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語り部はバッドエンドを繰り返す ──ユミルの物語  作者: 浅白深也
五章 繰り返されるバッドエンド
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五巡目

【五巡目】

 ラナフィナのやつふざけやがって。やっと心を開いてくれるのかと期待したのに……。


 だが、前回で大きく思考が伸びた。


 新たに判明したことは二つ。


①ラナフィナが火事の犯人。

②アリウスさんがテントの持ち主。


 まず①については推測どおりであったが、依然として理由が分からない。【一巡目】と【三巡目】では火事を起こさず、普通にユミルの家を訪ねてきた。


 やはりその相違は二日目で御神木(ごしんぼく)に行った際に、その場に俺が残るか残らないか。手掛かりとしては、街に行った場合、ユミルが戻ってくるのは夕方で、それまではラナフィナの家で過ごしていたことだ。もしかしたらその間にラナフィナの心境に何かしらの変化があったのかもしれない。


 そして②。街にしっかりとした家屋があるにもかかわらず、テントを立ててまで野宿することから、アリウスさんには何か隠しごとがある。どうして御神木(ごしんぼく)の核の入口を見張るような真似をしているのか。


 今回はこの二つを徹底的に調べよう。


 二日目。死地(しち)の調査が終わり、御神木(ごしんぼく)に寄った時。


 ユミルたちに御神木(ごしんぼく)を間近で観察したいと嘘をつき、一旦二人のそばから離れた。


 御神木(ごしんぼく)の根の陰に隠れて二十分が経ったぐらいで、会話している二人の元に戻る。


「二人とも、話を遮って悪いけどちょっといいか? 今さっき御神木(ごしんぼく)の裏手に行ってきたんだけど聞きたいことがあってさ」

「え、そんなところまで行ってたの? わたしたちが話し始めてからまだ二十分ぐらいしか経ってないと思うけど、よくその短時間で行って戻ってこれたね」

「そうか? 普通に木の根を避けながら行けばすぐだったぞ」

「どうだかな。本当は御神木(ごしんぼく)に興奮して、はしゃぐ子供みたいに走り回ったのではないか」

「ならもっと疲れてるだろ。俺のひ弱な体力を舐めんな」

「自信満々に言うことじゃないかな……」

「誤解されて体力仕事を押しつけられると困るからな。それよりも裏手の地面にある石板みたいなのが核の地下扉だろ。その側にテントが張ってあったんだけど、誰か見張りでもしてるのか?」

「あー……あれは兄さんのものだよ」


 前回でラナフィナが関心を示さなかったことから、やっぱり周知のことのようだ。


「へぇ、アリウスさんが。日中にいないってことは夜間に寝泊まりしてるのか?」

「っぽいね」

「なんか不確定な返事だな。みんなで取り決めたわけじゃないのか?」

「核への道は(われ)が魔法で封印しているのに見張りを立てる意味がないだろう。あいつが自主的にしているのだ」

「自主的? どうして?」

「さぁな」

「ユミルも知らないのか?」

「兄さんの考えはいつも奇抜だからね。一々行動を気にしてたら負けだと思ってる」


 二人とも本当に知らないのか、それともフリなのか。アリウスさんが持ち主だと分かっていながら肝心な理由を知らないは無理がある気がする。普通なら訊ねるなり問い詰めるなりするはずだろう。この二人なら尚更に。


 つまり後者が濃厚そうだが、どうであれ教えてくれる感じではなさそうだ。


 下手に疑問を募らせると逆に怪しまれてしまうからここらで止めておくか。今日の夕方にアリウスさんとは街で会うし、その時にダメ元で直接聞いてみよう。


 そのあと(少し強引な話題の変え方だったが)街を見て回りたいと言ってその場から去った……フリをする。視線が届かなくところまで行き、そこから木々の陰に隠れながら戻って二人の動向を探る。


 なんだか自分がストーカーになった気持ちで罪悪感が込み上げながらも、様子を見続けること十五分ぐらいでユミルたちが動き出した。


 バレないよう俺も動く。特にラナフィナは勘が鋭そうだから細心の注意を払い、二人の姿を見失わないぐらいの距離を空けながら後を追った。


 そうして着いた先は【二巡目】で聞いていたとおりにラナフィナの家だった。


 二人が家に入って行ったのを確認してから近づき、壁に張りついて会話を盗み聞きした。


 すると、話題はこの森の現状について持ち切りだった。


『ユリアのおかげで死地(しち)の広がりは減少したけど、それでもいつかは森が滅びてしまう』

『これ以上、緑が失っていくのを黙って見ていられない』

浄化(じょうか)神子(みこ)であるわたしがなんとかしないと』


 自分を責めるようなユミルの沈痛な声が聞こえ、そのたびにラナフィナが『これは長年の問題なのだ。お前一人が背負う必要はない』などと慰めていた。


 聞けば聞くほど分からなくなってきた。この会話が、ラナフィナに火事を引き起こさせるきっかけになるとは思えなかったから。本末転倒もいいところだ。


 そのあとも聞き漏らさないよう集中して耳を傾けていたが、結局、推理が(はかど)るような情報はなかった。


 話の終わりを察して家から離れ、そのまま走って街まで行き、何食わぬ顔でユミルと合流した。


 夕方にアリウスさんと会った時にテントのことを訊ねてみたら、彼は特に変わった反応を見せず「浄化(じょうか)の儀式が近づいてたからな。御神木(ごしんぼく)周辺に問題がないか監視してたんだ」と答えた。


 わざわざ寝泊まりしてまで? 問題って具体的に何? とあれこれ質問してみたが、全て上手いことはぐらかされ、最後にはユミルに「あまり深く考えないほうがいいよ」と止められてしまった。


 何の手掛かりも掴めずに次の日、アリウスさんが火事を知らせにやってきた。

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