番外編 初めてのお出掛け
リクエストをいただきました。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
前半シェイダ 後半彼女の友人 視点となっています。
「トニー、この服装でいいと思うか?」
「朝っぱらから呼び出して…」
トニーは眠そうに大きな欠伸をしながら、どさりと椅子の背を抱くように座り私に眠そうな目を向けた。
「俺、夜勤だったの。夜の見廻り」
また欠伸をしながら、いいんじゃない。と手をヒラヒラ振ってきた。
真面目に見てくれているのか? 不安になる。
「ちゃんと服、着てたら俺たちもしょっ引かないから」
いや、そういうことを聞いているのではない。というより服を着ないで外出などしない。
「彼女の瞳の色と同じシャツにしてみたのだが」
この日のために薄紫のシャツを準備させ着てみた。執事たちは上着も含め色合いには問題ないと言ってくれたが彼女がどう反応するかが不安だ。
「惚気? 独り身の俺に対する嫌味?」
いじけたように言っているが、その顔はニヤニヤ笑っている。相談するヤツを間違えたか?
「けどな、彼女がその意味で着ていることに気付かなくても落ち込むなよ」
真面目な顔になって釘を差してくる。
分かっている。私の自己満足なことくらい。私が彼女の色を纏いたいだけだ。
「あっ、そのカフスボタンは止めておけよ。スリに盗られるぞ」
彼女から貰ったカフスボタンは付けていけないのか。今まで彼女から貰った物は筆記具が多く、身に付けられる物はこれだけだ。いや、ハンカチを貰った年もあったな。確かここに…。
「初々しいねぇ、初めてのデートか」
煩い。やっと彼女と出掛けられるのだ。浮かれて何が悪い。
「寮まで迎えに行くの?」
「当たり前だ」
彼女はルヒィの屋敷を出て学園の寮に入ることになった。もちろん彼女が入寮するから警備は今まで以上に厳しくしてある。
私とこの屋敷にという話もしたが、彼女の伯父であるルヒィの父親に猛反対され、私の家族からもまだ早いと却下された。
毎日顔を見られないのは残念だが、手紙のやり取りが出来るのは楽しい。
「お前がこんなに恋愛脳だったとはなー」
大きなため息と共に呆れた声がしたが聞こえなかったことにしよう。
「ねえ、これでいいと思う?」
「うん、可愛い。けど、髪飾りはこっちの方が喜ぶと思うよ」
私は彼女が手にしていた髪飾りを緑の石が付いた物と交換した。
「えっ、でも…」
「うん、両方シェイダ様からの贈り物でしょ。けど、こっちの方がシェイダ様の瞳の色だから喜ぶと思うよ」
そう言ってあげると彼女はボンと顔を赤くする。
「ふ、ふくに合う?」
「大丈夫、大丈夫」
婚約者との初めてのお出掛けに彼女は一生懸命お洒落をしようと頑張っている。そんな初々しい姿が可愛すぎて思わずニマニマしてしまう。
大丈夫。どんな格好でもあなたの婚約者は一緒に出掛けられるだけで満足すると思うから。
心の中でそう呟く。
学園にいる時からそうだった。
わざわざ遠回りして、下級生の校舎の前を通って行ったシェイダ様。彼女の髪飾りを見て表情を緩ませていたことに本人さえも気付いていなかっただろう。もちろん彼女がいつも付けているのはシェイダ様から贈られた髪飾り。それを見ての表情なら答えは簡単に分かってしまう。
だから、私は学園一の才女ターナ様との噂はデマだと思っていた。確かに二人並ぶと美男美女の理想のカップルで目の保養にはなったけど。シェイダ様とターナ様には温度差が凄くあったし、やっぱりシェイダ様が彼女を見る視線とは全然違ったから。
だからといって、私はシェイダ様を許していない。
いくら国からの命令だったとはいえ、あんな噂が出ているのに彼女に会いに来ないなんて。彼女は上級生から悪者扱いされて凄く辛い立場になっていたのに。すごく迷惑な人たちがいて火消しが間に合わなかったとは聞いたけど、それでも許せない。
「次の休みは私とスイーツだよ」
だから、休みの度にお出掛けはさせてあげない。今まで 待て が出来たのだから、もうしばらく出来るでしょう?
お読みいただきありがとうございますm(__)m
リクエスト内容と違ったかもしれませんが、ご容赦下さい。
頭に浮かんだのがこの話でした(汗)