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F1wor L  作者: 桜島晃月
6/8

F1wor L clovers memory クローバーの記憶

 私は、今F1wor Lで隊員として、活動しているが、以前は普通の、生活を何気なく送っていた。

 家族は私と父、母の3人で暮らしていた。いつも通り中学校から帰ってきて。夜ご飯の前にちょっとだけお菓子とか食べちゃって、それで夜ご飯食べれなくなってお母さんに怒られちゃったり。

本当にそんな日常だった。でも、私はそんな日常を壊された。


 今日は、学校の終業式の日だ。朝から息が白くなるくらいに寒い。厚手のコートを制服の上から着てても、凍えてしまうほどだった。

「おはよう、さむいねー今日も」

友達の、絵里ちゃん。私の一番の友人で、なんでも話せる信頼できる人だった。

「今日さ、体育あるよね…私体操服忘れちゃった…どうしよ」

「大丈夫、●●ちゃん運動神経いいし、制服でも行けるっしょ」

なんて、他愛のない会話をして、いつも学校に一緒に行く。門をくぐりもうすっかり葉も落ちきった、桜の木を見て、今一度季節を実感する。気温でもうひしひしと冬を感じているが、桜の木はそれを視覚化してくれている。

 まだ、寒い教室に入る。家が近いのでいつも早めについてしまう。もっとゆっくり出ればいいんだろうけど、私も絵里ちゃんも結構な、心配性で遅れたらどうしようと言って、いつも早い時間に出てしまう。

 この朝早い時間は、絵里ちゃんとおしゃべりしたり、ちょっとお散歩したり、していた。

今日は、寒いからエアコンをつけて、教室でおしゃべりする。

「なんか、最近F1worウイルスって言うのが、出てきて殺人ウイルスって言われてるんだって、怖いね」

その話は、私も朝のニュースで聞いたことだった。

 感染したら、体の細胞が、人間の細胞から植物細胞に移り変わり、物理的に植物化するとかなんとか…

「そう、こわいよね、私たちの近くにも来てるかもね、警戒しないと」

15分ほど散歩した後に、誰もいなかった教室に戻る。そこには先ほどまでなかった賑わいがあった。いつも、この時間には騒がしくなるが、今日はおかしい騒ぎ方だ。

「えっ、どうしたの?何かあった?」

と、声をかけたが、声が出ないようだ

「ちょっとごめん」

私は、人々をかき分け悲鳴が聞こえる、教室の真ん中の方に向かっていく、いつもよりも距離が遠く感じる。重々しい空気がそこに流れていた。

「えっ…」

そこには、かつて人であったものが転がっていた。

「これって…F1worウイルス…」

服はそのままだが、体が植物に置き換わってしまっている。服がなければ、突如教室に花が咲いたとしか言いようがないほど、綺麗な花々が赤く咲いていた。まるで、人の血に染まったかのように

 しかし、私たちがするべきは犯人への警戒だ。このウイルスは空気感染や接触感染などはしない。注射器で直接刺さなければ、感染はしないウイルスだ。

つまりは、まだ犯人は近くにいるということになる。

「絵里ちゃん、犯人がまだ近くにいるから、逃げた方がいい。この学校に安全地帯はないよ」

私は、混乱している絵里ちゃんの腕を引き、教室から出る。廊下を走り階段を下る。おそらく犯人はこの学校内にいる。なぜなら門を閉めている時間帯になっているからだ。

先ほどの遺体は、まだ注射を打たれて間もない状態だった。

「●●ちゃん、私たちどうしよう…」

「今はとりあえず、犯人が行きそうなところを考えて逃げるだけ。学校側からはまだ放送がないけど、逃げないと、死んじゃうかもしれないから」

もちろん、正面の校門から逃げるわけにはいかない。なぜなら、相手が銃を持っているかもしれないから、私たちが発見されて射撃されるかもしれない。この学校は、高い位置にあるので出口がかなり限定されている。正門を含めて3か所だけだ。

「絵里ちゃん私から離れないで、殺されるかもしれないから」

絵里ちゃんは、震えながらも私の腕をしっかりと握っている。私はこの時とても冷静だった。なぜだろうか、日々訓練されていたわけではない。でも私は、恐らくこの場にいた誰よりも冷静だった。

「校庭門から出よう。あっちは多分見つかりにくいし、安全だと思う…」

絵里ちゃんも落ち着いてきたみたい。確かにそこが安全ではある、でも逆に言うと見つかりにくい場所なので犯人がそこから出ようと考えている可能性が高い。それで犯人に出会ってしまったら…そういう最悪の場合もある。

「犯人だったら、多分もうこの学校から出てるはずよ、だって犯人は生徒だから。私見たのよ、朝の時間なのに、帰ろうとしていた生徒を」

なるほど…それならば正門から出ても問題はなさそうだ。それに正門まではここから近い。

「正門から出よう、とりあえず私の家に帰ろう」

絵里ちゃんの家は、かなり遠い。それに犯人の顔を見たということは絵里ちゃんを狙ってくる可能性が高い。

「走るよ、ついてきて」

正門まで一直線に走る。

「もう少しで、私の家だから頑張って」

私の家は、セキュリティがしっかりしてるし、きっと大丈夫だと思う。

「よかった、無事についた…これで一安心だね」

私は、リビングのテレビをつける。

家族がいない静かな部屋で、二人でテレビを見ている、さすがにまだ報道はされていない。

 そんな中、玄関から扉を開ける音が聞こえる。おそらく親だろう。私が、さっき連絡を入れたからだ。私は、親を迎えに玄関に向かう、それよりも早く絵里ちゃんが先に向かった。

「あぇっ…」

その時、絵里ちゃんの喉を絞ったかすれた声が、聞こえてきた。

「絵里ちゃん?」

私は声のした廊下の方に出ると、そこには何かしらの刃物で切り刻まれた、無残な姿の絵里ちゃんが倒れていた、そこに一瞬だけ化け物の姿が見えたが、次の瞬間には消えていた。

その瞬間私の首を絞める力を感じる。

息ができない

苦しい

痛い

逃げられない

目の前が暗くなる

絵里ちゃん

絵里ちゃん

絵里ちゃん

死ぬ

死ぬ

死ぬ




「あっ…」

次に目を覚ますと、私は意識がもうろうとしているが、そこは確実に私の家だった。

右を見ると、そこにはバケツをこぼしたような血だまりがあり、恐らく絵里ちゃんが倒れていたところだろう。でも絵里ちゃんの姿はない。

 私は、重たい体を地面に這わせ、リビングへと向かう。化け物の姿が見当たらないので、探し回る。

リビングの扉を開けると、倒れこんだ二つの死体がそこにあった。暗くて見えないはずなのに、鮮やかな赤色がそれをかつて人だったものだとわからせる。

生臭い、血の匂いが部屋中に充満している。

「おえっ…」

私は、その死体が父と母とわかり、突然吐き気を感じた。しかし、なぜだか吐けない。涙も出ない。

なんだろうこの感情は、今まで感じたことのない感情の気がする。

でも私は、この感情に気が付く。これは怒りだと、今までの感情すべて足し合わせても今のこの怒りには届かないだろう、悲しみではない、怒りだ。

許せない、絵里ちゃんも、父さんも母さんも殺された。

その感情のまま私は、大きく声を上げた。

 そして、二人の死体を抱え、その場に倒れこむ


あのとき、私が学校にいれば

家に帰ってこなければ

絵里ちゃんと一緒に来なければ

いっそなら私も、死んでしまえば

目の前の鮮やかな赤色が色あせていく。私は立ち上がり、血だらけの手でキッチンナイフを取り出す。

そして、私の喉元にナイフを突き刺す。

しかし、痛みどころか、血すら出てこない。引き抜き、もう一度突き刺すが、同じように何も起こらない。

このとき、私はふと思い出す。私は首をあの化け物にしめられ、殺されたはずだ。なのに私はなぜ生きているのか…それに今も、なぜ死ねないのか

何度も、何度も私は、首元にキッチンナイフを突き刺した。

「もうやめましょう」

と、私の手を止める力と声を遠くかすかに感じた。

「あえっ…」

振り返ると、そこには優しく涙を流す、女の人が立っていた。

「ごめんね、助けに来るのが遅れちゃって、もう大丈夫だから」

と、優しく私を抱き寄せ、血がついて汚れた服でも構わず、私を力強く抱きしめてくれた。

 そのときやっと、私は涙を流すことができた。怒りの感情ではなく、悲しみの感情だ。

それでも、私の心の中から、怒りの感情が消えない。

「もう、疲れちゃったでしょ、お眠り」

優しい声とともに、眠気が襲い私は深い眠りに着いた。



「おはよう、よく眠れた?」

知らない天井。ここは…

「はっ、絵里ちゃんは?ここは…」

そこには、見たことがあるけど、詳しく思い出せない、人が立っていた。

「まだ、急に動かない方がいいわ。私は、スノードロップ、あなたはF1worウイルスに感染したけど、生き残ったのよ。あなたは、今日からクローバーよ」

えっ?F1worウイルスの生き残り?クローバー?何を言ってるの…

「あの、スノードロップさん絵里ちゃんと私の親はどうなったんですか」

そう聞くと、スノードロップさんはゆっくりと私の手を握って話してくれた。

温かい手を握っていると落ち着く。

「あなたのご両親は、残念ながら即死だったわ。現代医療じゃ生き返らせる方法はない、絵里ちゃんは、周囲を捜索したけど、見当たらなかったわ。でもあの出血量だともう…」

私は、よくわからないことだらけだが。生き残ったのならやることはただ一つ、復讐だ。

「スノードロップさん、私復讐したいんです。力を貸してください」


ここから、私がクローバーとしての人生を生きていくことが始まった。

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