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プロローグ
俺は蒼太!おかんと大阪のN区で二人で暮らしている。
俺はガキの頃から、かけっこでは負けなし!
とくに、長い距離を走ることが好きやった。
中学んときに高校駅伝の名門、西巻工業高校から特A(学費免除)で推薦をもらった時は、めちゃめちゃ嬉しかった。
ずっと片親で俺を育ててくれたおかんも喜んでくれた。
その日は、「お祝いや」と言って、おかんがショートケーキを二つ買ってきてくれた。
「おかんはダイエット中やから、蒼太がたべんさい。」
そんなオカンの優しさにあふれたウソを俺は一生忘れない。
高校で活躍して、豊川自動車みたいな大手企業の実業団に入れれば、引退後もお金に苦労せんし、おかんに楽させてやれる!
ケーキだっておかんにワンホール買ってやれるで!
そんな期待を胸に俺は西巻工駅伝部の門を叩いたんや。