死にたがりの偽聖女はとにかく首を渡したい!
短編です。楽しく書いたので暇つぶしに楽しんでいただけたら幸いです!
「ジョアンナ・デルモア、貴様を国家反逆罪で国外追放とする!! ついでに婚約も破棄だ!!」
煌びやかなシャンデリア、人のざわめき、沈黙を貫くオーケストラ。
ここはハルモニア王国、城内大ホール。重要度の高い催しや舞踏会の際に使用される、由緒正しき格式高いこの場所。
貴族でもごく限られた人間しか足を踏み入れることを許されない、国民なら誰しもが憧れるこの場で、私、ジョアンナ・デルモアは、なんとまあ、国家反逆罪の罪に問われていた。
豪華絢爛のこの場には似つかわしくないほどの静寂、そして小さな囁きが重なって蔓延していくざわざわとした音。
私は周囲から様々な感情を込められた視線を一身に受けながら、手足の先からサアッと血の気が引いていくのを感じていた。
なんと、まあ!! 恥晒し!! 死にたい!! 今すぐに!!
こんな由緒正しき場で、国外追放を言い渡されるなんて、私はなんて悪行をしてしまったのでしょう!!
国家反逆罪だけでなく、ついでに婚約破棄。生き恥とはこのことである。
「大変申し訳ございません、申し訳ございません、王子殿下。ああ、生きているのが恥ずかしい……」
「そうだ、お前は生きているだけで恥ずかしい存在なんだ。お前の取り柄と言えば俺に楯突かないこと、素直なこと、その珍しい『 青い瞳』くらいだろう」
殿下が神妙な面持ちで頷くものだから、私の気持ちはさらに下の方へ落ち込んだ。
殿下に自分が気に入られているなんてことは、図々しくて一度も考えたことがない。ただ美しいものがお好きと有名な殿下は、少なくとも私の容姿に及第点を頂いているとばかり思っていたため、まさか褒められるべき点が先祖返りでたまに一族の特徴として出現する「青い瞳」だけだなんて。
そんなの殿下が可愛いと以前仰っていた熱帯地域で発見された珍獣「剛力羅」と同じ、否、さらに下ではないか。
「ああ、私はなんて恥ずかしい人間なのでしょう……恐れながら殿下、私はなんの罪を犯したのでございましょう」
私はあまりの申し訳なさと恥ずかしさ、不甲斐なさやらで、まるで鏡のように反射する大理石の床に額を擦り付け、地に伏していた。
自分のみてくれ、ドレスの乱れなど気にしない。
とにかく相手に陳謝の姿勢だ。
婚約者の私がこんな人間では、殿下のメンツが丸潰れだ。あまりの申し訳なさに全身が震えて涙が溢れる。
言い淀む殿下はなかなか仰ってくれず、時間ばかりが過ぎていく。
困った。
そんな私の様子を見かねてか、殿下の背後から小鳥のさえずりのような、細く綺麗な声が響いた。ざわめいていたホールにピン、と静寂が訪れた。
私を射抜いていたあまたの視線も、ふとそちらへ向けられる。
「ロデオロメオ様、そのぐらいにしてさしあげて……。わたくし、ジョアンナ様がそんな惨めな姿なんて、見たくございませんの」
「ミモザ、ああ、なんて優しいんだ。自分を害した相手にさえ、こんなにも温かい慈悲を……おい、聞こえたかジョアンナ。早くそのクソみたいな面を上げて、誠意を見せたらどうなんだ」
「寛大なお言葉痛み入ります、ミモザ様」
大罪人である私に寛大なお言葉を掛けてくださるミモザ様に視線を向ける。
ミモザ様は真っ白なドレスに身を包み、王家の印であるサファイアブルーが煌めく、リンゴを型どった細工の施されているブローチを胸元に付けていた。
害した相手やら何やら、少々気になることを殿下は仰っていたが、私の興味は別のものへ吸い寄せられた。
あら、なんと偶然。私は目を瞬かせた。
ミモザ様も、本日婚約発表があったのかしら?
だとしたら、私の愚かな何らかの国家反逆罪に値する罪のおかげで、結婚のご挨拶が台無しになってしまわれたのでは?
あら、でもあれは私が本日婚姻の儀で聖女が使うはずだった王家のブローチよね。
つまり、ミモザが実は「本物の聖女」で私は「偽物の聖女」ということなのでは?
そんな恐ろしい考えが脳裏を横切り、まさか、そんな、と思いながらも膝まづいたまま、ミモザを見上げる。
シャンデリアの眩い光に照らされて、ミモザの表情は陰り読み取れない。
しかし、小さく震えるその細く華奢な肩は、私の考えを裏付けているようにも思えた。
私の喉の奥がヒュッとすぼまった。
考えるより先に、手が自身のドレスの内側に伸びる。
慣れたように「太腿に着いたガーターベルト」から「投げナイフ」を取り出し、自身の剥き出しの喉元へ……は届かなかった。
パシン、と手に衝撃が走ったかと思えば、手にしていた投げナイフは高い音を立て、殿下の足元へ滑っていった。
気がつけば目の前には黒い影。
ホールは一瞬静けさに支配されたかと思えば、次の瞬間に殿下は「ひゃああッ!!!?」とひっくり返った声で尻もちを着いた。
私を見物していた周囲も似たりよったりな反応で、中には失神するご婦人もいた。
ホールは大混乱である。
腰が抜けたまま膝をガクガクと震わせ、わなわなと私に向けて殿下は指を指した。
「ば、バカか貴様何考えてんだ狂人なのか!!!? ヴァルゴよくやった!!」
震えすぎて声をひっくり返しながら、王子は私には1度も掛けてくださったことの無い労いの言葉を投げ掛けた。
私の喉元に吸い込まれるはずだった投げナイフは、王子に仕える近衛隊の隊長ヴァルゴにより叩き落とされた。
私はなんとも絶望的な心地になった。
「なんで……」
絶望的な気持ちで問いかけると、ヴァルゴは一度思案した後、私の目を見てはっきり言った。
彼の瞳は深い緑で、よく見ると青が混じったような綺麗な色をしていた。この人は嘘をつかない、なぜかそう感じた。
「……城内は刃物持ち込み禁止でございます」
佇まいを直したはヴァルゴは、王子とミモザの顔が見えない位置に私に背を向け立ち塞がった。
ヴァルゴにそう言われ、私はああそうだと納得した。
「確かに刃物は禁止ね、ああなんて申し訳ないことを……公共のルールを破るなんて、人としてなんと恥ずかしい」
「ちなみにお前は今何をしようとしたんだ……?」
問われて私は更に申し訳なく、虚しくなった。
申し訳なくて涙が溢れてくる。
「……首を……」
「首を?」
ゴクリと殿下の喉仏が上下する。
私はせめて誠意を見せようと、気持ちを込めて殿下に発言する。
「大罪人の首を、献上しようと……!!」
「誰がお前の首なんかいるんだよ!!」
なぜです、なぜなのです殿下!?
不思議な話だ、私は国外追放を言い渡された大罪人の身なのに、その首が不要だなんて。
「では、殿下。どのように詫びればよろしいのでしょうか。首を差し出すことは叶わず、ただ国外追放だなんて……そんなの許されるはずありません! 殿下、私の罪状にふさわしい罰をお与えください!! 殿下!! 私はなんの国家反逆罪なのです!!」
私の叫びにホールは再びシンと静まり返った。
期待と不安に染められたホール全員分の視線が殿下に向けられる。
殿下は急に向けられた大勢の圧に、よろりとたじろぐが、さすがは殿下、王族らしくあらせられようとしてごほんと咳払い一つ。キリッとした表情で辺りを見渡した。
「それは……」
「それは……」
その場にいる全員が固唾を呑んで見守る中、殿下はぽそりと呟いた。
「……い……ざいだ」
「殿下、申し訳ありませんがお声が遠く。もう一度よろしいでしょうか」
なんとも恐れ多くも私は殿下のありがたいお言葉を聞き損じてしまい、心から申し訳なく思いながらもう一度問う。
殿下は視線を彷徨わせながら、次は半分叫ぶようにして大声を上げた。
私のために配慮いただくなんて、なんと光栄なのでしょう。
「だから!! 『 生きているだけで恥ずかしすぎる故の国家反逆罪 』だ!! 恥を知れ!!」
「……まあ!!」
私は驚きのあまり、口を手で押えてしまった。
まさか本当に私は生きているだけで恥ずかしいのが罪で国家反逆罪になってしまっただなんて。
こんなの建国300年の歴史の中で初のできごとだ。なぜ言い切れるのかと言えば、私はこの国の六法を全て把握しており、さらに建国神話から歴史書まで、ありとあらゆる城内の書物を読み尽くしているからだ。
これは妃教育のためではなく、私がただの本の虫だったから、というのが一番の理由だが、まさか法律を樹立させるための議会をすっ飛ばしてまで新たな罪状を作らねばならぬほど、私の存在は恥ずべきものだなんて、そちらの方が大問題だ。
「首を……」
「いらんいらんいらん!! いらんと言っておるだろうが!!」
わなわなと震えながら顔を白くさせている殿下の腕に、豊満な体をしなだらせているミモザも、同じように震えている。
気がつけば辺りのご令嬢ご婦人はほとんど気をやられ、従者に連れられ退出していた。
ここに残っているのは重鎮貴族の役人や、婦人会で力を持つご婦人、そして殿下とミモザ様、私とヴァルゴのみだ。
ミモザは顔を歪ませながら、顔を赤らめてふるふると震えている。
明らかに体調が悪そうだ。
断固首拒否の殿下。
生きているだけで恥ずかしいこの私。
もう私がやるべきことは一つだけだ。
「……承知致しました。私、ジョアンナ・デルモアは今日この場を持って家名を捨て、『ただのジョアンナ』として生きてまいります」
「そうだ、それがいい」
殿下は満足そうに頷きながら、嬉しそうに手を挙げ衛兵に合図した。
「兵、こいつを城門まで連れていけ。なに、元とはいえ子爵家のご令嬢だ。隣国に行けるだけの金貨を渡してやりなさい」
「まあ殿下、なんてお優しいの……」
私ごときにお気持ちを砕いてくださる殿下に、ミモザ様もうっとりと視線を蕩けさせた。
大罪人の私がここで自己満足のために、殿下の貴重な時間を奪う訳にはいかない。
「……さあ、こちらへ」
兵士がなぜか申し訳なさそうに私を案内する。
それは大罪人に向ける表情ではなく、私はどんな顔をすればいいのか分からず、静かに微笑んだ。
ホールの大門が開かれ、ギイッと重い音が響き渡る中、狭まっていく門の隙間の奥。
本当は元婚約者、元令嬢として真っ直ぐ前を向かねばならぬことは重々承知だが、どうしても殿下のお顔を最後に見納めたくて、我慢できず扉が閉まる直前くるりと振り返った。
もう既に拳ひとつ分しか空いてないドアの隙間から、ホールの中心に立つ2人が見えた。
しかし私の目には殿下の顔ではなく、ミモザ様の表情が焼き付いた。
なぜミモザ様の可愛らしい表情が、醜く歪んだ笑みに染まっていたのか、私には分からなかった。
*****
「それで……なぜ、ヴァルゴ様まで?」
金貨がたっぷり詰まった袋を両手で持たされ、城から追い出された私は、とりあえず国境を目指して歩くことにした。
空は清々しいほどの澄んだ青空で、空がこんなに青くて綺麗で、なんだか泣けてくる。そして死にたい。
なんかひょんなことから死ねそうな理由はないか辺りを見渡してみるも、特に何も無いなだらかな丘が広がるばかりだ。
青い空にはゆったりとモクモクした雲が低い位置で流れていき、どこかで小鳥のさえずる可愛らしい鳴き声も聞こえる。
私は国外追放された令嬢らしく、儀式で着る予定だった聖女服のまま、とぼとぼしずしず、なだらかな傾斜を歩いていく。
そしてなぜか私の後ろ散歩下がった位置からずっとあとをつけてくるヴァルゴに、痺れを切らした私はついに尋ねてみたのだった。
「監視でございます」
それはそうだ、私は大罪人で国外追放された身なのだから、罪状通り国外へ渡るのを確認するまで監視する役割でもあるのだろう。
私は不審だと勝手に思い込んでいたことを恥じ、ヴァルゴに平謝りする。
「ごめんなさい、ヴァルゴ様。私、その、てっきり……傷心している令嬢の傷を舐めて甘い汁をすすろうとしているストーカーなのかと……」
「……そのお言葉に少々驚きもあり、傷ついてもいますが、その危機管理は大変よろしいと存じます」
「え、本当? それは、褒めてくれてるのかしら?」
「もちろんでございます、私は心からお褒めの言葉を申しております」
私は絶句した。まさかここにきて人生で初めて褒めて貰える日がきたとは。
今までどれだけ国のため、家族のため、民のためを思って祈りを捧げても「できて当たり前」「なぜもっとできない」「努力が足りない」「お前はどうせその程度」と言われてきた。
妃教育に関しても、法律をどれだけ頭に叩き込んでも当たり前。商品を届けてくれるような使用人の名前まで覚えても当たり前。マナー、作法、踊り、外交。全てにおいてできるのが当たり前。
そんな生活を、今日この日、私が19歳の誕生日になるまで続けてきたのだ。
褒められるというのは、なんとも不思議な心地だ。
なんだかムズムズする、どんな顔をすればいいのか分からない。
……でも、なんだか温かい。
「こういうときって……ありがとう、と言うのがいいのかしら」
答えてくれなくてもいい、でも答えが欲しい、そんな期待が滲み出ていた私の言葉を、ヴァルゴはしっかりと聞き届け、答えをくれた。
「はい、ジョアンナ様。嬉しいことを言われた時は、ありがとうと言うのです」
振り返ると、ヴァルゴは王城にいた時の表情の読めない能面のような表情から一転、とても幸せそうに、頬を上気させて微笑んでいた。
*****
旅は道連れ、世は情け。
そんな昔の言葉があるが、本当にその通りだなって思う。
ヴァルゴを連れて歩いたから旅は楽しいものになったし、ヴァルゴが情で着いてきてくれたから私はこんなに楽しい気持ちを知ることができたのだ。
「ジョアンナ様、ついに国境ですよ」
ひたすら歩いて歩いて、たまに乗り合い馬車に揺られ、街について汽車に乗って、そして歩いて次の街へ。
それを繰り返していたら、気づけば国境が目の前に迫っていた。
やはり国境というのはどこも観光地化するようで、周りを見渡せば出店や浮かれている表情の観光客が沢山いる。
以前本で読んだ国境は高い壁で国をぐるっと囲っている、という話だったが、ここハルモニア王国と隣国リャサルザーレ国の国境は、何の変哲もない白い線だ。山岳地帯の地域なんかは厳密に管理が難しく、魔法石を打ち込み、魔力の線によって区別するそうだ。
「なんか、国境って実際はどんなものなのだろうって、少し楽しみにしている自分がいたんですよね」
「残念ですか?」
「ええ、とても」
なぜなら、ここまで着いてきてくれたヴァルゴの任務は私の「監視」だ。つまり、この国境を私が越えれば、ヴァルゴは王城に戻り、近衛兵としてまた殿下のお側で御身を守る大切な役割があるのだ。
それは、少し、いえ、とても寂しい。
私が国境の前で棒立ちになっていると、ヴァルゴは少し思案した後、ニヤッと意地の悪い顔をして。
「よっと」
「あ、ヴァルゴ!あなた国境を越えてるじゃないですか……!」
なんとヴァルゴは止める間もなく国境の白い線を跨ぎ、リャサルザーレの地に立っている。
「大丈夫ですよ、他の人も同じようなことしてます」
そう言われて辺りを見ると、国境を越えるどころか、なんなら行ったり来たりを繰り返して大笑いしている人もちらほらといる。
国境を監視している兵の目は穏やかだ。
「よかった、罰則がある訳じゃないのね……て、そうじゃないの!ヴァルゴ、あなたはハルモニア王国に帰るのよね」
私は意を決してヴァルゴに言えば、ヴァルゴはポカン、と口を開けたまま固まった。
かと思えば、眉を顰め、目を細め、肩をくつくつと揺らし、ついにはお腹を抱えて笑い出した。
「アハハハハハ!! あなた、まさか本当に監視だと、そう思ってた訳ですか!? そんな訳ないじゃないですか〜!!」
「え、なんで? え、だってあなたあの時確かに……」
私は国外追放された、あの日のことを今でも鮮明に思い出せる。
あの日、ヴァルゴは確かに「監視」だと、そう言ったはずだ。
私が目を白黒させているうちに、ヴァルゴの笑いは徐々に落ち着き始めたようで、過呼吸寸前までヒーヒー言っていたのが気がつけば通常運転の「スン」とした顔に戻っていた。
「そんなことはどうでもいいんです」
「よくはないと思うのだけど」
「……俺、旅って楽しいんだなって初めて知りました。それもこれも、ジョアンナ様、あなたが一緒にいてくれたからです」
ヴァルゴはそう言い、国境の向こうから手を差し伸べてきた。
優しい風がヴァルゴの伸びた前髪をさらりと撫で、優しい青みがかった緑の目が私の惚けた顔を映し出す。
私は恐る恐る手を差し出し、骨張ってゴツゴツとした、大きな頼りがいのある手のひらに重ねた。
グイッ
ヴァルゴが悪戯が成功した子供のように、私の手をそのまま引っ張った。
よろけた私はそのまま国境に体が吸い寄せられていく。
全て納得したかと問われれば、わからないことばかりだ。王城での出来事だって、私がなぜ婚約破棄されたのかすらわからないまま。
そして、初めて顔を合わせたあの「ミモザ」と言う少女。あの人はいったい、何者だったのだろうか。
そして幼い頃から呪いのように言われてきた「お前は甦りなのだから」とは、なんだったのだろうか。真相は謎ばかりだ。
でもそんなことより、私は目の前の温もりに手を伸ばした。
――ああ、神様。もうどうでもいいです。どうなってもいいです。ただ、彼と一緒にいられるこの時間が幸せすぎて、もうどうなっても構いません。
いつからだろうか、死にたいと思うことはなくなった。
それもきっと、ヴァルゴがこの世界のことを教えてくれたから。
愛しい人の胸に飛び込み、その温かさに目を細めた。
今日この日が、人生で一番幸せな日だと、そう心から思った。
そして同時刻。
ハルモニア王城で原因不明の大火災が起こった。
火元の出所は不明で、特に炎上の激しかった王城ホールは、逃げ遅れた人間の姿形さえ残さぬほど激しいものだった。
そもそも逃げることは不可能だった。
なぜなら、その爆発的に湧き上がった炎は1秒も立たず城全体を包み込み、緑から青へ変化し、次の瞬きの瞬間には真っ黒な炎に変わったと城下町の人間は言う。
死者は推定1500名以上、王族は誰一人として、生き残りはなかった。
そして、新たな聖女すら、この炎から身を守ることはできなかったのである。
のちにこの日は、「神の黒い怒り」と呼ばれるようになり、王族が滅びた日として、長く語り継がれていくのであった。