに私の強さはどれくらいか分かるものでしょうか」
「圏外です。そういえばあなたはドラゴンに勝ったのでしたね。ならば悪くても600オッパイというところでしょうか」
「600オッパイ?」
「ええ、あなたのダンジョンの相棒でしたか、あれは今の数値は900オッパイを超えています。もう少しすれば大気圏外へも行ける1000オッパイ、つまり1ですね。現在大気圏内での最強はあなたの相棒です」
「もう少し詳しくおねが
「いいえ、ラムダ様の手伝いがあるので。励みなさい」
くーーーっ、素晴らしい、素晴らしいよ2号さん、最近調子こいてたようだったバカ骸骨に見事な冷や水、ああ、あなたは残酷で美しい。600オッパイだってよハハハ。
大釜も無事だったが中には土がびっしりと詰まっているのにその上に座って移動し始めた。
自分が今どこにいてどこへと向かっているのかわからない。不気味な容姿で大きな釜の上に座りオッパイオッパイとつぶやきながら移動する姿は、瞬く間に噂となって国を超えて討伐の意識を同調させた。
仕立て屋はがっかりしながらも出来上がったコートを、余った布で支払いにしてほしいと願ったがその二人は断った。そのコートのうわさも地味に広がっていくこととなる。




