その一
唯一のヒロイン目線の話です
あの人と初めて会った日、二つ年上のあの人は冷たい目で私を一瞥しただけだった。
会うのはお互いの誕生日だけ。挨拶をして贈り物を渡しお礼を言うだけ。それもあの人が三年間通う国立学園に入学するようになると無くなった。贈り物だけは届き贈ることはしていたけれど、祝う言葉が書かれた小さなカードが付いていただけだった。
二年遅れで学園に入学したけれど、学年で校舎が違い三年生のあの人は時々遠くで見かけるくらいだった。時々見かけるあの人の隣にはいつも綺麗な女性がいた。それが誰なのか、私はハッキリと知らない。噂は耳に入っていたけれど、確かめるのが怖くて何もしなかった。
だから…、どうしてこうなったのか分からなかった。
三年生を送る卒業記念パーティー。狭い控え室。あの人に贈るはずの花束はリボンが解けて床に散らばっている。
突然言われた婚約解消の言葉。あの人に縋りつく綺麗な女性。
身に覚えのない罪の数々。何か言おうとする度に綺麗な女性が嗚咽をあげてあの人に縋りつく。周りが声をあげて責めてくる。
追い出されるように去ることになったパーティー会場。
屋敷に帰るが、すぐに城下町にほうり出された。
どうしたら良いか分からず、猫の瞳のような月を見上げた。