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ただ、そこにある光

少しずつ、

増えていく。それは、

嵐の後の静かな朝のように、

誰にも気づかれぬまま、

始まる。一人の胸の奥で、

揺れを見つめる瞳が生まれる。その瞳が、

隣の誰かに、

かすかな光を投げかける。すると、

もう一人の胸に、

小さな火が灯る。火は、

叫ばない。

輝かない。

ただ、

静かに、

温もりを分ける。その温もりが、

また別の誰かの

凍えた手に届く。そうして、

梁が一本、

渡される。梁は、

目に見えない。

派手ではない。

ただ、

揺れの中で、

誰かが倒れぬよう、

そっと支える。一本の梁が、

二本になり、

三本になり、

やがて、

無数の梁が、

水平に、

広がっていく。それは、

英雄の物語ではない。

奇跡の物語でもない。ただ、

揺れる地盤の上で、

誰かが、

もう一人を、

見捨てなかった、

という、

小さな、

しかし確かな、

選択の積み重ね。少しずつ、

増えていく。涙は流れない。

歓声は上がらない。

ただ、

夜の闇の中で、

誰かの胸が、

少しだけ軽くなる。その軽さが、

また誰かを、

少しだけ強くする。そうして、

文明は、

静かに、

変わっていく。少しずつ、

増えていく人たちが、

揺れを抱えたまま、

それでも、

手を繋ぐ。その手が、

未来を、

開く。少しずつ、

増えていく。それで、

いい。それが、

私たちの、

もっとも美しい、

光だから。

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