七巡目
【七巡目】
一日目でカイたちの遊びに混ざり、四回目のゲームを始めようとしたところで提案する。
「そうだ。みんなでユミルにサプライズプレゼントしないか?」
「サプライズプレゼント? オレたちでユミル姉に何かあげるってことか?」
「ああ。明後日は浄化の儀式ってのがあるんだろ。聞けばその日の午前中は浄化の神子に感謝を伝えるらしいから、俺たちもユミルの為に何かできないかと思ってな」
前回はカイだけではなくララも不慮の事故に見舞われ、結末は【三巡目】と同じ謎のバッドエンドになった。やはり誰かが大怪我を負えば儀式の時間まで辿り着けないのは確定のようだ。
ユミルが浄化の力を使うのが問題なのか、別のどこかで異変が起きていたのか、バッドエンドの原因はさておき、カイとララを同時に助けないといけなくなった。
その為には二人を見張っておく必要があるが、遊びで散り散りになっては目が届かない。
だから事前に行動を制限させるように仕向けておけばいい。
「──いいじゃん! ユミル姉が嬉しがるものを用意しようぜ!」
カイの賛成にリロとララも大きく頷く。
「よし、決定だな」
「それにしてもキヨツグって本当にユミル姉が大好きだよなー」
「どうしてそんな話になるんだよ」
「だって今日ユミル姉と初めて会ったばっかだろ。あまり知らない人にそこまで考えねぇって」
「迷子のところを助けてもらった恩があるからだ」
「そんなこと言って、本当はユミル姉にひとめぼれしたんだろ〜」
「キヨツグ、てれてる」
「てれてるね」
「惚れてもないし、照れてもない。それよりも明後日の朝、今いる場所に集合! 遅れるなよ」
三人は笑いながら返事をし、隠れ鬼ごっこを再開させた。
火事のルートに入らないよう二日目はずっとユミルと行動し、三日目がくる。
前回と同じく、カイたちと遊ぶ約束をしたと嘘を伝えて家を出る。
集合場所に行くと、しっかりと三人の姿はあったのだが────。
「──おい。なんでジャンケンしてるんだよ」
「あ、キヨツグだ」
「おはよう、キヨツグ」
「やっと来たのか。遅えぞ」
「俺は色々やることがあったんだよ。それよりもなんで遊ぼうとしてるんだ、ユミルのプレゼントを選ぶって話だっただろ」
「だから隠れ鬼で勝負するんだよ」
「勝負? どういうことだ?」
「ボクたち渡したいものがバラバラなんだ。ボクは感謝の手紙!」
「わたしは手作りのお菓子!」
「オレはたくさんの花束!」
つまり意見が合わなかったから遊びで決めるというわけか。これは非常にまずい。
「べつに一人の意見に絞る必要はない。それぞれが渡したい物をそれぞれで用意すればいいだろ」
「ボクたちみんなで考えたものを渡したいんだ」
「みんないっしょがいい、でもお菓子がいい」
「それに今からみんなのものを用意してたら間に合わないだろー」
「遊んでる時間があるんだったら十分間に合うって」
「あっ。じゃあキヨツグが鬼で、最後まで捕まらなかったやつのものを渡そうぜ!」
「いいね!」
「さんせーい!」
「おい、話を聞────」
『にっげろー!』
大声を出して三方向に逃げていく。
悩む間もなく、素早くカイを追って捕まえるが、「数を数えろよ、ひきょうだろ!」と腕を振り払われてまた逃げていく。
……くそっ、どうしてこんな展開になるんだよ!
このままでは同じ結末を繰り返してしまう。事故が起きる前に捜し出して捕まえないと。
まずは落ち着いて考えよう。大丈夫、まだ時間はある。
最初はララからだろう。前回の水難事故から湖付近に隠れるはずだ。
その次にカイだが、あいつはその場所に留まらずに隠れながら移動するタイプだから予測がつかない。こんなことになるなら詳しい転落位置を聞いておけばよかった。
リロに至っては検討もつかないが、最後に残ったやつの意見を汲み取るそうだから、カイとララさえ捕まえてしまえば勝負は終了する。
鬼の待機時間が無くなるまでに考えをまとめて、すぐさま行動に移った。
そこから二人を見つけて捕まえるのにかなり手間取った。
まず湖に行ってララの姿を捜したが見つからず、どうやら初めから湖にいたわけではなく時間が経ってから向かうようで、それならとカイを追うことに思考を切り替えて街中を捜索したがこれがまた見つからず、家屋や木々の死角を虱潰しに回っていた時にやっと姿を発見して捕まえ、そのままカイを伴って急いで湖に戻ると、岸辺でウロウロしているララを見つけて無事に確保した。
二人を連れて街中に戻り、まだ隠れているリロに向けて勝負が終わったことを大声で伝えるが、近くにいないのか一向に出てこない。カイとララもリロの隠れ場所を知らないので捜すしかなかった。
そうしているうちに時間だけが過ぎ、
「……っ」
ちょうど目の前の通路を横切っていく森民の集団と出会した。
果たして、その中の男性の手にはリロの姿があった。
ユミルの元に運ばれて地面に寝かされたリロの容態を見ると、頭の一部が削り取られたように損傷しており、大量の出血で顔が見えないほど酷かった。
一人の女性が狼狽えながら言う。
「……家にいたら外から大きな物音とリロくんの叫び声が聞こえて……急いで見に行ったら木箱の下敷きになってるリロくんの姿が…………あたしが悪いの……ちゃんと箱の整理をしておけばこんなことには……!」
俺は必死に治癒を行うユミルを見て、己の無力さに奥歯を噛みしめた。
ここは偶然が必然となる世界だから、リロの身にも何かが起こると思って一昨日に提案したのだが、運命を変えることはできなかった。




