夕焼けと団欒
お茶会の時間が静かに過ぎ、リリアが微笑みながら時計を見つめた。「もうこんな時間なのね。楽しい時間はあっという間だわ。」
マリアも軽く息をつきながら、心地よい余韻に浸っていた。お茶の香りと、リリアとの会話がまだ耳に残る。けれど、時間の流れには逆らえない。
「そうね、リリア。またこうやってゆっくりお話ししましょう。」マリアは優しく微笑みながら、立ち上がった。
リリアも立ち上がり、ドレスの裾を軽く持ち上げて、マリアに向かってお辞儀をする。「ありがとう、マリア。素敵なお茶会だったわ。」その言葉に、マリアはほんのり頬を赤らめながら答える。「こちらこそ、リリア。来てくれてありがとう。」
リリアは外套を羽織り、扉の前に立つと、振り返ってもう一度微笑んだ。「じゃあ、またね。次回はフィアンセの話、もっと詳しく聞かせてね!」リリアは楽しげに言いながら、足取り軽くその場を後にした。
マリアは扉を少しだけ開けて、リリアが去っていく姿を見送った。リリアが背中を向けると、彼女の姿が徐々に見えなくなっていく。マリアは心の中で、また次回の再会を楽しみに思いながら、扉を静かに閉めた。
リリアを見送った後、マリアはゆっくりと自室へと戻った。部屋に入ると、心地よい静けさが広がっており、夕暮れの光がカーテン越しに淡く差し込んでいる。ソファーに腰を下ろすと、今日の一日がどれも素晴らしく、充実していたことを実感する。リリアとのお茶会も楽しかったし、グレンタール先生の授業もとても興味深かった。ゆっくりと深呼吸をしながら、マリアはソファに身を沈めて目を閉じる。しばらくの間、静かな時間を楽しむ。
その後、少しだけ休んだ後、執事が静かに部屋に入ってきた。「お嬢様、ディナーの時間でございます。」マリアは軽く頷き、立ち上がった。
「ありがとう、すぐに行くわ。」軽く微笑んで答えると、執事は礼をして部屋を出て行った。マリアはドレスの裾を整え、髪をもう一度チェックしてから、ゆっくりとダイニングルームへ向かった。
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ダイニングルームに到着すると、家族全員が席について待っていた。父・ハルオンが優しく微笑んで彼女を迎える。「おかえり、マリア。今日は一日楽しかったか?」
「はい、とても楽しかったです。」マリアは微笑みながら席に着き、父と母、そして兄・レイと一緒にディナーを楽しむ準備が整った。
ディナーが始まると、テーブルの上には、まるで美術品のように盛り付けられた料理が並べられていた。全てが丁寧に作られており、目でも楽しめるような色彩豊かな食材が取り入れられている。
まず最初にサーブされたのは、季節の前菜の盛り合わせ。細かく切られた新鮮な野菜やフルーツが美しく配置され、その上には薄切りにされた鴨の胸肉とトリュフのスライスが載せられていた。ドレッシングはほんのりとバルサミコの酸味が効いており、口に入れると野菜の甘みと鴨肉の旨味が絶妙に絡み合う。
「お父様、これは何の野菜かしら?」マリアが箸を止めて尋ねると、父・ハルオンがにっこりと微笑んで答えた。「それは春の終わりに収穫されたアスパラガスだよ。これを使うと、料理に新鮮な香りが加わるんだ。」
次に運ばれてきたのは、金色に輝くスープ。お皿に注がれると、湯気が立ち上り、ほんのり甘い香りが広がる。スープは、コーンのクリーミーな味わいと、少しだけスパイシーな香辛料が効いており、まろやかで心温まる味わいだった。一口飲むたびに体が温まり、思わずほっと息をついてしまう。
「このスープ、まるで絵画みたいだわ…」マリアが言うと、母・ルーシュが優雅に微笑んで答えた。「その通りね、これはシェフの自信作よ。コーンの甘みを引き立たせるために、少しの唐辛子とガーリックを加えているの。」
メインディッシュには、上品な盛り付けのローストビーフが登場した。肉は完璧に焼き上げられており、表面は香ばしく、ナイフを入れると肉汁がじゅわっと溢れる。その上にはデミグラスソースがたっぷりとかけられ、彩り豊かな季節の野菜が添えられている。肉のジューシーさと、ソースの深い味わいが口の中で広がり、贅沢なひとときが感じられる。
食事が進んでいく中で、テーブルには豊かな香りと共に、まるで会話のように料理が絶妙なタイミングでサーブされていく。デザートの時間には、シェフ特製のフルーツタルトが登場した。サクサクのタルト生地の上には、甘酸っぱいベリーとクリームが飾られており、ひと口食べると、フレッシュな果物の味が広がり、口の中で幸せが満ちる。
食事を楽しみながら、時折笑顔を交わし、穏やかな会話を楽しんだ。マリアは、こうして家族と過ごす時間が本当に幸せで、心が満たされる瞬間だと感じていた。