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蒼太の箱根駅伝  作者: 先出しバウアー
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第一話 挫折と出会い

〜あらすじ〜


大阪市N区でおかんと二人で暮らす蒼太。


高校駅伝の名門校、西巻工業高校から特待生として入学!



第一話 挫折と出会い


最初は調子が良かった。


中学の時には無かった5000メートル走にも上手く対応できていた。総体予選でも一年生にしては好成績だった。


しかし、今は…。


今日も陸上競技場のトラックで、蒼太は集団走から一人置いていかれる。


そして、あっという間に周回遅れになると、

アウトコースからどつかれる。


「道あけーやッ!おっそいねん!!」


よろめきながら、トラックの内側に倒れ込む。


なぜか、身体に力が入らない。


練習をサボったことはないし、半端な気持ちでここに来たわけじゃない。大きな怪我もしなかった。


シューズを買うために週末の練習後は学校には内緒で日雇のバイトもした。勉強も家事もそつなくこなした。


気持ちじゃ誰にも負けへんのに。


しかし、陸上になると途中から息切れがする。そして、気が遠くなる。そんなことの繰り返しだ。


辛い時、悲しい時はいつもおかんの顔が浮かぶ。

「これじゃあ、実業団いけんやん。おかん、ホンマごめん。」


理不尽なくらい厳しい上下関係と、どうしても結果がついてこないことによる自信の喪失が、元々優しい性格である蒼太の心を蝕んでいった。


ふと、横を見ると監督が誰かと談笑している。

多分、箱根駅伝にでている関東の強豪大学からきたスカウトだろう。


「でも、俺には関係ないんだろうな。」そう思いながら、蒼太は空を見上げた。誰にも認めてもらえない孤独感で涙が止まらなかった。


蒼太の気持ちとは裏腹に、悔しいくらい爽やかな青空が広がっていた。




「監督さん、あの子やっぱりいいですよー。ほら、そこで泣いてる子。」


スカウト(?)の男が倒れている蒼太に向かって指をさす。


この男の正体について少し話そう。


櫛部川 敦史(城西拓翼大学 駅伝部 

スカウト兼コーチ)。32歳。早稲田学院大学卒。


フットワークの軽さと人当たりの良さであらゆる高校とのパイプをもつ敏腕スカウト。ダイヤの原石のような選手を発掘する先見の明は、他校の追随を許さない。


また、若手でありながら、コーチとしても有能であり、無名であった城西拓翼を4年で本戦出場ができるチームに急成長させた実績がある。




監督が応える。


「蒼太ですか?いやいや。全っ然レースで使えるレベルじゃないですよ?ましてや大学駅伝なんて…。」


だが、櫛部川も主張を変えない。


「いいえ。あの子伸びますよ。ほら、あんなに限界なのに、目が死んでないじゃないですか!是非、ウチにいただけませんか?」


監督は下を向いて応える。


「でも、アイツの家は…。」


櫛部川はどことなくそれを察しながらも自信を持ってこう答えた!


「お金のことなら心配いりませんよ!だから、是非、彼をウチにください!あの子が必要なんです!」


これが、蒼太と生涯の恩師となる櫛部川コーチとの出会いであった。

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