悪夢の始まり
「えへへ。授業分かんないや」
私は安。西黒安。勉強は嫌〜!!やっぱ皆そうだよね?
私の授業な基本、友達の凛歌とのお喋りで終わる。ほら。今回もそう。たまにお喋りの度が行き過ぎて教員に怒られちゃうけどね。
放課後になると友人の高橋がこちらに来た。
「おい安〜。凛歌〜。今日肝試しに行くぞ〜」
「え〜怖いのはヤダ〜」
「怖くねーだろ。何で女子ってこうビビりなんだろうな。」
高橋がからかうように言う。
「やめなよ高橋。」
やけに真剣に言うのは猫田だった。この中で一番頭がいい人だった。
「だってそーだろー?猫田もそう思わないか?」
猫田は黙って何も言わなかった。
「そうやってビビりってからかって。分かった。私も行く。」
からかわれたことでムキになったのか凛歌が立ち上がって言う。
「向こうにある学校だ。少女の霊が出るんだとよ!!」
幽霊を表すためか、両手を顔の前でぶらぶらさせて言う。
「危険と判断したらすぐに帰ろうね。」
猫田がやけに真剣に言う。
※ ※ ※
その学校に着くと使われていないとは思えないほどきれいだった。
「うわなんだよユーレーとか出なさそう。」
文句を言う高橋。すると、奥の方から物音が聞こえてくる。
「ヒャッ何?」
凛歌が怯えだす。
「何かあるかもしれないぜ?見に行こう!!」
高橋が走っていく。
「ちょおい!!無鉄砲かよ!!チェ。行っちゃった。」
と、その次の瞬間。ガコッと言う音とともに白い物が3人の目の前に現れた。いかにも絵本に出てきそうなまさしく「おばけ」という方が良いほどだ。しかし、それでもリアルにに対面したら怖いのも無理はない。
「うわっ」
という声とともに猫田が逃げる。凛歌もつられて逃げ出す。しかし、そんな中一人冷静だった者がいる。安だ。その「おばけ」に近づいてよく見てみる。
「な〜んだ。ただのボロッボロのカーテンじゃん。」
キャハハと一人で笑っている。しかし、幸せもつかの間。安は誰かに見られているような感覚に襲われた。
「え?何?」
キョロキョロと周りを見回すが、何もいない。
「え?なになに?怖〜ぃ」
猫田と合流しようと後ろを振り返る。
すると、黒く染まった足が見える。
(この世の者じゃない!!)
そう思い、とにかくここから離れようと反対方向へと走り出した。ドスドスとこちらに近づいてくる音も聞こえる。走りながら恐る恐る後ろを見るとカマを持った老婆のような化物が襲ってきていた。
(マズい殺される…!!)
そういう恐怖が安の全身を包み込む。老婆は恐ろしく早い。角を曲がり、ゴミで散乱している場所を飛び越えようといた時、何か変に尖ったものにスカートが引っかかった。
(身動きが取れない…)
なかなかスカートに刺さったものが外れず、動けない状態になる。老婆はこの瞬間を逃すまいとカマを安に振り下げる。もうそろそろで安の頭に当たるという時、大きい異音が聞こえる。その音が嫌なのか、老婆は苦しみながら去っていった。
「はぁ…なんだかよく分からないけど助かった…」
安は安心して床に大の字に横になった。しかし、あんまり勢い良く倒れたので、鋭い何かに頭を貫いた。そのまま声を上げることなく絶命した。
はずだった。気づけば意識がある。
「何ここあの世?」
いや違う。あの世じゃない。高橋が誘った学校の中だ。死んだはずだよね?
頭を確認するが、傷は無かった。
何が起こったの?
▶安 死亡回数1
その頃、猫田は脱出ルートを探していた。
「クソっ!!入ってきたドアは使えないか。」
仕方がなくブラブラ歩いていると、高橋と合流した。
「あぁ猫田久しぶり。」
「あぁ久しぶり。大丈夫?」
「まぁ俺はな…でも女子たちがどこにいるかな…?」
廊下を進んでいくと、ごみで散乱した場所に出た。
「うわなんだここ汚え」
「理科かな?実験器具っぽいよね。」
「うわ理科苦手。理科とか無くて良いよまじで。」
そう言いながら器具に近づく。
「うわなんだよこんなところにスカートがあるぞ?」
高橋が乱暴にスカートをつまみ上げようとする。
「…え…」
「どうしたんだよ?」
呆れたという顔をして高橋に近づく。
「…なんだよ…これ…」
「…安…?」
そこには一つの死体があった。
「安だ!!安が死んでる!!」
「何で安になるんだよ!!」
「は?今日安が履いてたスカートだろ?」
良く見てみると、安のような見た目をしている。
「はは…夢だろ?嘘だろ?これは…そうか!!人体模型か!!いや〜安に似てるな〜」
「いや模型ならリアルすぎだろ!!間接、滑らかすぎだろ!!」
猫田がそういった瞬間、足音のような音が聞こえる。ここに高橋がいて、安の死体があるため、凛歌だと思った。
「あぁ凛歌!!安が…」
猫田がそう言いながら顔を上げる。しかしそこにいたのは凛歌ではなく、安を襲った老婆だった。暗闇の中に不気味にカマを光らせている。
「おい…なんなんだよ本当に」
高橋も猫田も逃げ出す。老婆は二人を追いかけた。まるで腹を空かせたサバンナの王チーターのようだ。廊下の角を曲がる。しかし高橋が転ぶ。ちょっと遅れた高橋は、カマに引き裂かれた。
猫田は高橋の断末魔を横耳に必死に逃げた。
▶高橋 死亡回数1
「な、なんだ?俺さっき死んだよな?」
高橋は訳がわからず、でも生きているのでウロウロしていた。すると、目の前に少女が!!
「ギャー出たぁー!!ユーレーホントに出たぁー!!」
腰を抜かして床に倒れ込む。少女はどんどん近づいてくる。
「なんだ?俺を2回連続で殺すつもりか?」
それに答えるように少女が口を開いた。
「ねぇ〜やだぁ〜私をユーレーみたいに言わないでぇ〜。え?どうしたの?てか、知ってる人いて良かった〜。私、チョー怖かったぁ〜。」
驚いたままの格好でかたまる高橋。
「…凛…歌…?」
これこそ開いた口がふさがらないだ。少なくとも、本人にとっては。
「そうだよ〜。凛歌だよ〜ん」
「ちょっとお前」
ピリリとイライラして立ち上がる高橋。
「ん?凛歌可愛いねって?ありがと〜」
「そーじゃねーよ」
ちょっと明るく感じるのも無理はない。凛歌は明るく話すことで少しでも怖さをなくしているらしい。
「まあいい。それより聞いてくれ!!安が…安が死んだんだ!!」
「え?安ちゃんが?ここにいるけど?」
「え?」
すると、凛歌の後ろからヒョコッと安が出てきた。
「え゛〜!!!!あ、安゛〜!!!!じ、じゃああそこにあったのはもしかして…いや夢だ!!そーだ夢を見てたんだ。リアルな夢だったな〜夢だと言ってくれ~!!」
「え?死体って、もしかしてあのゴミの所の?」
「そうだよ。なんだ、安も見てたのか。」
「えっ」
安が赤面する。
「ちょっと!!体に触った?」
「え?い、いや?何で?」
「いやだってその死体私のかも!!」
「「え?!」」
2人が驚く。
「実は私、そこで何かに刺さって死んだの。 でもそうしたらなぜか生きてて…」
「え?え?え?待って待ってドユコト?」
高橋が混乱する。
「え?待ってそれ嫌だ…」
急に凛歌が暗い顔をして言う。
「それって何度も死を体験するってことでしょ?」
▶安 死亡回数1
▶凛歌 死亡回数0
▶高橋 死亡回数1
▶猫田 死亡回数0
その頃猫田は一人で逃げていた。
「と、とりあえず高橋たちと合流しよう。」
猫田が 動こうとした時、校内放送が流れた。
『あなたたち、体、集める。頭、50個。脚、30本。腕、30本。腕脚ともに指まであってカウントする。指、100本。手足は問わない。全て、家庭科室に、そなえる。』
「は?腕?脚?4人合わせても足りねーよ。」
それに答えるように放送は続いた。
『あなたたち、何度も、死ぬ、事、出来る。死んでも、死体、残る。生き返る。死体は、10分経つ、消える。』
「何度も死ななきゃいけないってこと?」
『テキからの、殺害、死体、ならない。』
つまり、化物(あの老婆とか)に殺された場合、生き返るだけで死体にはならないということか。
そこで放送は終わった。猫田が階段を登ると安らと合流できた。
「何度も何度も死ななきゃいけないってことだよね?私、無理かも…」
明るかった凛歌も、小声で暗くなる。
「頭が50個だから、1人でやるなら少なくとも50回死ねばいいのか。」
高橋が言うと、「そうだな」と猫田が返す。
「つまり?4人なら…1人12.5回死ぬってこと?」安が言う。
「あぁ。公平にするなら13回だ」
凛歌が震えだす。
「普通に考えて13回死ぬとか。」
「ヤバイね」
「でも指が手足指定されていないのは良かった 。1回で20本ゲットできる」
「もうこうしちゃいられない!!さっさと殺るぞ!!」
そう言って高橋がナイフを取ったもののなかなか死ねない。
「やっぱり怖くてできないよね…」
凛歌が不安げに言う。
安が立っているのに片方の脚にしか体重をかけておらず、疲れたのか 少し動くとガシャン!!と言う音が聞こえた。
「なんだ?」
を言う暇なく上から大きなハンマーらしきものが安の頭に向かって落ちてきた。
頭が潰れてほぼ即死だった。
▶安 死亡回数2
この頃、高橋達は耐え難い恐怖に、身の毛がよだつような感覚だった。
トラップもある。この学校には、化け物のほかに、トラップなど、自分たちを殺す準備が整っていた。いつ、どのように殺されるかが分からない。死と隣り合わせだということを深く理解した。早くも安が皆のトコも場所に来た。ここで初めて自分の亡骸を見ることになる。
「うわ…なにこれ…」
「お前だよ。」
そう、高橋が吐き捨てるように言うと、安の死体にナイフを当てた。
「クソッ。頭は稼げなかったか…安、自分でやるか?」
「高橋あんた許可なく人の体切りつけるつもり?」
「自分でやれよ。」
安がナイフを持ち、死体に近づく。しかしなかなか切れない。
「何やってんだよ?10分経つと消えちまうんだぞ?」
「ダメだ…私…人の体切れない…」
やはり精神的苦痛を伴うものだ。もちろん容易なことではない。
「分かったじゃあ俺がやる。」
肉はあっさり切れた。鮮血が噴き出し、高橋にかかる。人の骨は硬い。ダイヤより硬いものだ。ナイフじゃとても切れない。高橋が苦戦していると猫田が近づいていた。
「高橋バカだな。こうやるんだよ。」
猫田は死体の腕を掴むと変な方向に曲げた。ゴリッと言う鈍い音とともに脱臼した。
「これで腕1本だな。」
そんな様子を後ろから見ている安がわざとらしく吐く真似をして言う。
「自分の体を切るのを見てるの気分悪い…」
「確かにね…」
と、凛歌が苦笑いをする。
エピソード2「そんな!!」へ…