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 2- 若気の行ったり来たり

 

 2- 若気の行ったり来たり


 広島市の中心を流れる太田川は、人口が百万を超える都市のど真ん中を流れる川でありながら、その上流の水は名水百選にも選ばれるほど綺麗な川である。

大きな川らしく普段は穏やかで静かにゆっくりと流れる。

市民が地獄をみたあの日も、喚起に沸いたあの日も、川はそんな人々を慈しむように静かに流れ続けた。そして市民もこの愛する川を大切にした。だから川にゴミを捨てるような人はめったにいない。


その極端に綺麗な川の上流にATOの町はあった。


 この町は大昔から数えて歴史上二度栄えた。

最初は源平合戦に敗れた平家の落ち武者たちがこの川の流れに惹かれて住み着いた時である。

現在でも平の付く姓が多いというのがその証拠だと言われているが

そんな昔のことはこの物語にはなんの関係もない。


 関係があるのは二度目に栄えたちょっと前の時代のほうである。


 この美しい水を求めて多くの企業が半導体工場や事務所やお酒の工場を構えた。

今は亡きエダピール・メモリーとか、やはり今は亡き、よぷよぷのゲームで有名なパイコンル

やはり今は風前の灯のゲーム機を五十年も作りづけてきた50NYとか


そのころは最先端の企業群がしのぎを削った。人口も数千を数えて賑やかな町だった。

それが、いまはすっかりさびれてしまい、日中人を見かけることはほとんどなかった。



ある日、こんな町にわざわざ取材に訪れた物好きな記者がいた。

彼は今、とても上機嫌だった。というのもこの町唯一の中学校の前を通りがかった時に

下校中の二人の女生徒から可愛い挨拶を受けたからだ。

「こんにちは。」「ただいま帰りました。」


「ああ、お帰り。」記者は慌てて返事を返した。精いっぱいの愛想をこめて。

中年真っ盛りの彼は若い女の子と喋ることがほとんどないので、そんな挨拶を貰っただけで舞い上がってしまい

天使のような子たちがいるなあと、この町が大好きになった


彼はニコニコしながら思った。「昭和かよ。ここだけ時間がとまっているのかも。

どこのだれか知らない人に挨拶するなんて。

結構いろんなとこを取材に歩いてるけど、人と話す機会なんて職務質問くらいしかないから。

とんでもない町じゃないのか、ここは。」

それじゃあと、この二人の天使達に聞いてみることにした。


「僕は、ーー街の小さな博物館ーーというムック本の取材しているんだ。

君たちーーゲーム・コンピューター博物館ーーってどこにあるか

知らない。」


 それを聞いて天使たちは大はしゃぎしだした。二人は手をつなぎあって飛び跳ねた。

「キャーー うちらの町が本に出るんだって キャーキャー。」


 田舎の子はほんとに純粋で可愛い。自分のこと、うちなんて呼ぶんだ。


「地図ではこのあたりだと聞いたんだけど草むらばっかりで全然わからないんだ。」

お手上げのポーズを取りながら懇願すると天使たちは、やっとはしゃぐのをやめて教えてくれた。


「知ってるよ。セレンちゃんの家だよ。」


全然わからない。なんの情報も得られなかったけど、この草むらの中をかき分けてちょっと行ったところが

目的の場所らしいということはわかった。


セレンちゃんて誰?



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