第五話 同期
箱根駅伝の常連校には、駅伝チーム専用の寮が
完備されている。
蒼太の所属する城西拓翼大学駅伝部も例外ではない。箱根駅伝を目指すランナー達は、食事や睡眠時間など私生活を徹底的に管理される。
すべては箱根駅伝で勝つためなのだ。
第五話 同期
血液検査の翌日、寮での蒼太の朝食は一品多かった。
レバニラ炒めである。
出身地である大阪市N区の名物と言えば、
ホルモン焼きである。
子供の頃の蒼太もおやつがわりに食べていたので、
レバーをはじめとしたホルモンは大好物である。
そういや、高校の時はパンばっかりたべていたな。自分の食生活を反省する。
ふと、隣のテーブルをみると二年生の3人がげんなりした顔でレバニラ炒めを食べている。きっと苦手なのだろう。
ちなみに同じテーブルにいる蒼太の同期は4名だ。
「お前、ほんとにそのレバニラ美味そうに食うなー。
信じられんでー。」
石川涼介。京都府出身。俺たちの代のエースだ。
多分、こいつが最初に箱根を走るんだろうなと
みんなが思っている。
「蒼太ー、こんなイヤミ気にすることないさー。」
沖縄出身の荻久保圭佑。人当たりもよく、
優しい性格をしている。
ダッシュは得意だが、なぜか競り合いは苦手だ。
「なあ、修。来月の門限なしの日は、どこにいく?」
「おう。蓮。今のところノープラン!」
東原蓮太、修太は、
埼玉県出身の双子の兄弟だ。
ジョーダイの附属高校から進学してきた。
ふたりの名前から「レンシュウコンビ」と
呼ばれているが、根っからの遊び人気質なため、
名前負けしている感じが否めない。
ちなみに、二人とも、ジョーダイ女子陸上部で
短距離をしている美人の彼女がいる。
「そこは、デートちゃうんかい!」
関西出身の蒼太と涼介がツッコみをいれ、
隣で圭介が爆笑している。
全員が明るい性格であったこともあり、
蒼太たちは早い段階で打ち解けていた。
いい奴ばっかりで良かった。
いつかこのメンバーで襷を繋ぎたいな。
皆、心の中でそう思っていた。