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1 ここは何処?


 「おぉ・・・。」


 最初に出た言葉はそれだけだった。

 アニメのように「なんじゃこれゃぁあああ!!」とか「え? ここ何処?」なんてセリフなど出て来ず、僕はただ呆然と視界に映る景色を眺めるだけしかできなかった。

 僕の視線に広がるのは木が並ぶ森の中。

 

 漫画やアニメの主人公が目を覚めると鮮やかな森の景色とかではなく、今にも熊の一匹でも出没しそうな雰囲気が漂う重い空気の森の中。

 空を見上がれば晴れているのは分かるが、森の茂みで日光が遮られ暗く感じる。


 「まぁ待ちたまえよ僕。 漫画やアニメでさんざん予習してきたじゃないか。 今こそその知識を振舞う時だ。」


 異世界転生、召喚。

 あらゆる理由で異世界へと足を踏み入れる異世界シリーズのストーリーを思い出す。

 このような不気味な森の中に学校の帰り道で迷い込むはずがない。

 ――っとなればこれは所謂異世界召喚と言えるだろう。

 

 世界の危機に女神様が現れたり?

 はたまた異世界の人間によって呼び寄せられた選ばれし勇者の1人だったりするかもしれない。


 ・・・しかし、僕の周りには王様がいそうな城内でも女神様がいる天界とやらでもない森の中。

 これにより考えられる事と言えば・・・。


 「わからん!」


 だって急にこんな森の中でポツンッと立たされてもどうしようもないよ?

 なんなの?

 人選ミス? 

 それともただのよくある勇者を召喚した際に起こる巻き込まれ的なアレ?

 あまりにもヒントが少なすぎてどうする事も出来ないんですけど!!


 頭の中で僕だけの大会議が繰り広げられている中で、背後の茂みが大きく揺れ動いた。

 僕はビクッと体を飛び跳ね今まで構えた事もない変哲なポーズをとる。


 「誰だ! そこにいるんだろう! いるのは蛇か? 熊か? それとも異世界で最初に出現するであろう、異世界あるあるのスライムですか?!」


 猫も驚かないであろう威嚇をしながら、何かがいるであろう茂みを睨みつけていると、茂みの影から手のような物が出てきた。 

 僕は更に身体を ビクッ! っと飛び跳ね別のポーズを取る。

 そうして無駄な警戒をしながら茂みから出てきたのはボロボロの服、いや服とは言えない布を被っているだけの小さな少女が怯えた様子でゆっくりと顔を見せた。

 全身緑色の肌で額当たりに2本の角が生えている。

 瞳も紅く人間のような体格に近いと分かるが、一目で人間ではないと理解が出来る要素だらけだ。

 しかし、少女が僕を見る怯えたような姿勢に警戒心が一気に縮まった。


 「えっと・・君、どうかしたの? 僕の言葉の意味分かるかな?」


 声をかけながら近づこうとすると、彼女は体を震わせてまた茂みの中へ戻ろうとする。

 だが足を怪我しているのか僕が少しずつ近づいても逃げる様子は見せなかった。

 少女はもうダメだと思ったのか、僕の手が届く距離まで近づくと両目を強く瞑り体を硬直させた。


 「よぉ~しよし。 もう大丈夫だぞ~。」

 「・・・?」


 僕はゆっくりと怯える少女の頭を撫で少しでも落ち着いてもらおうと優しく言葉をかける。

 その様子を少女は不思議そうに僕を見るが、次第に僕が敵ではないと理解したのか大粒の涙を流して僕に抱き着いてきた。



 さぁ、いきなりどうしたものか。

 普通の人間の少女のように僕を抱きしめながら泣き崩れる少女(亜人)を優しく抱き返しながら自己紹介でもしようかな。


 僕の名前は大時(おおとき)(のぼる)

 日本に住む普通の高校1年生だ。

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