第三話 不調の原因
卒業式後、蒼太はすぐに上京することにした。
大学ではすでに同期が練習を始めているからだ。
されど18歳、もうすぐ成人するとは言え、ずっとそばにいてくれたおかんと離れるのは寂しい。それを口に出そうか葛藤する。
しかし、おかんは、「こっから先は甘えは禁物。見送りはせーへんよ。」と後ろを向いたまま、強い口調で言う。
結局、家から一歩も出ることなく蒼太を見送った。
それが母親なりの精一杯のエールなのだろう。
東京行きの新幹線に乗りながら蒼太は誓った。
「絶対に箱根駅伝で活躍する」と。
第三話 不調の原因
ここは、城西拓翼大学の陸上競技場。
蒼太が入部したこのジョーダイ駅伝部は、一軍と二軍に分かれている。
当然、最初から一軍と同じ練習などさせてもらえない。
しかし、二軍での集団走ですら、蒼太は周回遅れだ。
監督である平林は、コーチの櫛部川に言う。
「なるほどな。確かに、お前の言う通りだな。
とりあえず、いまからアイツを監督室に呼んできてくれ。」
蒼太は、少し休憩をとり櫛部川コーチと監督室に入った。
「お前が蒼太か!すぐにバテるのは日頃の健康管理がなってないからだ!すぐに血を採ってこい!」
なんておっかない監督だろうか。
でも、何で…血?
意図が分からなかった。
櫛部川コーチが小さな声でフォローする。
「血液の成分検査してこいってことだから。
別に怒ってるわけじゃないんだぞ。」
いやいや、おっかないって!
心の中でツッコミながら、そのまま櫛部川コーチと病院へ向かった。