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名前の消える村 — 昼は多数決、夜は人狼 —  作者: マルコ


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第2幕 第10話 窓辺の観測

翌朝の点呼――不在はなし。

 初めて朝が埋まった。広間の空気が、わずかに緩む。

 俺は外側観測の記録を出す。


「詰所は二十時台に一瞬白。本殿裏は闇が濃くなる瞬間がある。停電は来ていない。

 油の匂いは昨夜は弱い。……提灯の口を絞っていない可能性」


 長谷川が頷く。


「停電がない夜のほうが犬が吠えない。灯りの質が違うのかもしれん」


 かぐらが短く言う。


「霊媒は伏せ。……占いは?」


 沈黙。

 黒は、まだ出ない。

ならば、と田島が進行を戻す。


「今日も多数決。同票は村長。投票内訳は出しません。

 時刻×場所×他者名、もう一度、短く」


 紙が巡る。

 俺は詰所の障子が白く走った時刻に外から見た人物の影を書き足す。肩幅の広い影。――勝に似ていた。

 だが**“似ていた”は決め手にならない**。

 昼の議論は筋に寄る。勝は相変わらず外来者の喋り量を刺しに来る。俺は具体で返す。

 同数は――作らない。今日は動かす。

 紙が集まり、結果が置かれる。


「――神谷 勝」


 初めて、票が傾いた。

 田島は最終決定を使う必要がない。勝は短く笑い、肩をすくめる。


「明日、名前がひとつ欠けた朝に、後悔しない話をしような」


 夜。

 拍子木、鈴。

 灯りが落ちる。十呼吸。――来た。

 闇の中で、詰所の障子は白くならない。

 かわりに、神社の小道の入口が、一度だけ白く、すぐ黒に戻る。

 足音。二つ。交差して、一つ。

 油の匂いが強い。

 窓の下の坂道を、肩幅の広い影が走り抜ける。詰所の前で止まらず、通り過ぎた。

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