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味噌ラーメンと浴槽

目が覚めると、時計の針は深夜3時を指していた。夢の世界から現実に戻った瞬間、体のだるさと眠気の残る瞼。変な時間に目が覚めてしまったのだ。化粧もそのまま寝てしまっていて、顔が少しベタついている。

はぁあ、とため息をつきながら電気をつけると、眩しさで目を細める。


眠気を引きずりながら浴室へ向かう。狭くて簡素な作りの浴槽に夢の中で過ごしたひとときが浮かんだ。あの夢の世界では、全てが美しく、輝いていて、幸せな気分だったのに…現実はこうだ。ため息をもう一つついて、洗剤とスポンジを片手にゴシゴシと浴槽を洗い、お湯を溜め始める。


お湯が溜まる間に、仕送りで届いたダンボールから味噌ラーメンの袋麺を取り出し、サッと作ることにした。作り方なんて、もう慣れたものだ。お湯を沸かしながらスマホを取り出してNTubeを開く。何か面白い動画を見つけると、動画が始まる音が流れる。鍋の中で麺が茹でられる音と、スマホの動画の音が重なりながら、ラーメンをおもむろに鍋からテーブルに運ぶ。


テーブルの上には、いつかコンビニで貰った割り箸が置いてある。鍋のまま、その割り箸を取って麺をすする。湯気と共に香ばしい味噌の匂いが広がり、どこか懐かしいような気がする。ズズッと麺をすすりながら、動画に目を落とす。旅行の動画だ。画面には美しい景色が広がり、なんだか心が少しだけ温かくなる。



ピピピっと音がして、お風呂が沸いた音がするけれど、気にせず麺をすする。動画に集中しようとするけれど、どうしても上の空で、音が左から右へ流れていくだけだった。ふと、食べ終わった麺を器に残し、鍋を流しにおいてそのまま水に漬ける。


ーーーー


おもむろにスマホでNTubeを見ながら麺を茹で鍋のままテーブルへと運ぶ。テーブルには既に鍋敷きが置いてありその上にどんと置く。

いつかのコンビニで貰った割り箸をあけ鍋のまま麺をすする。ピピピっと言う音がなりお風呂が湧いた音がするが気にせずスマホに流れる旅行動画を見ながらズルズルと麺をすすり平らげる。食べ終わったらそのまま鍋を流しに置き水

を貯めた。


冷たい空気に少し身震いしながら浴室へ向かう

シャワーを浴びながら、棚に置いたスマホで動画を流し続ける。ふう、と深いため息をつきながら、浴槽に体を沈める。ああ、こんなにぬるぬると温かいのに、なぜか心が冷たい。ふと、夢の中の生活を思い出した。あの夢の世界では、全てが完璧で、みんなが私を大切にしてくれて、まるでお姫様のような気分だった。


でも現実は…。今、ここにいる私はどうしてこんなに不出来で、つまらないのだろう。どうして現実がこんなにも辛いのだろう。何もかもが無駄に感じて、心がどんどん沈んでいく。


ぶくぶく、ぶくぶく。浴槽の中に沈んでいく感覚が、まるで自分の中の重さを象徴しているかのようだ。動画の音も、もはや耳に入らない。左から右へ、ただ音が流れ去っていくだけ。夢の中では、あんなに幸せだったのに…どうして、こんなにも体たらくで、空虚な毎日を送っているのだろう。


「今日は本当に"最悪な一日”だったな。」

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