第3幕 第14話 黒
朝の広間。かぐらが静かに手を上げる。
「占い師を名乗ります。黒が出ました。――神谷 勝」
空気が張る。共有の二票がすぐにかぐら側に寄る。
勝は短く笑い、肩をすくめた。
「共有と占いのラインが同じ家に寄りすぎてる。古谷とかぐら、互いに白を取り合う構図に見える」
「霊媒は伏せ」
古谷が言う。「昨日までの処刑が人か狼かは、まだ出さぬ。……本殿裏の説明を、先に済ませよ」
俺は置き提灯の図を示す。障子下辺だけ白/犬は吠えない/停電夜に搬入。
長谷川が静かに補強する。
「詰所の鍵は朝に回せる。昨夜は朝一番に内部点検をした。油の染みが畳の端にある」
勝は目を細める。
「油染みなら、誰でも付けられる」
「誰でも付けられる痕跡で**“白いのに犬は吠えない夜”を作り続けた**。
――詰所に“いないのにいたように見せる”。二十時の灯りの食い違い、その決着です」
俺は言い切った。
多数決。
共有票+占いの黒+観測が積み上がり、神谷 勝の札が並ぶ。
同数にはならない。
鈴が一度鳴り、昼が終わる。
夜。
拍子木×2 → 鈴×1。停電は落ちない。
本殿裏の闇がふっと濃くなる。
扉の鍵の紙は落ちない。
遠くで、犬が一度だけ吠え、すぐ黙る。
提灯の匂いは――弱い。
朝。点呼。「――古谷 清」
返事はない。
共有の片割れが消えた。




