3『立て、立つんだじょ』
なんとか壁際まで這いずって来たが大鎌を忘れていた。再び這いずって戻り大鎌を右手で掴んでは先へと放る。這いずる。放る、を繰り返し再び壁際までたどり着くと、壁にもたれながらでも立ち上がるのが難しいことに気づく。
体を反転させ壁に背中を預け両足を放り出すようにして座り込んだところでようやく一息つい…息切れ一つない…のだが、今日という日は、いやもしかすると2~3日たったかもしれない。とにかく食べない、眠らないという体は好都合だったのだが、ただただ休みたい。その姿勢からは哀愁さえ見え隠れする。
十分休んでからは壁と骨右半身を使ってずりずりと音を立てて立ち上がり始めるが、大鎌を持つのを忘れていたためまた座り込む。右手で杖(大鎌)を上手く使えるようになる頃には、壁にもたれてではあるが立ち上がっていた。
「ふっふっふ、見たか、どうだ」
「見たが、どうだと問われても何があったのかさえ分からん」
「えっ」
そこには新たな神を自称する凛道と筆頭従者であろうラムダと2号さんがいた。
急に振り向いたスカルダーは転んだ。さもありなん。
「こ、これは違いますぞマイゴッド」
「慌てる必要はないぞ。消すとか言ったのは、【我】のバカだ、【俺】じゃない」
この凛道なる自称神は、単体であるが人格は3つあった。一人称が【俺】の凛道と【我】の凛道そしてもう一つは…まぁ出番がないから2重人格でいいや。
神の言葉を真に受けてしまったのは仕方がないが、意味は分かっていない寝転んだままのスカルダーだった。
そこにラムダがいう。
「私もダンジョンを作ることにしました。あなたのダンジョンは残してもいいですが、北半球のダンジョンは全て潰しなさい。私のダンジョンは横に広げますから」
「ダンジョンはそれほどの数があるのでしょうか、増えたのですね。かしこまりました、さすれば、私も強さを取り戻すでしょう」
新しく作るダンジョンもリッチロードのダンジョンも今は2号がダンジョンマスターなのだが、2号がリッチロードのダンジョンマスターで、サブマスターをスカルダーにしてコアとの契約をなしているのに対して、新しいダンジョンのコアはラムダが主でサブが2号の契約となっている。なんせ凛道とラムダは魔素や魔力が逃げるか消えるかしてしまうので、2号なりに学習プログラムを使い始めた結果である。
これによって、2号はスカルダーとラムダの面倒を見ることになり一番忙しいポジションとなっていた。
「ああ、ここから出たら、一度森の奥地に行ってみろ。魔族とやらが街を作っていた。魔王とやらが魔族の領域を広げようとしていたのは構わないが、「私が世界だ」とかほざきやがった瞬間、ラムダがいきなり物理的にぺちゃんこにしてしまってな、四天王とやらたちが全面降伏とかして来たから、新たな魔王が決まるまではもめるかもしれん。ここから一番近いのはあいつらのところだからな、挨拶くらいはしてやれ。まったくぅ、第一話は呼べと言ったはずだぞ、【俺】は期待してるからな。立つんだぁとか叫びたいんだよね、じゃぁな」
また一人となったスカルダーは、【俺】と【我】に戸惑い、ただの従者だと思っていたラムダが強さを兼ね備えた存在で、自分は何もできなかった相手でもある2号さんが雑用係のようだった事に混乱し、また寝転がっていることには気づきもせずに思考の波にどっぷりと浸かり始めていた。
一階上の百層にいるはずの相棒――スカルドラゴンの様子を確かめるため、スカルダーは這うように階段を上った。
それだけの距離が、今は途方もなく遠く感じられた。
ようやく視界が開けたその先に、彼は立ち尽くした。
そこにいたのは、かつての黒竜の面影を残しながらも、すでに別の存在だった。
鱗はマットブラック。
しかしそれは生物の質感ではなく、どこか艶を抑えた装甲のようで、関節部には地球文化を思わせる無数の意匠が刻まれている。
一匹というより、一機。ドラゴンというより、兵器。
だが―― 美しかった。
力強く、静かで、神々しく、そしてどこか寂しげで。
「……お前も、変わったんだな」
声は震えていなかった。だが、胸の奥で何かが軋む音がした。かつて共に空を裂いた黒竜は、今、完全に目を閉じて眠っている。いや――待機している、と言った方が正しかった。
「……私だけ、置いていかれたみたいだな」
返事はない。
だが、その巨体の内部から、微かに機械的な鼓動音が伝わってくる。スカルダーはそれを聞いて、なぜか少しだけ救われた気がした。
うれしかった。
理由は分からない。
だが確かに、胸の奥がわずかに熱を持った。
またしても――数千年前の記憶が、まざまざと蘇る。
王都襲来。
燃え落ちる塔。
逃げ惑う人々。
空を裂く咆哮。
そして、黒竜。
あの日、スカルドラゴンはまだ“機械”ではなかった。
幼体ながらもただの、誇り高きドラゴンだった。
剣も魔法も意味を持たず、
人も竜も、ただ全力でぶつかり合い、
最後は――引き分け。
10年だっただろうか20年だっただろうか再び相見え互いに倒れ、互いに動けなくなり、
互いに「まだ生きている」ことだけを確認して、
そのまま世界から姿を消した。
死亡エンド。
そう呼ぶしかない結末だった。
「……はは」
スカルダーは、喉を鳴らすように笑った。
「まさか互いに、こんな形で再会するとはな」
目の前の存在は、あの黒竜ではない。骨でもない。
だが、あの戦いの続きを背負った姿だった。
「生きてたんだな……お前。てっきりマイゴッドが落ちてきたときに死んでしまったかと」
近づこうとして、足が動かない。だが、それでも視線だけは逸らさなかった。美しく、強く、神々しく、――そして――どこか孤独なその姿を。
「……私はさ」
声は小さかった。
「まだ、這ってる」
返事はない。
だが、その巨体の奥で、微かな駆動音が、確かに応えている気がした。
スカルダーはその音を聞いて、
数千年ぶりに、心から“うれしい”と思った。最後に勝負したのは何年位前だったろう。
勝ってもいない。
負けてもいない。
ただ、生き残った。
我らの戦いはいつもそんな感じだった。それだけで十分だと、初めて思えた。
スカルドラゴンいや、メカドラゴンは反応した。スカルダーの声でシステムが起動する
"キュイン ヂュッ”
「ハッ?」
メカドラゴン、相棒の口から一筋の光条線が飛び出す。
「そ、それってもしかして、私の『稲妻みたいなぁ』の最終形態ではないのか?」
「がっがっがっ」
「がっがっがっではないだろう、それを教えてくれ…ください」
メカドラゴンも体の動かし方に難儀しているようで、それでも喜んでくれているのが伝わる。
お互いに見た目が変わっても、そこにいるのは 紛う事無く【相棒】だった。私は孤独ではなかった。
それから『熱光線』を覚え、ついでに引き寄せる力、重くする力、軽くする力。これらは同じ原理の魔法で体がふわふわするのは楽しかった。名づけは何とすればいいのかわからないし、あまり使わないだろうと思い相棒の言うところの『ぐあっ』にした。
「おおっこれだ。『ぐあっ』で左半身をいい感じに軽くして魔力で包むようにすれば、ほら見ろ」
すてん、まさにそんな音が聞こえたような、転び方の見本のような転び方をメカドラゴンに見せつけた。
「ち、ちがうぞ。あと少しで掴めそうだ。『ぐあっ』は使える魔導だったんだ」
杖を使い軽やかに左半身を引きずり動くスカルダーが3倍のいや2倍…でもない1、5倍ぐらいの速さで動けるようになった。
「いや、相棒、お前の階は高くて広いな…はぁ、登るの面倒だなぁ」
実はスカルダーは勘違いしていた。ダンジョンマスターではなくなった自分は以前のように好きな時に好きな階層へとコアを使って移動する事ができなくなった。そう考えての自力移動だが、サブマスター権限でもできるのだが2号は命令されていないことはできないししないアンドロイドそのものだったから、スカルダーは試しもせずに自力移動を選んでいた。やっと、jiwaへと進める事ができる。




